犬は果物を好む子が多いです。私も、しばしば愛犬のおやつに果物をあげていました。
でも、犬に果物を与えても大丈夫なのでしょうか?
このページでは、動物栄養学の観点から、犬に果物を与えても良いのか、どういうメリット・デメリットがあるのか、などご案内します。
<目次>
犬にとって、果物の利点
まず、犬にとっての果物の利点を見ていきましょう。次の4つのポイントが、どの果物にも共通するメリットとして挙げられます。
1)ビタミンC
ビタミンCは、犬の体内で抗酸化力を発揮し、たっぷり取りいれたい成分です。しかし、熱に弱く不安定な成分であるため、市販ドッグフードに十分に活性を残したまま活用することが難しいところがあります。
ほとんどの果物には、多くのビタミンCが含まれており、犬とって魅力的な要素です。
(※ビタミンCについて、詳しくは「犬にビタミンCは必要?」をご覧ください。)
2)ポリフェノール
果物に含まれるポリフェノールは、抗酸化物質として犬に健康メリットを及ぼす成分です。また、ポリフェノールとビタミンCは、相乗効果も期待できることも、果物の利点です。
(※ポリフェノールについては、次のページで詳しくご紹介しています。→「犬にポリフェノールの是非」)
3)食物繊維
果物には食物繊維が多く含まれています。そして、量が多いのみならず、犬に合ったタイプの食物繊維がベースです。
具体的には、「ペクチン」と呼ばれる食物繊維をメインとしている果物が多いのですが、ペクチンは犬の胃腸に優しいタイプの繊維質です。食物繊維の中には、犬に合わない硬質なタイプのものも存在しますが、野菜などと比べて果物は犬に優しいタイプの繊維質がベースとなっています。
(※食物繊維について、詳しくは「犬と食物繊維の相性」をご参照ください。)
4)水分補給
果物は、約90%が水でできています。
犬の中には、水を飲むことが苦手な子もいますが、そういうワンちゃんでも果物から水分を補給できることもメリットです。
果物の注意ポイント
次に、犬に与える際、果物の注意ポイントをまとめてみました。
①お腹が緩くなる
犬が多量に果物を食べると、お腹が緩くなりがちです。果物の食物繊維は犬に合ったタイプとはいえ、過剰になると下痢などの原因になってしまいます。
②甘さで病みつきになる
犬も甘みが大好きです。そのため、多くの犬は、果物を好んで食べます。
ただ、それが癖になって果物ばかりを求めるようになることもありますので、適切な与え方が求められます。
③太る?!
果物の甘さから、「犬が太ってしまうのでは?!」と思われる飼い主さんもいらっしゃいます。
確かに食べすぎはNGですが、甘みのもとである果物の糖質は、意外と太りにくい成分です。そして、果物は食物繊維が豊富であるため、逆に犬の肥満対策になるところもあります。
(※犬の肥満対策やダイエットについては、「犬のダイエット 4つの食事対策」をご覧ください。)
④血糖値がアップする?!
