ドッグフードと犬種・犬齢

犬種や犬齢によって、適した食事・ドッグフードがあります。

このページでは、犬種を5つのカテゴリーにわけ、犬齢にもふれながら、各犬種カテゴリーに合った食事内容をご案内します。

<目次>

食性が異なる5つの犬種カテゴリー

  • 日本犬

柴犬

柴犬・紀州犬・秋田犬・甲斐犬・四国犬・北海道犬・日本スピッツなど、日本犬(和犬)は、洋犬とは全くことなる食性をもっています。

腸の長さが1.4倍!

実際に、日本犬は、同じ体重の洋犬たちと比べて、腸の長さが約1.4倍あります。腸は長ければ長いほど、肉食よりも雑食・草食に向いています。つまり、日本犬は、洋犬とくらべて雑食性の強い犬種と言えるのです。

このことは、日本犬たちが、私たち日本人と長年共生してきたことが大きいと考えられています。縄文人が日本犬と共生していた証拠がみつかっており、何千年かの時をかけ、食性を進化させてきたのでしょう。

日本犬に適した食事・ドッグフードとは?

柴犬をはじめとする日本犬は、比較的、何でも食べる傾向にあります。例えば、洋犬たちが苦手とする、野菜類の固い食物繊維も、日本犬は耐性が強いです。

一方で、肉類、とくに脂肪分が多いドッグフード・食事は苦手とする傾向があります。下痢などの消化器トラブルにみまわれることもしばしばです。

さらに特徴的なところは、穀物への適正が高いことです。縄文人から弥生人、そして現代日本人に通ずる大和民族と共生するなかで、穀物食への適応が進んだのでしょう。

以上のような栄養特性から、低脂肪の肉・魚と穀物をメインにそえ、場合によっては茹でた野菜を加えるような食事内容が、日本犬には合っています。市販ドッグフードでは、低脂肪かつ高繊維、そして食物繊維源を穀物・イモ類などから補っているものが良いでしょう。

それから、一つ留意点があります。全犬種にいえることですが、食品の安全性について、特に柴犬をはじめとする日本犬では注意してあげましょう。その理由として、日本犬は腸が長い分、しっかりと栄養吸収してしまうため、毒となるものまで体内に取り入れてしまう傾向にあります。添加物・保存料・アレルゲンとなりやすい成分・質の悪い原料などを多く含むドッグフードは、避けるようにしましょう。

  • 大型犬

シベリアンハスキー

ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー・シベリアンハスキー・シェパードなど大型犬たちは、小型犬と明確に栄養特性が異なります。その理由として、「大きな身体のわりに、内臓が小さい」ということがあります。

大型犬の内臓が小さい理由

大型犬は、ペット需要による産業的な犬種改良をうけ、急激な進化をとげてきたものがほとんどです。一方で、胃・腸をはじとする内臓は、その人工的で急な進化についてくることができず、小さいままの状態にあるのです。大型犬の寿命が、小型犬に比べて短い理由の一つが、この「小さいままの内臓」にあると考えられます。

そして、動物栄養学やドッグフードの内容も、小型犬・中型犬をベースに進展した経緯があるため、大型犬向きになっているとは言えません。

大型犬に合った食事・ドッグフードとは?

それでは、大型犬に適した食事・ドッグフードは、どのような内容になるのでしょうか?カギとなるのは、やはり、「大きな身体」と「小さい内臓」です。

まず、「大きな身体」を維持するために、大型犬はより多くの栄養をとらなければなりません。大型犬は、シニアに近づくにつれて病気や関節トラブルのリスクが高まるため、若いころからタンパク質を中心に栄養を取り入れていく必要があります。

一方で、多くの栄養を取り入れようとすると、胃腸をはじめ小さな内臓に負担がかかります。だから、「消化性の高い栄養」を与えることが重要なポイントとなります。

特に、タンパク質の消化性、脂肪の質はとても大切です。大型犬に合ったアミノ酸バランスのタンパク源を与え、脂肪分はオメガ3脂肪酸を中心とした酸化していないものを含むドッグフードが望まれます。

