犬への乳酸菌の効果を高めるコツ

ヨーグルト

腸内環境を、乳酸菌・ビフィズス菌などの善玉菌優位にすることは、犬の健康でも大切です。

このページでは、犬にとっての乳酸菌の効果をまとめながら、腸内の善玉菌パワーを高めるコツについて、ご案内します。

<目次>

犬に有効な乳酸菌の種類

「乳酸菌」と言っても、様々なタイプがあります。どの種類の乳酸菌が犬に有効なのか、次のチェックポイントが目安となります。

1)「死菌」と「生菌」

乳酸菌には、死んでしまっている「死菌」と生きて活動中の「生菌」があります。

犬の胃酸は強力であるため、工夫なしに乳酸菌を与えても腸に到達する前に「死菌」となってしまいます。

だからと言って、「死菌」が無意味という訳ではありません。「死菌」腸にやってくると、元から犬の腸内に住んでいる乳酸菌・ビフィズス菌のエサとなったり、腸内善玉菌がより元気になったり、という副次的な効果がえられます。そのため、「死菌」であっても、乳酸菌を犬に与えることは、とても有効です。

「生菌」のメリット

ただし、生きて腸まで届く乳酸菌は、犬の腸内で「乳酸をつくる」といった役割を果たします。この点は、「死菌」にはできないことであり、「生菌」のまま腸まで届く乳酸菌には、「死菌」にはないメリットがあります。

2)有胞子性の乳酸菌

「有胞子性の乳酸菌」をご存知でしょうか?

このタイプの乳酸菌は、生活サイクルの中で硬い殻に包まれた「胞子」をつくります。「胞子」状態にある乳酸菌は、犬の胃酸でもほとんど壊されず、ほとんどが生きたまま腸に届き、腸内で発芽し活動してくれます。

一方で、「有胞子性の乳酸菌」は、犬の腸内で定着しにくく、1週間ほどで体外に排出されると考えられています。そのため、「有胞子性の乳酸菌」は、継続的に犬に与えることがポイントとなります。

3)乳酸菌とビフィズス菌の違い

ビフィズス菌も乳酸菌と一括りにして考えがちですが、全く異なる菌種になります。犬の腸内で乳酸菌とビフィズス菌は、次のような違いがあります。

乳酸菌の特徴

  • 主に犬の小腸で生息(大腸にも存在)する
  • 酸素にふれても生きていける
  • 乳酸を生成する

ビフィズス菌の特徴

  • ほとんどが犬の大腸で生息する
  • 酸素にふれると生きていけない
  • 乳酸と酢酸を生成する

なお、犬の腸内では乳酸菌よりもビフィズス菌の数が多い傾向にあります。そして、より犬の健康への貢献度が高いのは、ビフィズス菌であり、乳酸菌はサポート役、というイメージが正しいと思います。

いずれにしても、乳酸菌とビフィズス菌、両方を犬の腸内で増やすことが望まれます。

4)長寿につながる「酪酸菌」とは?

このところ、「酪酸菌」という腸内細菌が注目を集めています。酪酸菌は、乳酸菌とは異なる種類ですが、犬の腸内でビフィズス菌・乳酸菌と連携し、健康への貢献を果たします。

酪酸菌の特徴として、主に犬の大腸で、「発酵性の食物繊維」「難消化性でんぷん」「オリゴ糖」などをエサにし、酢酸・酪酸・プロピオン酸といった「短鎖脂肪酸」と呼ばれる成分をつくることが挙げられます。

酪酸菌がつくる「短鎖脂肪酸」は、腸内を整えるとともに、犬のエネルギー源となることも知られています。また、人での酪酸菌研究も進められており、長寿に関わる菌として注目されています。

乳酸菌の犬への効果

乳酸菌およびビフィズス菌・酪酸菌の犬への効果として、次のような内容が挙げられます。

  1. 犬の腸内の悪玉菌を抑える
  2. 腸を整える
  3. 免疫力を維持する
  4. 皮膚を健やかに保つ
  5. 犬のエネルギー源となりうる短鎖脂肪酸をつくる

これらの効果から派生し、犬のアレルギー緩和、コレステロール・中性脂肪・血糖をコントロール、ダイエットといった様々な健康メリットが期待できます。

犬の腸内乳酸菌を増やすエサ

犬の胃酸が強烈なため、乳酸菌を与えて、腸内に生きて届けることは困難です。そこで、「すでに犬の腸内に住んでいる乳酸菌を増やす」という視点がとても大切です。

犬の腸内で生きている乳酸菌を増やすためには、乳酸菌のエサとなり、悪玉菌は利用できない栄養素を補うことが効果的です。犬の腸内で、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌のエサとなる栄養成分には、次のようなものがあります。

1)発酵性の食物繊維

食物繊維の中には、腸内細菌によって発酵されるタイプと発酵されないものがあります。そのうち、「発酵性の食物繊維」は、乳酸菌をはじめとする善玉菌のエサとなる成分です。

犬に合った「発酵性の食物繊維」源として、穀物・イモ類・キノコ・果物などが挙げられます。

(※犬と食物繊維の関係について、詳しくは「犬と食物繊維の相性」もご参照ください。)

2)難消化性でんぷん(難消化性炭水化物)

穀物やイモ類に含まれる「でんぷん(炭水化物)」の中には、犬の胃腸の酵素で消化されないものがあります。つまり、犬の独力では消化されず、腸内細菌に利用されるタイプの成分であり、「難消化性でんぷん(難消化性炭水化物)」と呼ばれています。

難消化性でんぷんは、発酵性の食物繊維と似たような挙動を腸内でしめします。すなわち、犬の腸内で乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌によって発酵&利用され、犬にとっても有用な「短鎖脂肪酸」へと変化します。

