犬の血便 チェックと対策

チェックリスト

私自身も経験しましたが、愛犬の血便を見つけたとき、ショックで心配になります。

でも、焦らず落ち着いて「血便のタイプ」をチェックし、見極めることが大切です。犬の血便には様々な種類があり、各タイプによって対策が異なるためです。

このページでは、犬の血便のタイプを見極めるチェックポイントと共に、食事などの対策について、ご案内します。

<目次>

犬の「血便タイプ」症状からのチェックポイント

一言で「犬の血便」といっても、症状は多様です。例えば、「便・下痢の状態」「血液の色・状態・混ざり方」「排便の量・頻度」「嘔吐の有無」「血便・下痢・嘔吐以外の症状」など、違いがあります。

そして、犬の「血便タイプ」を正しく判断し、それぞれに合った治療・対策をとることが大切です。

そこで、以下に犬の症状から判断できる「血便タイプ」を整理し、チェックポイントとしてまとめてみました。

①鮮血が混ざる「大腸性の血便」

便の内側もしくは外側に、鮮血が混ざっているタイプの血便は、犬の「大腸」に問題を抱えていることが多いです。また、赤い血液の付着だけではなく、ゼリー状の粘膜便が混ざった下痢になることもあります。

犬の消化・排泄の流れとして、胃→小腸→大腸→肛門という順になりますが、便に鮮血が混ざっているということは、比較的「肛門」よりの部位でトラブルが起こっていることを意味します。さらに、犬の粘膜便は、大腸の粘膜がはがれおち、血便とともに排泄されている可能性が高いです。

また、犬の「大腸性の血便」の特徴的な症状として、少量の便(下痢)頻回(便の回数が多く)見られる、ということが挙げられます。

②黒色タール状「小腸性の血便」

黒色便、もしくは、黒色タール状の下痢が見られることもあります。これも、「犬の血便」の一種です。

黒色便・黒色タール状の下痢を伴う血便は、犬の「小腸」にトラブルを抱えていることが一般的です。また、胃炎・胃潰瘍・胃癌などにより、黒色の血便がみられることもあります。

犬の便が黒色になる理由として、トラブル元の「小腸」から「大腸」を経由する際に、血液も消化されることになり、排便時に黒色に変わってしまうことが挙げられます。犬に黒色の血便がみられた際は、小腸や胃に病気を抱えている可能性が高く、早期の治療が望まれます。

寄生虫により腸が出血し、血便となるケースもあります。その場合は、黒色というよりも赤褐色の血便も見られます。

③感染が疑われる「血液便」

トマトジュースもしくはケチャップの様な、「血液の下痢」が犬にみられる場合、菌の感染が疑われます。このタイプの血便は、便に異臭を伴うことが多く、発熱・嘔吐の症状が出るケースも多いです。

多量の血液便がみられる犬では、貧血や感染に伴う敗血症の恐れもあり、命に関わる事態となるため、注意が必要です。

(※犬の下痢については「犬の下痢、4つのタイプ」、嘔吐については「犬の嘔吐と食事対策」もご覧ください。)

④肛門周辺の傷による「血液付着便」

犬の下痢や便秘などにより、肛門周辺が傷つき、便の外側に血液が付着したタイプの血便が見られることがあります。

このタイプの血便は、「痔(じ)」のような軽度の症状であることも多いです。それでも、肛門周辺の炎症や腫瘍、大腸炎などの可能性もゼロではなく、油断は禁物です。

各「血便タイプ」の原因と治療

治療

それでは、犬の各「血便タイプ」ごとに原因と治療をチェックしましょう。

1)大腸性の血便

犬の「大腸性の血便」は、ストレスが原因となるケースも多いとされています。ストレスが原因となり、排泄機能や消化吸収、腸内細菌バランス、腸の蠕動運動などに乱れが生じ、大腸性の血便としてあらわれることがあります。

ストレスの他では、寄生虫や菌の感染、犬の食事とはならないものの誤飲誤食、大腸疾患などが原因として挙げられます。

「大腸性血便」の治療方法

まず、大腸疾患が血便の原因である場合、その病気を治療することが優先されます。

そのうえで、犬用整腸剤(場合によっては人用のビオフェルミンなど)、抗生剤、寄生虫駆除、下痢止めなどが治療薬として検討されます。

ただし、抗生剤や下痢止めは、犬の血便症状によって、最小限に止めておく方がベターです。理由として、「抗生剤」は乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌などの犬の腸内善玉菌をも抑えてしまうこと、「下痢止め」は、犬の自然な排泄をストップさせるため解毒ができなくなること、があるためです。

