犬の膵炎の食事では、「低脂肪」であることが重要です。合わせて、もう一つ注意しなければならないポイントとして「タンパク質」に関わることが挙げられます。
このページでは、犬の膵炎と食事中のタンパク質について、動物栄養学の観点からご案内します。
<目次>
膵炎の犬、タンパク質の留意点
犬の膵臓は、消化酵素などを分泌する器官です。健康な犬では、膵臓で作られた消化酵素が小胞に包まれ、腸などに運ばれて食事の消化吸収をサポートしてくれます。ところが、膵炎の犬では、酵素が腸などに運ばれる前に働いてしまい、自分の細胞に炎症をおこしてしまいます。
そのため、膵炎の犬では、膵臓酵素の分泌に刺激を与えないような食事が望まれます。
犬において、膵臓からの酵素分泌に刺激を与える要因が、「脂肪」そして「ある種のタンパク質」です。脂肪については、犬の膵炎でよく知られており、食事対策の一番手に挙げられています。(※犬の膵炎、脂肪などの留意点については、「犬の膵炎、治療と食事」で詳しくご案内しています。)
膵臓の酵素分泌に刺激を与えるタンパク質とは?
膵臓の酵素分泌に刺激を与える、つまり「犬の膵炎の症状を悪化させうる」タンパク質について、ご紹介します。
食事中のタンパク質は、20種類のアミノ酸の連なりでできています。それらタンパク質中のアミノ酸のうち、「フェニルアラニン」「トリプトファン」「バリン」といった種類が、犬の膵臓分泌に強い刺激を与えることが報告されています。これら3種のアミノ酸は、脂肪以上に犬の膵炎の負担になる成分と考えられています。
そのため、フェニルアラニン・トリプトファン・バリンを多く含むタンパク質は、膵炎の犬には与えすぎないことが望まれます。
犬の膵炎、タンパク質リスクを和らげる2つの食事対策
フェニルアラニン・トリプトファン・バリンによる、犬の膵酵素分泌の刺激は、腸内で起こります。つまり、これら3種のアミノ酸が腸内に滞留すればするほど、膵臓が刺激され、犬の膵炎症状が悪化する恐れがあります。
それならば、3種のアミノ酸を極力省けばよいのかというと、そう簡単ではありません。肉を含むほとんどのタンパク源には、3種のアミノ酸も一定量含まれており、どの食べ物を選んだとしても、犬の膵臓負担をゼロにすることはできません。
犬の膵炎における、タンパク質の重要性
また、膵炎の犬において、タンパク質はとても重要な成分です。犬の体内の炎症を修復してくれるのが「タンパク質」であり、膵炎には一定量以上のタンパク質が必要となります。
タンパク質を補給しながら、膵炎悪化リスクを抑える食事対策
フェニルアラニン・トリプトファン・バリンによるリスクをコントロールしながら、膵炎の犬に必要なタンパク質をしっかり補給するためには、次のような2つの食事対策が望まれます。
①タンパク質を与えすぎない
第一に、タンパク質の総量を抑えることです。市販のドッグフード(ドライタイプ)で言えば、粗タンパク質量で30%を超えるものは避けた方が良いでしょう。かと言って、タンパク質量が少なすぎる食事も、膵炎の犬には不適です。少なすぎず多すぎないタンパク質量が、膵炎の犬には適しています。
②消化の良いタンパク質を与える
第二に、「タンパク質の消化性」もポイントです。消化の良いタンパク質は、犬の腸内での滞留時間が短く、膵臓への刺激が少なくなります。
「タンパク質の消化性」を決める要素は幾つかありますが、「フレッシュなタンパク源を選ぶ」「加熱しすぎない」「アミノ酸バランスに留意する」「食物繊維の種類と量をチェックする」などが挙げられます。こういったタンパク質の消化性については、「犬にお肉・生肉、注意すべき4ポイント」をご参照ください。
市販ドッグフード・手作り食でのチェックポイント
それでは、犬の膵炎の食事について、タンパク質に配慮したチェックポイントをご案内します。市販ドッグフード・手作り食、それぞれで見ていきましょう。
市販ドッグフード
- ドライフードでタンパク質量が15~30%のものを選ぶ
- タンパク資の消化性に配慮したものを選ぶ
手作り食
まとめ
- 膵炎の犬にとって、タンパク質に含まれる3種のアミノ酸「フェニルアラニン」「トリプトファン」「バリン」は、膵臓負担となる成分。
- 3種のアミノ酸が膵炎負担となりにくい食事対策として、「多すぎず少なすぎないタンパク質量」「消化しやすいタンパク質」の2ポイントが挙げられる。
- 犬の膵炎の食事について、市販ドッグフード・手作り食でのポイントは、「タンパク質が多すぎない・肉食に偏りすぎない」「消化性に配慮する」などがある。
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