3)オリゴ糖

オリゴ糖には、犬の消化酵素で分解されず、悪玉菌には利用されにくいが善玉菌にはエサとして活用されるものがあります。

こういったオリゴ糖は、犬の腸内で乳酸菌をはじめとする善玉菌が優位な環境づくりに貢献します。

乳酸菌の効果を高める、日々の工夫

それでは、実際に犬の乳酸菌を増やし、効果を高める日々の実践・工夫について、ご案内します。

ポイント①穀物・イモ類を適量与える

玄米

犬の食事の中で、穀物・イモ類を適量与えることが一つめのポイントです。

穀物・イモ類には、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌のエサとなる「発酵性の食物繊維」「難消化性でんぷん」が豊富に含まれています。穀物・イモ類は、犬に合ったエネルギー源でもあり、腸内の乳酸菌を増やしてくる効果もあります。

ただし、小麦は与えないようにしましょう。小麦にも犬の乳酸菌を増やす成分が含まれていますが、それ以上のデメリットとして「小麦グルテン」という成分の存在があります。「小麦グルテン」は、犬の消化が悪く、アレルギーなどの原因物質となることが知られています。

また、穀物の種類として、白米よりも玄米・大麦がよりお勧めです。玄米・大麦には、犬の乳酸菌のエサとなる成分が豊富であり、白米と比べて血糖値の上昇が穏やかです。玄米・大麦、そしてイモ類のサツマイモなどは、犬にお勧めできる素材です。

目安として、全食事量の3~4割ほどを穀物・イモ類で補うことがお勧めです。

ポイント②オリゴ糖を与える

オリゴ糖を犬に適量与えることも効果的です。

オリゴ糖は、犬におけるテストでも乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌をそれぞれ増やすことが確認されており、同時に、腸内の悪玉菌は減る傾向にあります。

ただ、オリゴ糖の中には、犬に合わないタイプのものもあり、下痢などを引き起こす可能性もありますので、ご留意ください。

ポイント③果物を適量与える

果物も犬の乳酸菌アップが期待できる食べ物です。

イチゴリンゴバナナなど、犬の消化負担が少なく、オリゴ糖や発酵性食物繊維が含まれており、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌、それぞれを増やすことにつながります。

ただ、果物は多量に与えるとお腹が緩くなったりしますので、犬のおやつとしてなど、ほんの少量を与えるのみにとどめておきましょう。

ポイント④ヨーグルトを与える

ヨーグルト

ヨーグルトを犬に与える飼い主さんも多いことと思います。

ヨーグルトに含まれている乳酸菌は、犬の胃酸でほぼ死滅してしまいますが、死菌でも一定の効果は期待できます。さらに、ヨーグルトに含まれる乳酸という成分など、善玉菌を増やすという点でも有用です。

また、牛乳や山羊ミルクなどの乳製品も、犬の腸内乳酸菌を増やすという点で、プラスに働きます。乳製品の成分には、犬の乳酸菌のエサとなりうるものが含まれています。

(※犬にヨーグルトや牛乳を与えることについて、詳しくは次のページもご覧ください。→「犬にヨーグルトは大丈夫?」→「犬に牛乳を与えても良い理由」)

ポイント⑤犬に合った乳酸菌サプリメントを与える

乳酸菌関連のサプリメントも、有用です。ただし、本当に犬に合ったタイプの乳酸菌サプリメントでなければなりません。

どの乳酸菌サプリメントが犬にふさわしいものか、見極めることは困難です。多くの種類の乳酸菌があり、飼い主さんにとって判断がつかないためです。

例えば、犬にも有効な乳酸菌サプリメントの条件として、下記のような内容が挙げられます。

  1. 犬の胃酸に耐え、生きて腸に届く工夫がなされている乳酸菌サプリメント(胃酸で溶けにくいコーティングがなされている、有胞子性乳酸菌を活用している、など)
  2. 乳酸菌数が多いタイプのサプリメント(死菌・生菌問わず、菌数が多いほど有効性が高い傾向にあります)
  3. もともと、犬の腸に生息していた乳酸菌のサプリメント(犬由来の乳酸菌であれば、犬に合っている可能性が高く、腸への定着が期待できます)
  4. 単一の乳酸菌ではなく、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌など、複数の善玉菌を取りいれることができるサプリメント(一般的に、単一種よりも複数種の乳酸菌を取りいれる方が、犬に有効とされています)

まとめ

  • 犬に与える乳酸菌の種類をチェックするポイントとして、「死菌・生菌」「有胞子性乳酸菌」「乳酸菌とビフィズス菌」「酪酸菌」などのキーワードが挙げられる。
  • 乳酸菌の犬への効果には、「悪玉菌を抑える」「整腸」「免疫力キープ」「皮膚の健康」「短鎖脂肪酸の生成」などがある。
  • 犬の腸内乳酸菌を増やすエサとして「発酵性の食物繊維」「難消化性でんぷん」「オリゴ糖」が挙げられる。
  • 乳酸菌の犬への効果を高める実践方法として、次の5つがお勧め。①穀物・イモを適量与える ②オリゴ糖を与える ③果物を適量与える ④ヨーグルトを与える ⑤犬に合った乳酸菌サプリメントを与える

関連記事

  1. 犬の下痢

    犬の下痢 4つのタイプ

  2. 犬の下痢、絶食のポイント

  3. チェックリスト

    犬の血便 チェックと対策

  4. 犬の嘔吐

    犬の嘔吐と食事対策

  5. 子犬

    子犬の下痢対策

  6. 犬の嘔吐が黄色、原因と対策

  7. 犬と薬

    犬にビオフェルミン(整腸剤)の効果

  8. 犬の嘔吐、白い泡の原因・2つの対策

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)