犬とチーズの栄養学

チーズ

「チーズは、塩分・脂肪分が多いから、犬には注意が必要。」と言われることが多いです。

本当でしょうか?

犬にチーズを与えることについて、不正確な情報も多いように思います。そこで、このページでは、「犬にとってのチーズ」というテーマで栄養学の知見にもとづいた情報をお伝えします。

<目次>

チーズの「塩分」「脂肪分」について

チーズは、犬にとって必要な栄養を多く含んだ食品です。特に「タンパク質・アミノ酸」「ビタミンC以外のビタミン類」「カルシウム」の豊富さは、犬に魅力的です。さらに、犬のお腹を緩くしがちな成分「乳糖」が、牛乳やヨーグルトなど他の乳製品と比べてかなり少なく、その点もチーズのメリットと言えます。

一方で、チーズは「塩分(ナトリウム)」「脂肪」の多さが、犬にとってデメリットと捉えられています。

チーズの「塩分(ナトリウム)」は問題アリ?!

チーズに含まれるナトリウム量は、パルメザン1.5%、プロセスチーズ1.1%、カマンベール0.8%、カッテージ0.4%、クリームチーズ0.26%です。

犬のナトリウム量については、乾燥重量で1.5%以下が適切とされています。各種のチーズには、ある程度の水分が含まれているため、犬がチーズのみを食べた場合、やはりナトリウムの取りすぎとなってしまいます。

とはいえ、犬がチーズを主食にするようなことはないでしょうから、おやつとして1日一切れ食べる程度であれば、まず塩分(ナトリウム)が過剰とはならないでしょう。

チーズの「脂肪」の中身

もう一点、チーズが「高脂肪」であることも、犬の健康を考えれば気になるポイントです。

チーズの脂肪量は、種類によって差がありますが、おおよそ25~33%といったところです。チーズの1/3近くが脂肪ということで、犬にとってもやはり相当「高脂肪」の食品です。

でも、チーズの脂肪の中身をチェックすれば、良い側面がみえてきます。チーズの脂肪には、「短鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」といったタイプが多く含まれています。これら「短鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」は、犬にとってヘルシーな脂肪として知られ、良質なエネルギー源であり健康効果も期待できる成分です。

つまり、チーズは確かに高脂肪食品だけれども、犬にとって良質な脂肪が多く、問題になりにくい、と言うことができます。

チーズの栄養

犬にとって、「高塩分」「高脂肪」はある程度の注意が必要ですが、チーズには利点となる栄養もあります。

良質なタンパク質源

チーズは、タンパク質源として優れた食品です。牛乳ヨーグルトといった乳製品は、犬にとってアミノ酸バランスの良い食品であり、チーズにはより凝縮されたタンパク質が含まれています。

カルシウムが豊富

犬が不足しがちな栄養の一つに「カルシウム」があります。チーズには、カルシウムが豊富に含まれており、この点も犬にとってお勧めできる要素です。

一方で、チーズは鉄分が少ない食品です。そして、カルシウムは鉄の吸収をブロックするところがあります。総合栄養食のドッグフードを食べていると、鉄分不足になることはまずありませんが、貧血のワンちゃんなどは注意が必要です。

ビタミンA・ビタミンB2が豊富

チーズは、ビタミンCを除くビタミン類が豊富です。特に、ビタミンA・ビタミンB2をたっぷり含むことがチーズの特徴です。

ただ、犬は、ビタミンAが過剰になりやすいため、この点については注意が必要です。

乳糖が少ない

犬の中には、乳製品に含まれる「乳糖」を苦手とする子がいます。牛乳を飲んで下痢をしがちなワンちゃんは、乳糖が原因の可能性が高いです。

一方で、チーズは、牛乳やヨーグルトと比べて、乳糖が少なくなっています。チーズの発酵・製造プロセスにより、乳糖がほとんどなくなり、乳製品が苦手な犬でも、チーズは大丈夫なケースも多いです。

(※牛乳や乳糖のことについて、詳しくは「犬に牛乳を与えても良い理由」をご参照ください。)

チーズの乳酸菌は?

