ドッグフードの栄養事典

本を読む犬

ドッグフードに含まれる栄養成分について、ご案内します。手作り食を含め、栄養バランスのとれた犬の食事を実現するために、ご参照ください。

<目次>

ドッグフードの4大栄養

ドッグフードの基本栄養成分は、「タンパク質(粗タンパク質)」「脂質(粗脂肪)」「食物繊維(粗繊維)」「炭水化物(糖質)」の4つです。これらの成分を計算式に照らし合わせて、カロリーが決まります。市販ドッグフードには、「炭水化物」を除く3つの栄養数値について、表示がなされています。(炭水化物の数値を表示しているドッグフードもあります。)手作り食においても、これらの栄養素を概算することは、犬の食事管理に大切なポイントです。

犬に理想のタンパク質

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タンパク質は、犬の血・肉・骨をつくり、活動を支える大切な栄養素です。だから、ある程度以上のタンパク質を与える必要があります。しかし、タンパク質の数値を見るだけでは不十分です。犬に適したタンパク質であることが重要です。

では、犬に適した、理想的なタンパク質とは、一体どのようなものでしょうか?

1)消化が良い

まずは、「消化が良い」ことが挙げられます。消化しにくいタンパク質は、アレルギーの原因物質となり、消化器に負担をかけます。例えば、小麦に含まれる「グルテン」と呼ばれるタンパク質は、とても粘り気があり、消化しにくくアレルゲンの代表とされています。このようなタンパク質を犬に与えることは、避けなければいけません。

ただし、とにかく消化しやすいほど良い、というわけではありません。例えば、タンパク質をアミノ酸単位などに小さく分解したドッグフード等もあり、消化の良さは抜群ですが、

2)変性していない

次に、「変性していない」タンパク質も有用です。タンパク質は、加熱により構造変化を起こします。この構造変化を「タンパク質の変性」と呼んでいます。変性したタンパク質は消化されにくく、アレルギーの発症要因ともなります。つまり、加熱を最小限にとどめたタンパク源が望まれます。

3)アミノ酸バランス

さらには、「アミノ酸バランス」が重要です。アミノ酸とは、タンパク質を構成している成分です。約20種のアミノ酸が連なって、タンパク質が作られているのです。アミノ酸は種類により、犬の体内での役割が異なります。だから、犬にとってのアミノ酸バランスがとれた、タンパク質を選ぶことが大切です。

【実践!】犬に理想のタンパク質

以上の3点を満たした「犬にとって理想的なタンパク質」は、どうやって実践すれば良いでしょうか?

まずは、フレッシュで脂身の少ない肉・魚をメインにそえることがお勧めです。新鮮な肉・魚は、犬が消化しやすく、アミノ酸バランスにも優れています。

そして、加熱は最小限にとどめましょう。菌や寄生虫の感染がこわいため、肉・魚の表面が白くなる程度に軽く茹でるなどしてあげましょう。加熱を最小限にすることで、タンパク質の変性を防ぐことができます。

アミノ酸バランスをさらに理想に近づけるために、適量の穀類(玄米や大麦など)、少量の大豆食品などをトッピングしてあげても構いません。穀類は、炊飯してあげると良いでしょう。ただし、大豆食品は、多量にあげると下痢をするなどマイナスの影響もあるため、あくまで少量にとどめておきましょう。

市販ドッグフード選択時の注意

市販ドッグフードを選ぶ際にも、「犬にとって理想的なタンパク質」の3つのポイントが参考になります。例えば、下記のような点をチェックしてみましょう。

  • 原材料が生肉・生魚がメインになっているか(肉粉・肉副産物などではないか)
  • 強力な加熱・オイルコーティングなど、タンパク質を変性してしまう加工方法をとっていないか
  • アミノ酸バランスを意識して、設計したドッグフードなのか

ただ、市販ドッグフードのラベル表示だけでは、上記の3ポイント全てをチェックすることが難しいため、直接メーカー・販売者に問い合わせしてみるなどが必要かもしれませんね。

脂肪の「質」に要注意!

