犬にビタミンCは必要?!

「ビタミンCは、犬の体内で合成されるから、与える必要はない。」

犬の栄養学では、以前からビタミンC不要論がありました。でも、最新の栄養学では、異なる意見が出てきています。

「ビタミンCの欠乏により、病気になった犬の症例」「犬が合成できるビタミンCの量には限りがあること」「市販ドッグフードを食べている犬にとって、ビタミンCは重要な役割を果たしていること」などが理解されるようになってきました。

このページでは、犬とビタミンCの関係について、最新の科学に基づいた内容をご案内します。

<目次>

犬の体内でのビタミンCの役割

犬は、自分の体内でビタミンCを合成することができます。犬の体内で合成されたビタミンCは、身体の各所で下記のような役割を果たします。

  • フリーラジカルの消去 → フリーラジカルとは、酸化させる力が強い分子です。酸化は、病気や老化の要因となるため、フリーラジカルを消去することが犬の健康上大切です。
  • 抗酸化作用 → フリーラジカルの項でご案内したように、酸化は犬の身体にダメージを与えます。ビタミンCは、酸化を防ぐ力=抗酸化力を有しています。
  • 鉄の吸収促進 → ビタミンCは、犬の体内で鉄の取り込みをサポートする役割をもっています。
  • 酵素ヒドロキシゲナーゼのサポート → 「ヒドロキシゲナーゼ」という酵素は、犬の体内で解毒やホルモン代謝など、幅広い役割を担っています。ビタミンCは、ヒドロキシゲナーゼの働きをサポートします。
  • コラーゲンなどの合成 → コラーゲンは、犬の皮膚をはじめとする各所を構成する重要なタンパク質です。ビタミンCは、コラーゲンなどの合成にも関わっています。

ビタミンCの欠乏症

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昔から動物栄養学で「犬にビタミンCを与える必要はない」という考えがあります。理由として、「犬は肝臓内でビタミンCをつくれるから、外から与えなくても大丈夫」というロジックが存在するためです。

しかし、最近の研究により、犬においても「ビタミンC欠乏症」といえる症例がみられるようになりました。

犬のビタミンC欠乏症として、最もはっきりとした症例報告があるものが「壊血病」です。壊血病になると、コラーゲンの合成などが上手くいかなくなり、「皮膚や粘膜へのダメージ」「貧血」「免疫力低下」などが見られるようになります。

健康な犬でのビタミンC欠乏について

健康な犬では、どこまでビタミンCが必要なのか、明確な答えが出ていません(健康な犬では、はっきりとしたビタミンCの欠乏症が確認されていません)。

「犬の体内で合成されるビタミンCだけでは不十分」「犬の健康状態によっては、積極的にビタミンCを取り入れるべき」といった研究報告もあり、まだまだ犬におけるビタミンCの知見が不足している面があります。

それでも、ビタミンCにより、犬の皮膚や毛並みの状態にプラスとなることは間違いのないことです。健康な犬には必須栄養ではないけれども、与えるメリットが大きい成分、ということができるでしょう。

ビタミンCの過剰摂取

ビタミンCを取りすぎても、犬に害はないのでしょうか?

過剰摂取による悪影響の研究報告は見あたらないため、犬はビタミンCを取りすぎても問題ないと言えるでしょう。

特にビタミンCを必要とする、犬の症状

病気や健康状態、犬の特性により、ビタミンCを多く必要とすることもあります。以下、ビタミンCを特に必要とする犬について、ご紹介します。

1)肝臓病とビタミンC

犬の肝臓病では、「脂質の酸化」が関係している、という知見があります。ビタミンCは、ビタミンEと連動しながら、「脂質の酸化」を防ぎ、ダメージを緩和する効果があります。そのため、肝臓病の犬は、ビタミンCとビタミンEの両方を多めに取り入れることが推奨されています。

(※ビタミンEとビタミンCの関係については、「犬にとってのビタミンE」のページで詳細をご案内しています。)

2)骨・関節トラブルとビタミンC

犬の「骨や関節」に重要な成分の一つに、「コラーゲン」があります。ビタミンCは、コラーゲン生成に関わっています。そのため、骨・関節トラブルを抱えるワンちゃんたちは、ビタミンCを多めに与えることがお勧めです。

