夏になると、私たちが美味しそうに食べるスイカをみて、ワンちゃん達も欲しがる光景がみられます。そして、実際、愛犬にスイカを与える飼い主さんも多いようです。
「犬にスイカを与えても大丈夫?」と思う方もいらっしゃることでしょう。
私たちは、動物栄養学の視点から、「スイカを犬に多量に与えるべきではない」と考えています。犬にスイカを控えめにした方がよい理由などについて、このページでご案内します。
<目次>
犬にスイカを控えめにした方が良い理由
どうして、犬にスイカを控えめにした方が良いのか、それはスイカに含まれる成分「βカロテン」にあります。
βカロテンといえば、ニンジンなどに含まれる栄養成分として知られています。そして、スイカにも豊富に含まれています。
私たち人間にとっては、βカロテンは健康成分であり、ある程度多く取り入れても害になりにくい栄養素です。
スイカのβカロテン、なぜ気にすべきか
実は、主な哺乳動物の中でも、犬だけが「βカロテン」に注意が必要なのです。
βカロテンは、犬や人を含む動物の体内で「ビタミンA」に変換されます。ビタミンA自体、犬にも重要な栄養素です。でも、犬では昔から「ビタミンA中毒」と呼ばれる症状がみられることがあり、特に最近のワンちゃんには多くなっています。そして、「ビタミンA中毒」は、哺乳動物の中で特に犬に見られる症状であり、その原因がわかっていませんでした。
最近の研究で、犬は「βカロテン→ビタミンA」という代謝が、他の動物と比べても活発におこることがわかってきたのです。
つまり、少量のβカロテンでもビタミンAが多く作られるため、犬ではビタミンA中毒が多いのです。
だから、スイカの食べすぎは、犬にとって「ビタミンA中毒」につながる恐れがあり、注意が必要です。
特にスイカを与えるべきではない、犬のタイプ
βカロテン以外では、スイカの「糖質の多さ」「水分の多さ」が、犬にとっては気になる要素です。これら気になる点から、スイカを控えた方が良い「犬のタイプ」をまとめした。
1)肝臓トラブルの犬
肝臓病や肝臓数値が高いワンちゃんは、スイカを控えた方が良いと考えられます。その理由として、βカロテン過剰による「ビタミンA中毒」は、肝臓に大きな負担となるためです。
人間の栄養学では、スイカは肝臓に良い食べ物、として紹介されることもあります。でも、犬の栄養学では、全く違う内容になることをご留意ください。
2)高血糖・糖尿病の犬
スイカに限らず、果物全般に言えることですが、果糖などの血糖値を上げやすい糖質を多く含むことから、高血糖や糖尿病のワンちゃんにはお勧めできません。
スイカには、血糖値上昇をおさえる成分も含まれているものの、やはり全体の成分内容をみると、犬の血糖値アップにつながる食べ物です。
3)お腹が弱い犬
水分含量の多いフルーツは、お腹を冷やすとともに消化酵素を薄めてしまうため、犬の消化吸収の力を弱めてしまいます。
そのため、お腹が弱いワンちゃんは、スイカにより下痢・軟便につながる恐れがあり、注意が必要です。
4)腎臓病の犬
「スイカは腎臓に良い」ということが一般的に言われています。でも、すでに腎臓病を発症しているワンちゃんは、このことを鵜呑みにしてはいけません。
理由として、スイカは比較的「高カリウム」の食材であることが挙げられます。カリウムは、犬の腎臓病対策のカギになる成分の一つですが、ナトリウムとのバランスが重要になります。犬の腎臓病の食事では、低ナトリウムを前提に、カリウムの数値を一定の範囲におさめることがポイントとなります。
ワンちゃんの食事全体の成分値を理解したうえで、スイカを与えるのであれば問題ありませんが、カリウム量のバランスが崩れるようであれば、犬の腎臓病にマイナスとなります。
少量のスイカは犬にも良い理由
ここまで、スイカの問題点ばかりを挙げてきましたが、、もちろん、犬にとって良い要素もあります。少量にとどめるのであれば、スイカを与えるメリットも少なくありません。(※スイカの要注意成分としてご紹介した「βカロテン」も、適量であれば犬の必須栄養素です。)
それでは、少量のスイカが、犬に与える良い要素について、ご案内します。
1)リコピン
抗酸化力を発揮する成分「リコピン」は、トマトに豊富に含まれることで知られています。そして、赤色のスイカには、トマトに負けず劣らずのリコピンが存在します。
リコピンは、犬にとっても良い成分と考えられており、様々な健康メリットが期待できます。
2)毒素排出・利尿作用
腎臓病のところでふれた「カリウム」ですが、適量の範囲であれば、余計な塩分を排出したり利尿作用がある有用な成分です。
また、「シトルリン」というスイカ特有のアミノ酸は、利尿効果や血流をスムーズにすることも報告されており、犬の健康をサポートしてくれることでしょう。
3)ビタミンC強化のシスペイン
「シスペイン」というスイカに特徴的な成分は、犬の体内ビタミンCを守ってくれる働きがあります。ビタミンCは、すぐに壊れてしまう不安定な成分ですが、シスペインはビタミンCの酸化を防ぐ効果があります。酸化を防ぐことで、ビタミンCの有用性が安定し、犬へのメリットも大きくなります。
(※スイカを含めた果物全般のことについては、「犬と果物の栄養学」にまとめています。)
まとめ
結論ですが、犬にスイカを与える場合、少量のみにとどめるようにしましょう。
それから、話題に挙げませんでしたが、「スイカの種」はとってあげた方がよいです。犬の腸は、肉食性の特徴が強いため、固い植物質の素材を苦手としています。もちろん、「スイカの皮」も与えないようにしましょう。
- スイカに豊富な成分「βカロテン」は、犬にとって「ビタミンA中毒」につながる恐れがあり、スイカを多く与えることはお勧めできない。
- 「肝臓病」「糖尿病・高血糖」「お腹が弱い」「腎臓病」の犬は、スイカを与えるときに特に注意が必要。
- スイカには、リコピン・カリウム・シトルリン・シスペインなど、犬の健康につながる成分も豊富に含まれており、少量与えるだけならプラス影響が期待できる。
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