脂肪の「量」に気をつけることは大切です。健康な犬であれば、10%前後の脂肪を与えることが好ましいです。ダイエットが必要な犬や高脂血症などの病気を抱えるワンちゃんは、より低脂肪な食事・ドッグフードが望まれます。

一方で、脂肪の「質」を気にされたことはあるでしょうか?

  • 脂肪の種類
  • 酸化レベル

この2点を脂肪の「質」ととらえ、犬の食事・ドッグフードを見直すことがとても重要です。

1)脂肪の種類

まず、「脂肪の種類」について。脂肪の中には、「必須脂肪酸」と呼ばれるものがあります。これらは、犬の体内で作ることができないため、外部から適量を取り入れる必要があります。だから「必須」という言葉ついているのです。必須脂肪酸の中には、「オメガ3脂肪酸」「オメガ6脂肪酸」などがあります。特に、「オメガ3脂肪酸」は、市販ドッグフードでは十分量を取り入れにくい成分です。手作り食でも、オメガ3脂肪酸を犬に与える際に、注意が必要です。以下にご紹介する「脂肪の酸化」について、オメガ3脂肪酸は、とても酸化しやすいデリケートな成分であるためです。

2)酸化レベル

次に、「脂肪の酸化レベル」を気にするようにしましょう。脂肪は、空気(酸素)にふれたり、高温にさらされると「酸化」が進みます。酸化が進んだ脂肪は、犬に健康被害をもたらすことがわかっており、市販ドッグフードでも「酸価」という指標を用いて、生産管理を行っています。多くのドッグフードでは、「酸価6以下」という基準が設けられています。

ただし、この基準が十分とは言えません。「酸価2~6」レベルの脂肪は、続けて犬に与えると、健康被害をもたらします。だから、犬のことを本当に考えると、「酸価1以下」といった条件が適切と言えるのです。ところが、多くの市販ドッグフードは、「酸価1以下」とはなっていません。

ドッグフードが酸化している理由

どうして、市販ドッグフードは、酸化が進んだ状態にあるのでしょうか?その原因は、「原料の質」「製造プロセス」にあります。

原料の中では、「肉粉・肉骨粉」「肉副産物」などが危険です。粉にした状態で保存するため、酸化がどんどん進んでしまうのです。そして、粉での保存中、酸化を防ぐために「酸化防止剤」を加えられることも一般的です。粉に加えられた酸化防止剤は、ドッグフードの原材料表示に明記されないため、問題が隠された状況にあります。

「製造プロセス」については、高温で加熱するスタイルが脂肪の酸化を進めます。多くのドッグフードは、コストを抑えて量産化するために、強力な熱を加えます。さらに、仕上げとして「オイルコーティング」という方法でドッグフードを固めます。これらの流れが、脂肪の酸化レベルに大きな影を落としています。

以上のように、オメガ3脂肪酸などの含量・脂肪の酸化レベル、に気をつけながら、ドッグフード選びや手作り食を実践いただければと思います。

炭水化物の正しい与え方

diet, cooking, culinary and carbohydrate food concept - close up of grain, pasta and beans in glass bowls with potatoes on table

「犬は肉食系で、脂肪をエネルギーにできるから、炭水化物は必要ない。」といった情報を目にすることがあります。しかし、これは非科学的な間違った内容です。犬も、炭水化物を適切に取り入れることが大切です。ただし、炭水化物の与え方や量には、注意が必要です。

炭水化物の量

まず、消化しやすい糖質・炭水化物を多量に与えすぎることは、犬に好ましくありません。糖尿病などのリスクが高くなってしまい、タンパク質などの栄養を十分に取り入れられなくなる恐れもあります。そのため、「スイーツ類など甘いものは極力与えず、穀物・イモ類などから適量の炭水化物を取り入れる」というイメージになります。

炭水化物のバランス

さらには、「ある程度消化しやすい炭水化物」と「消化しにくい炭水化物」をバランスよく与えることができれば、犬の健康になお良いです。例えば、「炊飯した玄米・大麦」と「炊飯していない穀物の粉」を3:1ほどの比率で適量与えれば、犬には好ましいバランスとなります。

