「インスリン」と「食事療法」。
これらは、犬の糖尿病対策の両輪ですね。血糖値を安定させ、インスリンの必要量を節約するためにも、食事管理は必須です。
もう一つ、あまり知られていないこととして、糖尿病の2つのタイプ(型)ごとに、食事療法の内容が少し異なることが挙げられます。このページでは、犬の糖尿病における「食事療法 2つのパターン」について、ご案内します。
<目次>
犬の糖尿病 2つのタイプ(型)
犬の糖尿病には、大きく分けて2つのタイプ(型)があります。「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」の2つです。
違いを見ていきましょう。
インスリン依存性糖尿病(IDDM)
インスリン投与が必要となる糖尿病です。犬の糖尿病では、ほとんどがインスリン依存性です。
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)
インスリン治療が必須ではなく、食事管理で維持できる糖尿病です。犬の場合、稀な症状です。
(※糖尿病の分類については、病態・治療に基づいたIDDM/NIDDMが廃止され、原因による1型糖尿病/2型糖尿病などの分け方が一般的です。それでも、犬の臨床現場では、IDDM/NIDDMによる分け方が治療方法・食事療法の選択に有効であり、現在も活用されています。)
インスリン依存性糖尿病(IDDM)の食事療法
犬のIDDMは、インスリンを投与しなければ生活が難しい糖尿病です。インスリン投与を前提に、それに合わせた食事療法が望まれます。
食事の与え方
IDDMのワンちゃんは、食事とインスリンのタイミングを同調させることが重要です。つまり、食事からのエネルギー流入量に合わせて、インスリンの投与を行い、食後の血中糖質をとりこんでエネルギー源として活用します。
そのため、ドッグフード・食事からの流入エネルギー量を理解することが重要です。
通常、1日2回(朝・夕)の食事&インスリン投与を行います。
体重の管理
糖尿病の犬では、目標体重を定め、それに近づくように食事管理を行いましょう。
ただ、IDDMの犬では、無理なダイエットは禁物です。IDDMの犬の場合、膵臓の酵素分泌機能にトラブルが発生しているケースも多く、そうなると必要以上に痩せてしまうこともあるためです。
定期的に体重を測定し、食事内容をコントロールすることが求められます。
糖質の制限
犬に限らず、「糖尿病の食事」といえば、糖質制限がうかびますね。
しかし、糖質・炭水化物を減らせば減らすほど良いのかと言えば、そうとは限りません。過去には、徹底した糖質制限食が推奨されていましたが、最新の動物栄養学では、トータルの炭水化物量は糖尿病の犬と健常犬であまり差を設けない方がよい、という考えが一般的です。
とはいっても、糖質・炭水化物について、何ら考慮しなくても良い、という訳ではありません。炭水化物の総量をやや少なめにしながら、血糖値を高めやすいブドウ糖・砂糖などは避ける、という食事が望まれます。
食物繊維
食物繊維は、胃腸での糖の吸収をゆっくりにする機能があります。これにより、糖尿病の犬においても、血糖値の急なアップを避けることができます。
また、食物繊維の添加により、満腹感が得られやすくなり、過剰な食欲をおさえることも期待できます。
さらに、糖尿病と併発しやすい高脂血(高コレステロール・高中性脂肪)への対策にも貢献してくれます。
ビタミン
IDDMでは、膵臓酵素の外部分泌が低下し、ビタミンB群などの脂溶性ビタミンが不足しがちになります。これらを補給することも一つのポイントです。
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の食事療法
NIDDMのワンちゃんは、基本的に2型糖尿病であり、インスリン分泌能力が残っています。そのため、適切な食事管理を行えば、インスリン治療が不要です。
NIDDMの症状では、膵臓で少ないながらもインスリンが分泌されており、少量のインスリンに応じた食事内容がポイントです。
少量・頻回の食事
まず、回数を分けて少量ずつ、食事を与えるようにしましょう。1日に3~4回に分けた食事がお勧めです。
糖尿病のワンちゃんでは、血糖値の上昇や必要以上の低下をできるだけ避けなければなりません。そして、ドッグフードの食後、6~8時間は血糖値がある程度アップした状態になります。そのため、7~10時間おきに食事を与えることが理想です。
また、食事時間を規則正しくすることも、糖尿病のワンちゃんには重要です。適正な生活リズムを保つは、血糖値の安定にもつながります。
体重の管理
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の犬では、目標体重をやや低めに設定するケースが一般的です。
筋力低下や老齢なども関係し、糖尿病のワンちゃんは運動量が低下することが多く、必要エネルギーが少なくなる傾向にあるためです。(※ただし、個体差や様々な環境要因によって、一概に言えない面があるため、経過をみながら適宜コントロールしなければなりません。)
糖質の制限
NIDDMのワンちゃんも、IDDMと同じような糖質・炭水化物の対策を検討しましょう。
食物繊維
IDDMと同じく、NIDDMの犬でも、食物繊維はとても大切です。食後の急激な血糖値アップをおさえ、穏やかな糖吸収により、糖尿病の症状を緩和することができます。
ただし、食物繊維には多くの種類があり、注意も必要です。犬に合った食物繊維をバランスよく配合しなければなりません。胃腸の不順・負担とならず、ビタミン・ミネラルなどの吸収を阻害しないような、糖尿病の犬に合った食物繊維バランスが望まれます。
※犬の糖尿病の「治療と食事」について、全体的なお話は、下記のページをご参照くださいませ。
まとめ
- 犬の糖尿病には、「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」の2つのタイプがある。
- 「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」は、インスリン投与が必須。食事とインスリン投与を同調させ、体重管理を行いながら、糖質制限・食物繊維バランス・脂溶性ビタミン補給、といった食事療法の実施が重要。
- 「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」は、必ずしもインスリンに頼らなくも大丈夫な糖尿病。少ない体内インスリンに合わせ、少量頻回の食事・体重管理・糖質制限・食物繊維バランス、などがポイント。
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