食事やドッグフードと深く関係している、犬の高脂血症。犬の高脂血症は、その他の病気との併発リスクも高く、治療や対策をしっかりとる必要があります。そして、治療・対策とともに、低脂肪などの食事療法が必須の病気です。このページでは、犬の高脂血症の食事療法を4つのポイントにまとめ、ご紹介します。
<目次>
犬の高脂血症とは?
高脂血症の原因
犬の高脂血症は、血液検査により、コレステロールや中性脂肪・トリグリセリド値が高い状態にある病気です。このところ、高脂血症の犬は増える傾向にあり、質の悪い高脂肪のドッグフードや運動不足などが原因と考えられています。
犬の高脂血症 症状や発作
高脂血症の犬によくみられる症状として、下痢や嘔吐、食欲不振があります。また、神経障害を伴う発作がおこることもあります。一方で、症状としてあらわれない場合もあり、元気にしているのに血液検査で高コレステロール・中性脂肪が発覚した、というケースもみられます。
犬の高脂血症の治療
人間の高脂血症では、投薬がなされることもしばしばありますが、犬においては、あまり一般的ではありません。動物病院では薬での治療よりも、まずは食事・ドッグフードでの対策を指導されることが多いです。ただし、犬の高脂血症は、膵炎をはじめとする様々な疾患を伴っているケースが多く、他の病気との兼ね合いで治療方法が異なります。
要注意、併発リスク
犬の高脂血症は、他の病気を伴うことがとても多いです。膵炎、糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症、などです。肝臓・腎臓・心臓疾患との併発もみられます。高脂血症+他の病気の併発により、ワンちゃんの命に関わるリスクが高くなるため、治療方法・食事対策、どちらも注意が必要です。
犬の高脂血症と食事・ドッグフード
高脂血症の原因として、質の悪い高脂肪ドッグフードを与えていることが挙げられます。犬の高脂血症の食事対策には、高脂肪食の逆、「低脂肪」のドッグフードを与えることが最優先ポイントです。さらに、「脂肪の質」にも気を配るようにしましょう。(「脂肪の質」については、後ほど、詳しくお伝えします。)
犬の高脂血症は、低脂肪をはじめとする食事療法が必須の病気ということができます。
犬の高脂血症 食事療法4つのポイント
犬の高脂血症の食事療法は、「低脂肪」だけではありません。その他の併発しやすい病気のことも視野にいれながら、食事管理を行いましょう。
1)良質な「低脂肪」
先にお伝えしたように、「低脂肪」は犬の高脂血症、最優先の食事対策です。それに合わせて、「脂肪の質」を考えることも大切です。
脂肪といっても、様々な種類があります。その中で、高脂血症のワンちゃんに与えたい脂肪は、「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる栄養成分です。オメガ3脂肪酸は、魚や一部の植物に含まれています。EPAやDHAなど、オメガ3脂肪酸は、血中の脂肪を低下させることが知られています。
もう一つ、良質な脂肪のポイントとして、「酸化していない」ことが挙げられます。酸化が進んだ脂肪は、高脂血症にかぎらず、犬に多くの健康被害をもたらします。脂肪の酸化を防ぐためには、「酸素にふれる機会を少なくする」「ドッグフードの製造プロセスで高温にしない」ことが必要です。酸化防止剤を混ぜてドッグフードの脂肪酸化を防いでる商品もありますが、もちろん、本末転倒な話です。
なお、オメガ3脂肪酸は、熱に弱く、酸化しやすい脂肪です。そのため、手作り食で「良質な低脂肪」を目指すのであれば、できるだけフレッシュな生魚などを使い、加熱は最小限にとどめる(さっと茹でる・焼く)ことが望ましいです。
2)血糖値のコントロール
犬の高脂血症というと、コレステロール値や中性脂肪値が高まることから、食事としては「低脂肪」のみに気をつければよい、というイメージかもしれませんが、実はそうではありません。
高脂血症のワンちゃんは、糖尿病・クッシング症候群・甲状腺機能低下症といった病気を併発することが多く、これらは高血糖が問題となります。つまり、併発リスクを考慮して、血糖値をコントロールすることを視野にいれることが望ましいのです。
犬の血糖値をコントロールする食事の方法は、大きく分けて2つ。消化されやすい糖質・炭水化物を減らすこと、そして、血糖値アップを穏やかにする成分・素材を与えること、です。そのうち、血糖値アップを穏やかにする成分の一つが食物繊維。犬の消化器に合ったバランスの食物繊維を与えることが大切です。
3)タンパク質などの栄養補給
腎臓病・心臓病・肝臓病などの病気を併発していないのであれば、高脂血症の犬に「タンパク質」をしっかり補給してあげましょう。そして、ワンちゃんの負担軽減も考え、消化しやすい(消化性の高い)タンパク質を与えることが好ましいです。
犬にとって、消化しやすいタンパク質とは、まず、あまり強く加熱していない肉・魚が挙げられます。高熱加工された肉・魚は、タンパク質が変性した状態になり、消化しにくくアレルギーの原因ともなります。次に、アミノ酸バランスに配慮することもポイントです。犬にとって、良好なアミノ酸バランスについては、別ページでご案内できればと思います。
4)腸の健康、免疫力キープ
最近になって、高脂血症と腸内細菌バランスについて、密接な関係が科学報告されています。つまり、高脂血症の犬は、腸内細菌バランスが悪い(悪玉菌優勢)傾向にある、という知見です。
どうして、腸内細菌と高脂血症に関係があるのでしょうか?2つの理由が考えられます。
1つめは、腸内細菌が脂肪の代謝に関わっている、ということです。腸内細菌が脂肪を食べてくれること、そして、善玉菌が脂肪を絡めとり、体外へ排出してくれること、が知られています。善玉菌が増えることにより、犬の高脂血症をケアすることにもつながるかもしれません。
2つめは、免疫パワーです。小腸には、免疫細胞の60%以上が集まっていると考えられています。そして、腸内環境と免疫力には相関があります。つまり、善玉菌が増えると、免疫細胞も元気になる、というイメージです。元気になった免疫細胞は、血流にのって血中コレステロールなどを食べることが知られています。腸の健康→免疫力キープ→コレステロール・中性脂肪の管理、という流れができるということですね。
高脂血症と併発疾患の対策
先にお伝えしたように、犬の高脂血症は、膵炎・糖尿病・クッシング症候群・甲状腺機能低下症などを併発しやすい傾向にあります。だから、これら併発疾患を合わせて食事管理することが理想です。
別ページで詳しくお伝えしますが、高脂血症と併発しやすい病気も、「低脂肪」「低糖」「タンパク質など栄養補給」「腸の健康+免疫力キープ」といった食事療法が有効です。だから、犬の高脂血症・食事療法4つのポイントを実行することで、併発疾患をケアすることができるのです。
犬の高脂血症 治療・対策・食事療法のまとめ
それでは、本ページでお伝えした「犬の高脂血症」の対策をまとめます。
- 犬の高脂血症では、薬による治療の前に、食事療法を検討することが一般的。
- 犬の高脂血症の食事療法として、「低脂肪」「低糖」「タンパク質など栄養補給」「腸の健康+免疫力キープ」の4ポイントが大切。
- 犬の高脂血症・4ポイントの食事療法を行うことで、併発リスクの高い糖尿病・膵炎・クッシング症候群・甲状腺機能低下症などの病気もケアすることできる。