犬に「白いご飯(お米)」をあげる飼い主さんも多いことと思います。
私自身、以前に飼っていた柴犬には、ご飯(お米)をあげていました。お米を嫌う子もいるようですが、ほとんどの犬は、好んで食べてくれます。
一方で、お米と言っても、主に「白米」と「玄米」に分かれます。犬には、白米・玄米、どちらが良いのでしょうか?
このページでは、動物栄養学の観点から、白米・玄米それぞれの犬への長所・短所、そして、与え方などをご案内します。
<目次>
犬にお米の是非
お米を含む穀物が、「犬に良くない」という情報を目にすることがあります。本当でしょうか?
「お米や穀物が犬にNG」ということは、科学的な見地から、全くのデタラメです。動物栄養学などの報告を見渡しても、「米・穀物=犬にNG」というデータは一切見当たりません。こういった誤った情報は、「穀物フリー・フード」で一儲けしたい、一部の業者の陰謀とも言えるマーケティング戦略に由来していると考えられます。
動物栄養学の視点から、お米が犬に良い食べ物であることは明白です。
白米のメリット・デメリット
具体的に、お米の良いところ・注意点をご案内します。まずは、「白米」から見ていきましょう。
白米の犬へのメリット
犬にとって、白米の利点は、「優れた炭水化物源」であることです。白米は、犬にとって消化の良い炭水化物を多く含んでおり、良質なエネルギー源となります。
また、「難消化性でんぷん」を適量含むことも、白米のメリットと言えます。「難消化性でんぷん」は、犬の消化酵素のみでは利用されにくい炭水化物ですが、腸内の善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)の発酵を受け、腸内環境を良くする成分です。つまり、白米は、犬の腸内環境を整えることが期待できる食べ物です。
白米の注意点
一方で、白米には注意点もあります。「消化されやすい炭水化物源」である白米は、裏返すと「犬の血糖値を高めやすい素材」と言うことができます。血糖値が高まりやすいということは、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクがありますし、犬の肥満にもつながりやすいところがあります。
そして、栄養源が「炭水化物」に偏っていることも、犬にとって白米のデメリットとなる要素です。そのため、白米を犬に与えるのであれば、他の食べ物とのバランスや配合量を調整してあげなければなりません。
玄米のメリット・デメリット
次に、犬にとって「玄米」のメリット・デメリットをチェックしましょう。
玄米の犬へのメリット
玄米の利点は、犬にとって「優れた炭水化物源」であるとともに、「白米のデメリットを概ねカバーしている」というところだと思います。つまり、犬にとって、白米のデメリットである「血糖値アップ」「栄養の偏り」は、玄米ではかなり補完されているのです。
まず、玄米は白米に比べて「血糖値が上がりにくい素材」です。玄米に含まれる食物繊維などが、炭水化物の吸収を遅らせ、犬の血糖値アップを穏やかにします。
さらに、玄米は、米を削る工程(精米プロセス)をふんでいないため、炭水化物以外の栄養素をバランスよく含んでいます。そのため、玄米は、犬にとって栄養価値の高い食べ物、と言うことができます。
玄米の更なる利点
加えて、玄米は乳酸菌など「犬の腸内善玉菌」を増やす効果も高いです。白米よりも玄米には「犬の腸内善玉菌」を増やす成分が含まれており、腸の健康・便質の改善に寄与します。
(※乳酸菌について、詳しくは「犬への乳酸菌の効果を高めるコツ」でご案内しています。)
玄米の注意点
一方、玄米にもデメリットがあります。
玄米は、ロウ(脂質の一種)で覆われた構造をとっており、独特のボソボソ感とともに消化を悪くする要因ともなっています。犬の中には、白米と比べて玄米を嫌う子もいますが、その原因はこのロウ部分にあるのかもしれません。
また、玄米のロウ部分には、残留農薬や重金属が含まれています。こういった汚染物質は、中長期的に犬の健康を害するリスクがあります。なお、「無農薬玄米」などであっても、よほど土壌や水がキレイな里山で作られたものでない限り、汚染物の影響を受けていますので、注意が必要です。
玄米、成分上の犬へのデメリット
もう一つ、犬にとって玄米のデメリットの可能性がある成分にも触れておきます。それは、「フィチン酸」と呼ばれる玄米成分です。
フィチン酸は、抗酸化作用を持つなど、適量であればメリットも大きい成分です。ただし、ミネラルを吸着して排出する力をもっており、過剰に継続してフィチン酸を取りいれることは、犬にとってリスクになる可能性があります。
ただし、玄米に含まれるフィチン酸は、犬にとって大きなリスクにならない、という知見もあります。この点、今後の研究が待たれるところです。
犬にお勧めできるお米とは?
