犬にニンジン、要注意な理由

にんじん

愛犬にニンジンを与えている飼い主さんは大勢いらっしゃいます。実際に、犬にニンジンを与えることを勧める専門家・獣医師も少なくありません。

しかし、ニンジンは犬に与える際に要注意な食品です。

このページでは、犬にとって、ニンジンに注意が必要な理由をご案内します。

<目次>

犬にニンジンが要注意な理由

人と比べて肉食性が強い犬は、野菜などを与える際にしばしば注意が必要です。人では問題のない野菜でも、犬には中毒症状を引きおこすこともあります。

「ニンジン」も、犬にとっては要注意な食品です。

「ニンジンは犬に与えても大丈夫」という論調が目立ちますが、過剰に継続摂取すると、健康トラブルの危険性が高いです。ニンジンに含まれる「βカロテン」という成分が、過剰摂取により犬の中毒症状を引き起こすリスクがあるのです。

ニンジン成分「βカロテン」について

ニンジンに多く含まれる「βカロテン」は、ヘルシー成分として積極的に取りいれるべき、というイメージがあると思います。実際に、βカロテンは、犬にとっても必須栄養であり、一定量を取り入れなければならない重要な成分です。

しかし、犬が過剰にβカロテンを摂取すると、「ビタミンA中毒」になりやすいことがわかってきました。

犬に多い「ビタミンA中毒」とは?

犬に多いビタミンA中毒とは、ビタミンAが過剰となり、身体に負担がでてくる症状です。例えば、下記のようなビタミンA中毒の症状があります。

  • 肝臓トラブル
  • 皮膚トラブル
  • 嘔吐・腹痛
  • 無気力・食欲不振

特に、肝臓に負担がかかり、ALTなどの数値が高くなって肝臓病を発症することが、犬のビタミンA中毒の怖いところです。

なぜ、βカロテンで「犬のビタミンA中毒」が発症するのか?

それでは、どうして、ニンジンに含まれるβカロテンが、犬のビタミンA中毒を引き起こすのでしょうか?

その秘密は、犬のβカロテン代謝の特殊性にあります。

多くの哺乳動物は、体内でβカロテンをビタミンAに変換することができます。犬は、主な哺乳動物の中で、「βカロテン→ビタミンA」の変換能力について、特別高いことが動物栄養学の研究でわかってきました。つまり、犬はβカロテンをビタミンAにすぐに変えてしまうのです。

そのため、βカロテンなどを多く含むニンジンなどを過剰に食べると、犬はビタミンA中毒を発症するリスクが高いと考えられています。

特にニンジンへの注意が必要な犬のタイプ

にんじん

ニンジンは、肝臓に負担をかける恐れがあるため、下記のようなトラブル・症状をもつワンちゃんには、特に注意が必要です。

1)肝臓病・肝臓トラブルの犬

肝臓病の犬、病名がついていないものの肝臓数値が高い犬、にはニンジンを与えない方が無難です。すでに肝臓トラブルを抱えているため、βカロテンに対しても過敏になっている可能性があり、ニンジンは避けた方がよいでしょう。

2)胆嚢疾患の犬

胆嚢炎や胆泥症など、胆嚢にトラブルを抱えている犬にとっても、ニンジンは要注意です。

犬の胆嚢トラブルは、肝臓と連動しているところがあり、肝臓病と同様のリスク管理が必要です。

3)クッシング症候群の犬

コルチゾールなど副腎ホルモンの過剰分泌がトラブルとなる「クッシング症候群」は、犬に多い病気です。クッシング症候群は、ホルモンバランスの乱れにより肝臓病を併発しやすいとされています。