乳酸菌は、犬の健康にもプラスの影響を及ぼす腸内善玉菌として知られています。そして、乳酸菌の食べ物では「ヨーグルト」がよく知られていますが、実は「チーズ」も乳酸菌を活用した発酵食品です。

それならば、犬はチーズからもヨーグルトと同様に乳酸菌の恩恵を受けることができるのかといえば、必ずしもYESという訳ではありません。

種類にもよりますが、チーズはヨーグルトと比べて乳酸菌の数がかなり少ないためです。チーズを食べることで、犬の腸内乳酸菌が増える、ということは期待できないかもしれません。

(※犬と乳酸菌については、「犬への乳酸菌効果を高めるコツ」をご覧ください。)

チーズに注意が必要な犬のタイプ

以上、チーズは確かに「高塩分」「高脂肪」食品だけれども、おやつやトッピングとして少量与える分には問題ない、むしろ犬にとって栄養に優れ、健康メリットも多いことをお伝えしました。

ただ、そうは言っても、チーズに注意が必要なタイプのワンちゃんもいます。特に、次のような、塩分制限や低脂肪食が望まれる病気の犬は、チーズを控えなければなりません

①心臓疾患の犬

心臓疾患の犬は、ナトリウムをはじめとする塩分制限による食事が推奨されています。特に、心不全など、重症度が高い心臓病の犬は、厳しいナトリウム制限が課せられることもあります。

②腎臓病の犬

腎不全をはじめとする、腎臓病の犬でも、ナトリウム制限が行われます。

③肝臓病の犬

肝臓病の犬に対しても、ナトリウム制限が必要となるケースもあります。例えば、胆管が閉塞している場合など、ナトリウムを0.25%以下にした方が良い、という報告がなされています。

④膵炎の犬

膵炎のワンちゃんでは、脂肪の消化吸収がうまく行えないことが多く、低脂肪の食事が望まれます。

チーズは、脂肪の内容が良いとはいえ、高脂肪食であることに違いはないため、膵炎の犬に不適な食べ物と考えられます。

⑤高脂血症の犬

コレステロールや中性脂肪の数値が高くなる犬の病気「高脂血症」の子も、低脂肪食が望まれます。

チーズは「中・短鎖脂肪酸」が多く、比較的「高脂血症」の犬に与えても大丈夫なタイプの脂肪です。それでも、チーズの脂肪量を考えると、高脂血症の犬に与えるべきではありません。

また、膵炎・クッシング症候群・甲状腺機能低下症などの犬も、高脂血症を併発することが多いです。そのため、これら疾患のワンちゃんもチーズは控えめにした方が良いでしょう。

⑥肥満の犬

ぽっちゃり気味でダイエットが望まれる犬にも、チーズは適さないでしょう。

チーズは、脂肪を含めて良質な栄養を含み、高タンパク質である点などはダイエットにも良いところです。それでも、高脂肪により高カロリー食品となっているため、肥満犬にはチーズを与えすぎない方がベターでしょう。

犬用チーズの是非

犬用のチーズも市販されています。犬用チーズは、人用とどういう違いがあるのでしょうか?

商品により違いはありますが、犬用は「チーズ+他のものミックス」の加工品が多いです。中には、チーズに小麦粉や保存料などを混ぜている商品も多くみられ、犬にとって好ましいとは言えないものもあります。

犬用チーズは「塩分控えめ」などの配慮がなされていますが、その他の要素でワンちゃんへの懸念点もみられ、注意が必要です。

チーズの与え方

チーズ

それでは、実際に、犬へのチーズの与え方を見ていきましょう。

ステップ①愛犬のチーズへの適性をチェック

まずは愛犬がチーズに注意が必要なタイプではないか、確認をしましょう。先にご紹介した病歴がある犬は、チーズを避けた方が無難です。

ステップ②チーズの選択

次に、愛犬に適したチーズを選んであげましょう。

もし、人用のチーズを選ぶのであれば、高塩分タイプのものは避けた方が良いでしょう。犬用チーズについては、添加物や原料が気になるところです。パッケージ記載の原材料欄をチェックして、犬用チーズを判断しましょう。

ステップ③少量を与える

栄養価が高いとはいえ、高塩分・高脂肪のチーズを、犬に与えすぎることは危険です。少量のみをおやつや食事のトッピングとして与えるようにしましょう。

まとめ

  • チーズは、高塩分・高脂肪食品だが、タンパク質をはじめとする栄養に優れており、少量であれば犬に与えることがお勧めできる食べ物。
  • チーズに含まれる栄養成分として、「良質なタンパク質」「カルシウム」「ビタミンA・ビタミンB2」などがある。乳製品の中では低乳糖の食品であり、この点は犬にとってもメリットとなる。一方で、乳酸菌については整腸作用が期待できるほどの含有量がない。
  • チーズを犬に与える際、塩分や脂肪の食事管理が必要な病気について、注意が必要である。
  • 犬へのチーズの与え方は、「チーズの適正チェック」「チーズの選択」「少量のみ与える」というステップを踏むことがお勧め。

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