以上のように、白米・玄米、それぞれ犬にとっての一長一短があります。そこで、犬のタイプ・状態別に、白米・玄米のどちらがお勧めなのか、整理してみました。
白米がお勧め、犬のタイプ
「下痢をしやすい」「消化器疾患を抱えている」といった犬には、「白米」がよりお勧めです。理由として、玄米と比べて白米は消化が良く、犬の胃腸負担が軽いままエネルギー源として補給できるためです。
(※犬の下痢については、「犬の下痢・嘔吐、治療と食事」で詳しくご案内しています。)
玄米がお勧め、犬のタイプ
特にお腹が弱い訳ではない犬には、「玄米」がお勧めです。先にお伝えしたように、玄米にもデメリットはありますが、犬にとって利点がはるかに上回ります。
また、消化器疾患の中でも「大腸」にトラブルを抱える犬には、白米より玄米の方がよりお勧めです。理由として、大腸疾患の犬には、食物繊維や難消化性でんぷんを多く含む食事が推奨されており、玄米は、これらの成分をより多く含んでいるためです。
白米と玄米の良いところどり、最もお勧めできるお米とは?
実は、白米と玄米のメリットを合わせ、デメリットを解消したお米があります。「ロウカット玄米」などと呼ばれているお米です。
この「ロウカット玄米」は、名前のとおり、玄米のロウ部分のみをカットしたお米です。先にお伝えしたとおり、玄米は栄養面で非常に優れているものの、「ロウ」の部分には、犬にとってデメリットとなる要素を有しています。そのロウ部分のみをスライスした「ロウカット玄米」は、犬に最もお勧めできるお米と言えるでしょう。
(※ロウカット玄米については、次のページで学術報告もなされています。→「ロウカット玄米での生活習慣病予防」)
※発芽玄米について
発芽玄米も、犬にお勧めできるお米です。玄米を発芽させると、フィチン酸などの犬へのリスク成分が軽減されると報告されています。そのため、玄米よりも発芽玄米は、さらに犬へのメリットがあります。
ただし、発芽玄米は、「ロウ」部分のリスクを全て無くせている訳ではないため、より犬に好ましいのは「ロウカット玄米」と言えます。
お米の炊飯について
さらに、「お米の炊飯」についても、犬への影響をお伝えします。
白米・玄米に関わらず、お米を炊飯すると、含まれる「でんぷん」に「α化」という構造変化がおこります。α化は、いわば糊(ノリ)のような状態になっており、犬がお米の「でんぷん(炭水化物)」を消化しやすくなります。
一方で、お米のα化により、犬にとって「難消化性でんぷん」の割合が少なくなってしまいます。難消化性でんぷんは、犬の消化酵素では利用されないものの、腸内善玉菌のエサとなる成分です。そのため、炊飯したお米(でんぷんがα化)は、犬の腸内細菌バランスへの効果がやや落ちてしまうことになります。
お米の炊飯に関する最良の工夫
つまり、炊飯したお米は、犬の消化を良くするというメリットがある一方で、腸内細菌への効果は少し弱まってしまうというデメリットがあります。
そこで、犬にとって最も良いお米の与え方は、「生の米粉(炊飯されていないもの)」と「炊飯したお米」をミックスするという方法です。この配合方法により、「犬の消化の良さ」「腸内細菌への好影響」両方のお米のメリットを最大化することが可能です。
配合バランスの目安ですが、生米粉を3~4割(炊飯したお米が6~7割)程が適量です。白米・玄米、どちらでも構いませんので、犬にとってベストを追求される場合は、お試しいただければ幸いです。
犬にお米、お勧めの与え方
それでは、犬へのお米の与え方について、お勧めの4ステップをご案内します。
ステップ1)白米・玄米の選択
まず、白米・玄米どちらを犬に与えるか、選びましょう。お腹が弱い犬には白米、胃腸に問題がない犬には玄米がお勧めです。お腹が弱い子でも、下痢の状態などが緩和されてくれば、玄米への変更を検討しても良いでしょう。ご紹介したロウカット玄米などは、どの犬にもお勧めできます。
また、生の米粉のミックスを実践される場合は、そちらも準備しておきましょう。
ステップ2)お米の炊飯
次に、お米の炊飯です。犬に与えるご飯でも、人が食べる際の白米・玄米の各炊飯条件(水の分量など)でOKです。
ステップ3)他の食べ物とのミックス
犬の食事全てを手作り食でまかなわれる場合、市販ドッグフードにトッピングされる場合、どちらも手作り分をお米のみにすることはお勧めできません。栄養バランス上、犬には偏った内容になるためです。
そのため、犬にお米を与える際、必ずお肉などをミックスするようにしましょう。例えば、お肉・魚を60%、お米を20~30%、野菜などを10%、という割合であれば、犬にとってバランスがとれた食事内容になります。
ステップ4)お米を適量与える
難しいポイントですが、犬にとって適量のお米を与えましょう。ステップ3)でお伝えした内容もふまえ、全体のカロリーや栄養もある程度意識しながら、犬に与えるお米量を決めるようにします。
生の米粉をミックスされる方は、その分量もチェックしましょう。
まとめ
- 動物栄養学などの科学的な観点から、お米は犬にお勧めできる食べ物。
- 白米・玄米それぞれに、犬にとってのメリット/デメリットがある。
- お腹が弱い犬には、消化の良い「白米」がお勧め。それ以外の犬には、「玄米」がお勧め。
- 白米・玄米のメリットを併せ持ち、デメリットがないロウカット玄米は犬にお勧めできる。
- お米の炊飯により、犬への影響が違ってくる。
- 犬へのお米の与え方は、「白米・玄米の選択」「お米の炊飯」「他の食べ物とのミックス」「お米を適量与える」という4ステップがお勧め。
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