果物は甘く糖質が多い、という事実から「犬の血糖値がアップする?!」「糖尿病になってしまうのでは?!」と不安視されている方も多いことと思います。
でも、ご安心ください。果物は、比較的「低GI食品(血糖値がアップしにくい食品)」に位置付けられているものがほとんどです。
理由として、果物の食物繊維が糖吸収を穏やかにするとともに、含まれる糖質「果糖」は、ブドウ糖・ショ糖などと比べて血糖値を上げにくいタイプであることが挙げられます。そのため、過剰でなければ、果物による「犬の高血糖リスク」の心配はほとんどございません。(もちろん、すでに糖尿病になっているワンちゃんは、要注意です。)
(※犬の糖尿病は、次のページで詳しくご案内しています。→「犬の糖尿病 治療と食事」)
犬に与えても良い果物、与えてはいけない果物
果物といっても、もちろん色々な種類があります。
私たちの身近になる果物の中で、犬に「与えても良いもの」「少量なら良いもの」「与えてはいけないもの」を整理してご案内します。
与えてOKの果物
バナナ
食物繊維、ポリフェノール、ビタミンB群、カリウム、マグネシウムなどが豊富。犬のエネルギー源としても良好。
(※バナナについて、より詳しくは次のページもご覧ください。→「犬とバナナの栄養学」)
イチゴ
ビタミンCが果物中でも特に豊富。イチゴの食物繊維やポリフェノールも、犬にとって嬉しい成分。
(※イチゴに関して、「犬とイチゴの栄養学」もご参照ください。)
リンゴ
ポリフェノール、ペクチン(食物繊維)、有機酸などが豊富。
(※リンゴは、次のページで更に詳しくご案内しています。→「犬とリンゴの栄養学」)
モモ
ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB1、食物繊維などが豊富。
(※モモについて、より詳しくは「犬とモモの栄養学」もご参照ください。)
みかん
ビタミンCなどが豊富。ただし、みかんの皮は、薄皮も含めて犬に与えない方が良い。
ブルーベリー
ポリフェノール、食物繊維、ビタミンC、ビタミンEなどが豊富。
(※ブルベリーに関して、「犬にブルベリーが良い理由」もご覧ください。)
メロン(青肉種)
食物繊維、ビタミンCなどが豊富。ただし、カリウム含量が高い果物であるため、腎臓病の犬などは注意が必要。
少量なら与えて良い果物
メロン(赤肉種)
食物繊維、ビタミンC、ポリフェノールなどが豊富。ただし、βグルテン含量が高く、ビタミンA中毒リスクもあるため、犬に与えすぎることは要注意。
(※メロンについては、次のページで詳しくご案内しています。→「犬にメロン、知られていない注意点」)
パイナップル
ビタミンC、ビタミンB1、食物繊維、タンパク質分解酵素などを含む。ただし、パイナップルの食物繊維は、犬にとってやや硬質なタイプであるため、与えすぎには注意。
(※パイナップルは、次のページも参照いただけます。→「犬とパイナップルの栄養学」)
スイカ
スイカには、「リコピン」「シトルリン」「シスペイン」などの独自の有用成分が含まれる。一方で、βカロテン量が多く、犬のビタミンA中毒を招くリスクがあり、食べすぎには要注意。
(※スイカについて、より詳しくは「犬にスイカは控えめに?!」をご覧ください。)
与えてはいけない果物
ぶどう(レーズン)
ぶどう(レーズン)は、犬の急性腎不全を誘発する可能性があり、与えることはNG。
いちじく
中毒成分が含まれており、いちじくを犬に与えてはいけない。
果物の与え方
それでは、犬への果物の与え方をご紹介します。次のようなステップを踏むことがお勧めです。
ステップ①果物の種類をチェックする
犬にとって、「与えても良い果物」「少量なら与えて良い果物」「与えてはいけない果物」、いずれに該当するのかチェックしましょう。ぶどう・いちじく等、犬に与えてはいけない果物は避けましょう。
ステップ②基本的に「生・果物」を選ぶ
果物は、基本的に「生」を選ぶことがお勧めです。加熱調理すると、ビタミンCなど果物の良いところが奪われますし、生のままでも犬へのリスクは高くありません。
また、「ドライフルーツ」もお勧めできません。水分が飛ぶことにより、当分などが凝縮されすぎてしまいます。もしドライフルーツを犬に与えるのであれば、ごく少量にとどめ、空腹時は避けた方が良いでしょう。
ステップ③食べやすいサイズにカットし、少量を与える
果物を犬が食べやすいサイズにカットし、少量を与えるようにしましょう。どの果物も、多量に与えすぎるとお腹が緩くなったり、栄養バランスが偏ることもありますので、一口二口ほどにとどめるのが良いでしょう。
まとめ
- 犬にとって、果物には「ビタミンC」「ポリフェノール」「食物繊維」「水分補給」という利点がある。
- 犬に与える際、果物の注意点としては、「お腹が緩くなる」「甘さに病みつきになる」が挙げられる。果物により、犬が太る・血糖値がアップする、というイメージもあるが、その心配はほとんどない。
- 犬に与えても良い果物、与えてはいけない果物、それぞれが存在するため、注意が必要。
- 果物を犬に与える方法として、「果物の種類をチェック」「基本的に生を選択」「食べやすいサイズにカットし、少量与える」というステップを踏むことがお勧め。
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