犬の糖尿病 治療と食事

犬の糖尿病

糖尿病の犬は、血糖値が高くなるとともに、多飲多尿や食べる割には太らない、元気がなくなるなどの症状がみられるようになります。血糖値が高い状態が続くと、命にも関わるため、コントロールしてあげなければいけません。

犬の糖尿病の治療・対策として挙げられることに、インスリンの投与があります。高血糖だけではなく、低血糖にも注意しながら、薬の投与量を検討します。そして、糖質制限をはじめとする糖尿病ケアの食事療法も大切です。

このページでは、犬の糖尿病の症状・原因から、食事療法をはじめとする対処法まで、整理してご案内できればと思います。

<目次>

犬の糖尿病、症状や原因

pixta_21145470_m

犬の糖尿病は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きが悪くなって起こる病気です。インスリンは血液の糖(グルコース)を細胞内にとりこむ役割を果たしています。

よく見られる「犬の糖尿病」の症状

  • 多飲多尿
  • よく食べるのに太らない(痩せる)
  • お腹がふくれる
  • 白内障の併発

糖尿病の原因

1)食事

犬の糖尿病の原因として、まず挙げられるのが「食事・ドッグフード」の問題です。吸収されやすい糖質や炭水化物を多く含むドッグフードやおやつにより、血糖値が高くなり、糖尿病を発症することがあります。

また、過食や早食いも血糖値アップにつなります。

2)運動不足

散歩などが十分ではなく、運動不足になっているワンちゃんも、糖尿病への注意が必要です。血液中の糖分は、犬にとってエネルギー源となります。ところが、運動不足になり、血糖が十分に使われない状態が続くと、糖尿病になるリスクが高まってしまいます。

3)他の病気の影響

糖尿病と同じく「膵臓」にトラブルがおこる膵炎や、高血糖になりやすいクッシング症候群・甲状腺機能低下症といった病気の犬は、糖尿病のリスクが高くなります。

4)先天的・遺伝的な要因

膵臓の機能不全など、先天的な糖尿病のワンちゃんもいます。また、犬種や遺伝系統上、糖尿病になりやすい犬のタイプもあります。

犬種としては、プードル・ダックスフンド・ビーグル・シュナウザーなどが糖尿病になりやすいと考えられています。これらの犬種で、肥満ぎみのワンちゃんなどは、糖尿病への注意が必要かもしれません。

インスリン投与について

注射

糖尿病の治療として、まず考えらえるのがインスリンの投与です。犬にインスリン注射をしてあげることで、糖尿病によるインスリン不全の問題を解決できます。

ただし、インスリン投与には注意も必要です。犬の病状・体重・食事内容・運動量・生まれ持った要因などにより、最適なインスリンの投与量が異なります。インスリン量が多すぎると低血糖に、少なすぎると高血糖になるため、適量を注射しなければなりません。日々、インスリンの適量が変化していくことも、飼い主さんにとっては苦労が伴う点です。獣医師と相談の上、インスリン量をコントロールしてあげましょう。

※インスリン投与と食事の関係性については、下記のページで詳しくご案内しています。

犬の糖尿病 インスリンと食事の関係性

犬の糖尿病、食事療法4つのポイント

犬の食事対策

インスリン投与とともに、糖尿病に重要な対策が「食事療法」です。血糖値が安定する食事を心がけなければいけません。犬の糖尿病の食事療法として、4つのポイントをご紹介します。

1.糖質制限

1つめは、「糖質制限」です。ブドウ糖・砂糖など、血糖値がアップしやすい糖質は、できる限りさけるようにしましょう。また、消化吸収されやい炭水化物にも注意が必要です。甘いものはもちろん、白パン・白米ごはんなどは、犬の高血糖につながりやすく、与えないようにしましょう。

もう一つ、「糖質制限」につながるポイントがあります。糖質の吸収を穏やかにする、食物繊維や難消化性の炭水化物を与えることです。玄米や大麦、イモ類などは、炭水化物も含まれていますが、食物繊維も豊富です。そのため、血糖上昇は穏やかで、白米のかわりに玄米・大麦・イモを与えることは有効です。

さらに言うと、糖尿病の犬でも、高血糖にならないのであれば、ある程度の炭水化物を取り入れることが望まれます。炭水化物は犬のエネルギー源となり、不足することは健康上好ましくありません。だから、犬にとって優れた食物繊維源・炭水化物源である穀物・イモ類は、糖尿病の犬であっても、適量を与えた方が良いケースも多いです。

一方で、食物繊維には注意点があります。野菜類の食物繊維は、犬の腸にとって負担がかかる成分です。野菜類の過食は、肝臓などにも負担をかけることも知られています。そのため、野菜を与えるのであれば、しっかり茹でて茹で汁は捨て、少量を与えるようにしましょう。

2.低脂肪

犬の糖尿病は、膵炎・高脂血症・クッシング症候群・甲状腺機能低下症などの病気と、併発しやすい関係にあります。これらの併発疾患は、「高脂血」がかかわる病気であり、血糖値だけではなく、コレステロールや中性脂肪値にも注意が必要です。

つまり、併発リスクを考慮すると、「高脂血」へのケアも重要になります。糖質制限だではなく、できれば「低脂肪」のドッグフード・食事を選択しましょう。少なくとも、高脂肪のドッグフードは避けた方が良いと考えられています。

3.タンパク質などの栄養補給

糖尿病の犬であっても、身体の機能や構造をつかさどる「タンパク質」はしっかり補給しなければなりません。

ただし、必要以上にタンパク質を与えることは、糖尿病の犬にとって、マイナスに働くことがあります。どういうことかと言うと、インスリンの作用が不適切になると、血中にアミノ酸(タンパク質の素となる構成成分)が増加しやすくなります。高タンパク質は、血中アミノ酸を増やしかねず、腎臓障害につながります。だから、適量のタンパク質補給がポイントになります。