また、成長期のワンちゃんで骨格形成に不全がみられる子にも、ビタミンCはプラスに働くと考えられています。

3)皮膚トラブルとビタミンC

犬の各種の皮膚病・トラブルにも、ビタミンCは有用です。コラーゲン生成に加えて、抗酸化作用、皮膚の脂肪酸組成などにも好影響を及ぼします。

4)がん(癌)とビタミンC

犬の臨床報告において、ビタミンCが「がん(癌)」にプラスとなる、という知見はありません。

しかし、ビタミンCには一部の発癌物質の生成を防ぐ力があることが報告されており、犬のがん(癌)にもプラスとなる可能性があります。

また、ビタミンCには、抗がん剤などの薬剤副作用への抵抗性があることも知られており、この点を期待して、犬のがん(癌)にビタミンCを投与する獣医師もいます。

5)運動量の多い犬とビタミンC

スポーツドッグや運動量の多い犬では、ビタミンCを多量に与えることが望ましいです。

運動量が多い犬は、酸素吸引量が多く、酸化によるストレスを身体が抱えている状態にあります。そのため、ビタミンCを普通の犬よりも多めにとり、酸化の影響を少なくすることにより、身体へのダメージ緩和や疲労回復にプラスとなります

ドッグフードとビタミンC

市販ドッグフードの中にビタミンCを添加することは、難しい面があります。ビタミンCは一般的に熱に弱く、ドッグフードの製造工程で壊れやすいためです。

ただし、最近の技術では、ビタミンCを合成技術により改良し、より安定化させた成分も次々に登場しています。

今後、そのような安定化させたビタミンCをドッグフードに使用することも増えてくるかもしれません。

ビタミンCの代わりとなるポリフェノールについて

ドッグフードに安定させて含めることが難しい「ビタミンC」ですが、代わりとなる成分もあります。「ポリフェノール」です。

ポリフェノールは、植物質の素材に含まれている成分であり、野菜・果物・穀物などに広く存在します。ポリフェノールには、高い抗酸化力をもつものが多く、ビタミンCの代わりになる機能を有しています。

もちろん、犬にとってもポリフェノールは有用です。そして、ビタミンCと比べると、ポリフェノールはドッグフードの製造工程でも安定して存在させることができます。

犬の健康を考えると、ビタミンCの代わりにポリフェノールを一定量含んだドッグフードをチェックすることも一つの選択基準だと思います。

(※犬にポリフェノールを与えることについて、詳しくは次のページもご参照ください。→犬にポリフェノールの是非

ビタミンCとビタミンEの関係

「肝臓病とビタミンC」のところで少しご案内しましたが、ビタミンCはビタミンEと深く関わっています。

ビタミンC・ビタミンEともに、抗酸化力を発揮する成分です。そして、ビタミンCは、劣化したビタミンEを再生させる働きを有しています。

そのため、ビタミンCとビタミンEを合わせて取り入れると、犬の健康には相乗効果が期待できます。

(※詳しくは、「犬にとってのビタミンE」のページでご案内しています。)

まとめ

  • 犬の体内でビタミンCは、「フリーラジカル消去」「抗酸化作用」「鉄の吸収」「コラーゲン生成」などに関わっている。
  • 健康な犬でのビタミンC欠乏症は知られていない。しかし、ビタミンCの急性欠乏が原因とみられる「壊血病」発症の犬は報告されている。
  • ビタミンCは、犬の体内で合成されるため、必須栄養ではないが、与えるメリットが多々ある成分である。ビタミンCの過剰摂取について、悪影響は報告されていない。
  • 「肝臓病」「骨・関節トラブル」「皮膚病・皮膚トラブル」「がん(癌)」「運動量が多い」などの犬は、ビタミンCを多く取り入れることが好ましい。
  • ビタミンCは熱に弱い不安定な成分であるため、加熱工程を経るドッグフードの中に十分に含めることは難しい。しかし、近年、より安定なビタミンCが開発されるため、今後、ドッグフードへの応用が広がるかもしれない。
  • ビタミンCとビタミンEは、補完関係にあり、両方を取り入れるとより効果的である。

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