肝臓病を併発させないためにも、クッシング症候群の犬にはニンジンを避けた方が良いでしょう。

4)膵炎の犬

犬の膵炎は、膵臓に炎症がおこる病気です。それにより、消化酵素の分泌が不全となり、特に脂肪代謝にトラブルを抱えるようになります。

膵炎を発症したワンちゃんも、肝臓に負担がかかってくることが多いです。そのため、膵炎の犬にも、ニンジンは注意が必要です。

犬にニンジンを与えるなら

ニンジンには「ビタミンA中毒」のリスクがある一方、犬にとってメリットもあります。

βカロテンが不足しているワンちゃんならば、ニンジンから補給することも一つですし、ビタミンCなど、犬が取り入れたいけれど市販ドッグフードからは摂取しにくい成分も含まれています。

もし、犬にニンジンを与えるならば、「少量のみ」が良いでしょう。少量のニンジンであれば、ビタミンA中毒になるリスクも低いと考えられるためです。

そして、犬にニンジンを与える際、「生」「茹で」どちらが良いのか、ということも気になるポイントだと思います。以下、「生」「茹で」それぞれのニンジンのメリット・デメリットをご紹介します。

「生」ニンジンのメリット・デメリット、与え方

生のニンジンには、熱に弱い「ビタミンC」「酵素」といった成分も含まれています。これらの成分は市販ドッグフードにも無い犬への利点です。

一方で、生・ニンジンには、尿結石の原因物質「シュウ酸」が含まれている点、「食物繊維」が犬にとっては硬い点、などのデメリットもあります。そのため、生ニンジンを与える場合、すりおろすなどで細かくし、少量のみを与えるようにしましょう。

「茹で」ニンジンのメリット・デメリット、与え方

茹でたニンジンは、「食物繊維」が柔らかくなり犬への負担が減る、というメリットがあります。また、茹で汁を捨てて与えると、結石の原因物質「シュウ酸」がなくなります。

ただ、「ビタミンC」「酵素」などの熱に弱い成分は、茹でニンジンには残っていません。そして、熱に強い「βカロテン」も抜けきってはいません。

犬にとって、茹でニンジンは、リスクが減るけれども、ビタミンCなどの恩恵もなくなる、といったところです。茹でニンジンを与える際は、しっかり茹でこぼして少量のみを与えるようにしましょう。

まとめ

  • ニンジンに多く含まれる成分「βカロテン」は、犬のビタミンA中毒リスクがあり、要注意。
  • 肝臓病が関わる病気・トラブルの犬は、ニンジンを避けた方が無難。
  • ニンジンを犬に与える場合、生・茹でともに、少量のみを与える。

関連記事

  1. チーズ

    犬とチーズの栄養学

  2. イカ

    犬にイカの栄養学

  3. ピーナッツ

    犬にピーナッツをお勧めできない理由

  4. グレープフルーツ

    犬とグレープフルーツの栄養学

  5. 大根

    犬とダイコンの栄養学

  6. 梨

    犬に梨、3つの利点

  7. 大豆

    犬に大豆の是非

  8. キャベツ

    犬にキャベツ、正しい与え方

コメント

    • ぴよまる
    • 2017年 10月 18日

    トイプー、2歳の男の子。10ヶ月くらいから急にドライフードを食べなくなったので、試行錯誤の末、野菜を煮て煮汁ごとフードにかけるとよく食べることがわかり、以降、朝晩のフードに野菜スープをかけています。
    野菜は主にキャベツ、にんじん、ブロッコリー、トマト、サツマイモ、カボチャ、です。
    1歳頃、血液検査でALTの値が高い(139)ことがわかりました。ウルソを飲むと下りますが、止めると上がります。フードは獣医さんの勧めで消化器サポート系の療養フードを与えています。薬を止めた前回の血液検査でまた値が高かったため、今回は薬ではなく、ベジタブルサポートプラスというサプリを与えています。
    でも、この記事を拝見して、ウチの子はビタミンA過剰なのではないかと思いました。
    とりあえず今日から緑黄色野菜を与えるのをやめましたが、ベジタブルサポートもウチの子にはむしろ良くないような?にんじん、カボチャやブロッコリーは肝臓に良いと思って、毎日食べさせていました。後、すりゴマと納豆を数粒。
    この記事の内容をかかりつけ医に相談しようと思いますが、アドバイスいただければ大変ありがたいです。