それから、ミネラルのバランスも糖尿病の食事に関わる要素です。糖尿による特殊な利尿状態などにより、犬の体内でミネラルバランスが崩れることがあります。そのため、犬の糖尿病に適切なミネラルバランスを保つことが必要です。

4.腸の健康

4つめのポイントは、「腸の健康」です。糖尿病と「腸」ということで、全く関係ないことと感じられるかもしれませんが、最近の研究により、深い関わりが報告されるようになりました。

犬に限ったことではなく、糖尿病の患者は、腸内細菌バランスが崩れている傾向にあります。また、腸内細菌バランスが崩れていると、糖質制限などの食事療法の効果が弱まることも報告されています。

糖尿病と腸内細菌バランスについて、もう少し詳しくご紹介します。

小腸は、60%以上もの免疫細胞が集まる器官として知られています。腸内の善玉菌アップにより、免疫スイッチが入り、免疫細胞の活動性が高まります。すると、免疫細胞が血中をめぐり、糖質などを食べてくれるような動きをとるようになります。つまり、免疫細胞の糖質消化により、血糖値が下がりやすくなるのです。

さらに、善玉菌の出す成分には、腸内の糖質・脂肪をからみとり、便として体外に排出するものがあります。だから、犬の腸内で善玉菌が増えると、腸内の糖質が吸収されずに排出され、血糖値上昇が抑えられるのです。

※犬の糖尿病には、大きく分けて2つのタイプ(型)があります。そして、糖尿病のタイプによって、食事管理の内容が少し異なります。下記ページでは、糖尿病のタイプによって異なる、2つの食事療法について、ご案内しています。

犬の糖尿病の食事療法 2つのパターン

犬の糖尿病に対応した食事療法療法食(ドッグフード)、「犬心 糖&脂コントロール」をお勧めします。

「犬の糖尿病」に対応、ナチュラル療法食(ドッグフード)

食事療法の実践

これまで、動物栄養学の知見をもとに、犬の糖尿病の食事について、4つのポイントをご紹介しました。ただ、理屈だけでは、どのように実践すればよいのか、不安視されている方も多いことと思います。

そこで、糖尿病の犬の手作り食をどのようにすればよいか、ドッグフードや療法食を選ぶ基準、などについて、簡単にご案内します。

犬の糖尿病 手作り食の実践ポイント

鶏のササミ・胸肉やお魚、場合によっては鹿肉・馬肉など、脂身の少ない肉魚を軽くボイルし、メインに与えるようにしましょう。そして、玄米・大麦・イモ類などを適量混ぜます。炊飯した穀類だけだと、犬によっては、消化しやすい炭水化物が多すぎることも考えられます。穀物・イモ類の量を調整するか、難消化性デンプンの含量がより高い、玄米粉などを少量混ぜるのも一つです。そこに、少量の野菜類などを混ぜる場合は、しっかり茹でて茹で汁は捨てるようにしましょう。

まとめると、肉類をメインに、適量の玄米・大麦・イモ、少量の茹で野菜、などが一般的なレシピになります。

犬の糖尿病 ドッグフード・療法食の選び方

次に市販フードの選び方をご案内します。ペットフードの栄養成分表示では、「炭水化物」や「糖質」の表示は義務化されていません。そのため、糖質量などでチェックすることが難しいドッグフードが一般的です。

だから、できれば、低炭水化物などに言及している商品、もっというと糖尿病対応の食事療法食を選ぶことが無難です。

そのうえで、脂肪量やタンパク質量はどうか、と見ていきます。粗脂肪15%以下(できれば10%以下)、タンパク質量20~35%(できれば25%前後)くらいが目安でしょうか(※他の病気を併発している場合、この範囲にとどまらないこともあります)。

そして、できれば原材料もチェックしましょう。添加物や保存料と思われる原料は、犬の腸を乱す恐れがあります。自然原料でも、糖尿病の犬に適さないものもありますが、そこまで検討することは大変なので、まずは人工物・合成物の少なそうなものを選びましょう。

まとめると、糖尿病・療法食もしくは低炭水化物のドッグフードの中で、脂肪量・タンパク質量を確認しながら、自然原料ベースのものを選択する、ということになります。

犬の糖尿病に対応した食事療法療法食(ドッグフード)、「犬心 糖&脂コントロール」をお勧めします。

「犬の糖尿病」に対応、ナチュラル療法食(ドッグフード)

補足:運動療法について

インスリン・食事療法に加えて、「運動」も犬の糖尿病対策の一つです。ワンちゃんの負担にならない範囲で、インスリン量や食事療法と連動しながら、計画的な運動療法を実施することも一つです。場合によっては、獣医師に相談しながら、糖尿病の計画的な運動療法を取り入れるようにしましょう。

犬の糖尿病 対策のまとめ

  • インスリンは、獣医師に相談しながら、犬の状態をチェックし、高血糖・低血糖に偏らないように適量を投与しましょう。
  • 食事療法のポイントは、「糖質制限」「低脂肪」「適度なタンパク質・ミネラル補給」「腸の健康(善玉菌アップ)」の4点です。
  • 食事療法の4ポイントにもとづき、肉魚・穀物やイモ類・少量の野菜などを合わせることで、糖尿病対応の手作り食ができます。
  • 市販ドッグフードについては、犬の糖尿病用の療法食などから、脂肪量やタンパク質量もチェックしながら、できるだけ自然素材のものを選びましょう。