合わせて、食物繊維への留意も必要です。食物繊維が多すぎると、消化器の小さい大型犬には負担となります。その中でも、野菜類は避けたほうが良いかもしれません。野菜の食物繊維は、大型犬にとっては固いタイプであるためです。繊維源としては、穀物・イモ類がお勧めです。

  • 太りやすい犬種

ラブラドールレトリバー

個体差があるものの「太りやすい傾向の犬種」があります。ダックスフンド・ビーグル・柴犬・ラブラドールレトリバー・ゴールデンレトリバーなどが挙げられます。

これらの犬種は、体重管理を気にしなければいけませんが、だからといって最初から食事を減らすことを考えるのは危険です。必要な栄養も少なくなってしまう可能性があるためです。だから、まずは活動量を少しでも増やしてあげることを考えましょう。そのうえで、どうしても活動量を増やしにくいワンちゃんについて、少しだけドッグフードの量を減らすことを検討することがお勧めです。

低糖・低脂肪のドッグフードがおすすめ!

そして、太りやすい犬種では、低糖質・低脂肪のドッグフードがおすすめです。低糖質・低脂肪により、低カロリーが実現でき、自然なダイエット・体重管理ができます。さらに、タンパク質がある程度以上含まれていれば、なお良いでしょう。高タンパク・低糖・低脂肪のドッグフードにより、筋肉・基礎代謝をおとさず、犬の元気と健康を保ったまま体重コントロールが期待できます。

具体的なドッグフードの栄養数値の目安として、粗脂肪が10%前後以下、粗タンパク質は25%前後以上、その上で糖質・炭水化物が少なめのものが好ましいです。

(※犬のダイエットについては、次のページもご参照ください。→「犬のダイエット 4つの食事対策」)

  • スポーツドッグなど、運動量が多い犬

スポーツドッグ

スポーツドッグや運動量が多い犬は、かなり高栄養・高カロリーな食事・ドッグフードを与える必要があります。スポーツドッグの中でも、短距離型の犬では、普通のドッグフードと同様の栄養値で構いません。しかし、長距離型のスポーツドッグや長時間の活動を行う犬は、高エネルギーのドッグフードが欠かせません。

長距離型の犬の栄養特性として、「高脂肪」「高カロリー」「低・炭水化物」「高タンパク質」という要素が挙げられます。長距離・長時間であればあるほど、これらの栄養特性が強化されます。

犬齢とドッグフード

老齢の犬

一般的に、犬齢によって適したドッグフードの栄養内容がかわります。犬種による違いや生まれ持った個体差、太りやすいかどうか、活動量などによって、かなり差はありますが、犬齢を目安にドッグフードを検討することは大切です。

何歳でわけるのかには諸説ありますが、ドッグフード・ラボでは、次の4段階の犬齢にわけてご案内します。

1)乳児期(母犬がいない子の場合)

人間と同じように、乳児期の犬は母乳で育つことが理想です。だから、母犬の母乳で育てられない子については、母乳と同じような成分をもつミルクを与えることが基本となります。

犬の母乳成分は、かなり研究が進められており、市販の乳児犬用ミルクは、その研究成果が反映されています。母乳の栄養成分について、ご紹介することもできますが、かなり専門的な内容になるため、ここでは控えさせていただきます。

2)離乳から1歳ころまで(成長期)

犬は、誕生から1年ほどで急激な成長を遂げ、ほぼ大人といえる体格になります。この成長期には、1歳以降のころと比べ、多くの栄養素を必要とします。過度の肥満につながらないのであれば、欲しがる分の食事・ドッグフードを与えても差し支えありません。

市販ドッグフード(ドライフード)の栄養数値でいえば、下記が目安となります。

  • エネルギー:400kcal/100g前後(350kcal/100g以上が好ましい)
  • 粗タンパク質:25~30%前後
  • 粗脂肪:10%以上
  • オメガ3脂肪酸:0.03%以上

ただ、カルシウムとリンについては、バランスと適量に少し留意した方がよいでしょう。

  • カルシウム:0.7~1.7%
  • リン:0.6~1.3%
  • カルシウム/リンの比率:1~1.8

3)1~7歳くらい(若齢~中齢期)