「大腸性血便」に潜む病気

犬の大腸性血便に関連する病気についても、触れておきます。

「大腸炎」「IBD(炎症性腸疾患)」「大腸の腫瘍(大腸がん・ポリープ)」「腸閉塞」「寄生虫やウィルス・細菌の感染症」などが挙げられます。

2)小腸性の血便・血液便

犬の小腸性の黒色タール状血便や血液便は、症状が重篤なケースが多いです。小腸や胃の病気が原因となっている可能性が高く、各疾患に対する治療が望まれます。

「小腸性血便・血液便」の治療方法

まず、菌の感染や繁殖異常が犬の腸内で見られる場合、抗生剤などの投与が行われます。寄生虫であれば、虫対策の治療薬です。

そして、犬の出血がひどい場合は、貧血に対する治療も検討されます。

「小腸性血便・血液便」に潜む病気

犬の小腸性血便では、下記のような病気が潜んでいます。

「胃腸炎」「IBD(炎症性腸疾患)」「胃炎」「胃潰瘍」「胃癌」など

3)肛門周辺の血液付着便

便の外側に血液が付着した便は、犬の肛門周辺での出血が原因として考えられます。その場合、多くは下痢もしくは便秘に伴う外傷が原因となります。

「血液付着便」の治療方法

犬の血液付着便の治療は、塗り薬などで患部をケアすることが一つです。そして、下痢や便秘の要因を見極め、整腸剤や食事で対策をとることも治療の一貫となります。

(※犬の消化器疾患の治療・食事対策について、詳しくは「犬の下痢嘔吐、治療と食事」をご参照ください。)

犬の血便、2種の食事対策

犬の食事対策

次に、犬の血便の食事対策をご案内します。

犬の血便対策の食事では、大きくわけて2種類の方法があります。

血便対策の食事①高消化・高栄養タイプ

主に犬の「小腸性の血便」で推奨される食事対策が、「高消化&高栄養」という内容です。

犬の胃や小腸トラブルを原因とする血便の場合、消化吸収に問題を抱えているケースが多く、下痢や嘔吐を伴います。

そのため、犬の胃腸負担を少なくし、消化吸収を楽にする食事が望まれます。つまり、犬にとって「消化が良い」「少ない量でも栄養がしっかりとれる」食事がベストです。

具体的には、次のような栄養内容が、「小腸性の血便」で推奨される「高消化&高栄養」の食事になります。

  1. タンパク質・脂肪・炭水化物の消化率が高い
  2. 高栄養(高タンパク質&高脂肪)・高カロリー
  3. 食物繊維は比較的少量でバランス良く(犬の腸負担・消化負担にならないタイプの食物繊維を少量与える)
  4. 善玉菌アップにつながる栄養(オリゴ糖や難消化性デンプンなどを有効活用)
  5. ミネラルバランスをコントロール(脱水対策のために、ナトリウム・クロール・カリウムのバランスを調整)

血便対策の食事②高食物繊維タイプ

もう一つ、「高食物繊維タイプ」の食事対策が、犬の血便に良いケースもあります。特に、犬の「大腸性の血便」では、高食物繊維タイプの食事がベターとされています。

たっぷりの食物繊維が、大腸の粘膜状態をよくするとともに、腸内細菌バランスや腸内水分量を正常化し、犬の腸の運動性を調整してくれます。

具体的には、次のような栄養内容が、犬の「大腸性血便」で推奨される「高食物繊維」の食事になります。

  1. 犬に合った食物繊維を高含量でバランス良く配合する
  2. 高食物繊維の中、できる限り消化の良い栄養内容にする
  3. タンパク質・脂肪をしっかり与える
  4. 善玉菌アップにつながる栄養(オリゴ糖や難消化性デンプンなどを有効活用)
  5. ミネラルバランスをコントロール(脱水対策のために、ナトリウム・クロール・カリウムのバランスを調整)

まとめ

  • 犬の血便には、主に「大腸性の血便」「小腸性の血便」「血液便」「血液付着便」の4タイプがあり、どのタイプの血便なのかをチェックすることが大切。
  • 犬の各血便タイプにより、原因と治療方法が異なる。
  • 犬の血便の食事対策では、「高消化&高栄養タイプ」「高食物繊維タイプ」の2つの方法がある。

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