「犬の腸」と「食物繊維」の関係

「食物繊維」も犬には重要な栄養素です。特に、「犬の腸」の健康を考える上で欠かせません。

食物繊維の量・種類

ただし、食物繊維が多ければよい、ということではありません。犬は人間と比べると肉食性が強く、多量の食物繊維に向いていない傾向にあります。腸が短く、繊維質を十分に利用できないのです。

だから、「食物繊維」の種類とバランスを考えてあげなければなりません。まず、野菜類の食物繊維は、犬の腸との相性があまりよくありません。犬の腸にとって、野菜の食物繊維は固いタイプのものであり、消化の負担や場合によっては腸を傷つけることもあります。

犬に合った食物繊維

では、どういった食物繊維が犬に合っているのか、その答えは「穀物」「イモ類」です。穀物・イモ類に含まれる食物繊維は、犬の腸に合った柔らかさをもっており、腸を健やかに保つ働きをします。そのため、炭水化物源としても、食物繊維源としても、穀物・イモ類は、犬にピッタリと合っています。

適量の繊維質をとり、犬の腸の善玉菌をアップさせるためにも、穀物・イモ類を適量与えるようにしましょう。

ビタミン・ミネラルのバランス

ビタミンやミネラルのバランスがとれた食事・ドッグフードも、犬の健康には大事です。各成分と犬の健康についての詳細は、別ページでご案内いたします。

※ビタミンEについて、「犬にとってのビタミンE」にてご案内しています。

こちらでは、犬が注意すべきビタミン「βカロテン」についてのみ、ご案内します。

βカロテンの注意点

βカロテンは、ニンジンなどに多く含まれるビタミンです。ニンジン以外でも、緑黄色野菜に広く含まれています。

このβカロテンは、犬と人間で栄養代謝に大きな差のある成分です。5倍以上も代謝に差があるとされており、人間には問題なくても、犬ではβカロテン摂取量を気にしなければなりません。もし、βカロテンを過剰量与えると、肝臓などに負担がかかり、病気の一因となりえます。

そういった事情から、私たちは、緑黄色野菜を犬に与えることをあまり推奨していません。与えるとしても、少量のみにとどめた上で、しっかり茹でて茹で汁を捨てることが大切です。βカロテンは、熱に比較的安定な脂溶性ビタミンであるため、茹でて茹で汁を捨てたところで、半分以上は残ります。それでも、少しでもβカロテン・リスクを排除するために、茹でることをお勧めしています。

その他、犬に大切な栄養素

タンパク質・脂質・炭水化物・食物繊維・ビタミン・ミネラル。これらのバランスがとれていれば、犬は健康に成長していくことでしょう。一方で、さらにプラスアルファの要素として、犬の健康に大切な栄養素もあります。

免疫力キープの成分

例えば、犬の免疫力を維持する「βグルカン」「LPS」などの成分が挙げられます。これらの成分は、犬の小腸表面などに受け皿となる「レセプター」が存在します。βグルカンやLPSと、犬の小腸表面にあるレセプターが接触すると、免疫細胞に刺激が走ることが知られています。これらの成分を取り入れることで、犬の免疫力を保ち、健康をキープすることができます。

ドッグフードの栄養成分 まとめ

  • ドッグフードの4大栄養として、「タンパク質」「脂質」「炭水化物・糖質」「食物繊維」が挙げられる。
  • タンパク質は、「高消化性」「未変性」「アミノ酸バランスが良好」なものが犬の健康に好ましい。
  • 脂質は、犬の健康状態・体質に合わせて量を調整するとともに、「脂肪の種類」「酸化レベル」にも気をつける。
  • 炭水化物は、消化しやすすぎる糖質などを避け、適量の可消化炭水化物・難消化炭水化物をバランスよく与える。
  • 食物繊維は、穀物やイモ類などから、犬に合ったタイプを与える。
  • ビタミン・ミネラルも犬に合ったバランスで適量を与える。βカロテンは過剰摂取にならないように留意する。
  • βグルカンやLPSなど、犬の免疫力をキープする成分もチェックする。