多くの犬は、1歳になるとほぼ成長を完了しています。そのため、成長した身体の健康をキープするような栄養を過不足なく与えるようにしましょう。

摂取カロリーは、個体差がかなりあります。散歩をしっかり行うなど、十分な活動量がある犬は、ドライフードで350~400kcal/100gほどが目安となるでしょう。太り気味であったり、活動量が少ない犬は、350kcal/100g以下でも十分です。

脂肪については、通常、10%以上の粗脂肪を含むドッグフードが望まれます。そして、オメガ6脂肪酸やオメガ3脂肪酸をバランスよく十分量含んでいることも大切です。肥満や高脂血をかかえる犬は、より低脂肪で食事管理が必要となります。

そして、脂肪とセットで、食物繊維をチェックしてあげましょう。食物繊維は、犬にとってエネルギー源としては貧弱な栄養素です。一方で、満腹感を与えることができるため、肥満気味なワンちゃんは、より高食物繊維のドッグフードを検討することになります。発酵性の食物繊維による、腸内の乳酸菌・ビフィズス菌への好影響も見逃せません。

タンパク質は、20~35%ほどが目安です。腎臓病などタンパク質制限がかかるトラブルを持っている犬は、より低タンパク質のドッグフードが推奨されています。また、タンパク質の含量だけではなく、アミノ酸バランスや消化率によっても適量が異なり、体質・病気などによって最適なものを選ぶことがベストです。

その他、ビタミン・ミネラルなど、若齢期の犬ならではのポイントもありますが、別ページで詳しくご案内できればと思います。

4)8歳以上(中齢~高齢期)

犬は8歳ころになると、シニア世代に差し掛かります。そのため、食事・ドッグフードの目的は、生活の質をキープするとともに、より長寿で病気になりにくいものが求められます。また、基礎代謝が落ちてくるために、今までの食事ペースでは肥満になることも考えられます。太りやすい傾向にある犬は、肥満対策への意識を高めることも一つです。

そうは言っても、シニア犬の食事・ドッグフードは、若齢・中齢期のころと大きく変わるわけではありません。今までのドッグフードをベースに、個々の状態に合わせて、場合によってはマイナーチェンジをはかる、というイメージです。逆に、体調変化が何もないのに、急にドッグフード・食事を変えて、バランスを崩すこともあるため、注意しましょう。

追記:繁殖に関わる犬のドッグフード・食事

繁殖期でさかりがついた犬は、より多くのエネルギーが必要となります。繁殖に関わっていない犬と比べて、やや高カロリーなドッグフード・食事を検討してみてもよいでしょう。とはいえ、あまり極端に考えすぎず、総合栄養をバランスよく満たしながら、少し多めの食事を許容する、という考え方でOKです。

妊娠中の犬については、エネルギー要求量が大きく変わってきます。特に、妊娠5~8週目の犬は、30~60%増しのエネルギーが必要です。しかしながら、この周期では子宮のふくらみにより胃腸が圧迫され、食欲が落ちてしまいます。だから、妊娠初期のうちに十分な食事を与えてあげることがポイントとなります。できれば、400kcal/100g以上の高エネルギーなドッグフードを与えましょう。さらに、産後5週間ほどもエネルギー要求量が高いです。十分なミルク(母乳)が出るように、しっかりとした食事を与えることが大切です。

また、避妊の前後で必要エネルギーが変わることもよくあります。そのため、避妊前後の犬の状態をチェックしながら、食事・ドッグフードの量を調整してあげましょう。場合によっては、避妊後には、より脂肪量・カロリー量が少ないドッグフードに変更することも一つだと思います。

犬種・犬齢とドッグフードのまとめ

  • 犬種として、「日本犬」「大型犬」「太りやすい犬種」「運動量が多い犬」は、ドッグフードの栄養バランスに留意しましょう。
  • 犬齢については、4段階のライフステージを目安に、与える食事・ドッグフードを検討しましょう。また、繁殖期の犬も栄養特性が少し変わるため、留意してあげましょう。