      • dogfoodlabo
      • 2017年 10月 18日

      お問い合わせいただき、ありがとうございます。ワンちゃんのことをうかがい、お力になれればと思っています。
      個体差もありますが、哺乳動物の中で、犬はβカロテン代謝が特別進みやすい(ビタミンAに変換されやすい)ことは確かです。
      ご愛犬について、ビタミンA過剰とは断定できないですが、肝臓に負担がかかっている可能性は否定できないところです。
      そのため、にんじん・カボチャあたりは避けていただいた方が良いかもしれません。

      ただ、犬のβカロテン過剰リスクについて、専門家でも認識している人は少なく、ましてや獣医師はまずご存知ないと思います。

      それから、肝臓トラブルについては、タンパク質が負担となっていることも考えられます。
      特に、ご愛犬に黄疸が見られるようであれば、胆管が閉塞している可能性があり、タンパク質を少なめにしていただくことが好ましいです。
      この点、消化器サポート系の療法食は、高タンパク質なものも多いため、要注意です。
      (ただ、療法食に野菜をミックスされているということで、それだけでもタンパク質制限につながりますので、大きな問題はないと思います。)

      いずれにしましても、「与えている療法食の種類」「野菜などミックスの割合」「ALTなど異常が見られる血液検査の数値」を共有いただければ、さらに具体的なことがお伝えできるかもしれません。

      気になることなど、いつでも仰ってくださいませ。

    • ぴよまる
    • 2017年 10月 18日

    お返事頂き、ありがとうございます。

    これまでに与えた療養食は数種類あり、
    1.サイエンスヒルズのi/d
    2.BLUE NATURALのID
    3.BLUE NATURALのHF
    いずれも肝臓への負担を減らす加水分解フードです。今は3です。

    1日に与えているものは、
    上記のフードを75g
    キャベツ30g、にんじん15g、カボチャ10g、サツマイモ8g、ミニトマト1個、 そしてブロッコリーか小松菜かオクラを8g 程度。野菜は茹でこぼさす、茹で汁ごと与えていました。
    トッピングとして、
    すりゴマ小さじ1/2、納豆を数粒、たまにもみのりや大葉。
    おやつとして、
    ヨーグルトを大さじ1程度
    低脂肪ヤギミルクを小さじ1/2から1
    犬用野菜粉末を溶かした水小さじ1/2
    牛皮ガムSSサイズを1本

    水分はスープやミルクなどを合わせて300から400cc

    ワンコは4.1kgで、適正体重です。

    ALTは、最新の値が169です。これまでの最高値です。
    月に1度、血液検査していますが、ウルソを飲んでいた前回は59、その前は135です。その前も薬を飲めば80以下になりますが、止めると上がります。
    薬を飲めば下がるのですが、薬以外で方法がないかと相談し、今月はメニワンのベジタブルサポート肝臓用を試しています。緑黄色野菜のタブレットで、βカロチンが豊富に含まれると記載されています。
    次の検査予定は月末です。もしビタミンA過剰なら、悪化している恐れがありますね。

    なお、今日は野菜をゆでこぼしのキャベツ30gと大根15g、トッピングをすりゴマ、納豆、すり生姜に変えてみました。問題ないでしょうか。

    よろしくお願いいたします。

    • ぴよまる
    • 2017年 10月 19日

    何度もすみません。
    1点誤った記載がありましたので、修正します。
    療養食の2番目は、idではなくGIでした。

    よろしくお願いいたします。

      • dogfoodlabo
      • 2017年 10月 19日

      ご連絡ありがとうございます。
      これまでの食事から、「BLUE NATURALのHF」75g、変更された野菜「ゆでこぼしのキャベツ30gと大根15g、トッピングをすりゴマ、納豆、すり生姜」に加えて、「茹でこぼしたサツマイモ15~20g」といった内容が例として挙げられます。
      (ニンジン・カボチャを除く分、総合的なカロリー・炭水化物・食物繊維を維持するために、サツマイモがお勧めです。)
      おやつも従来どおりで大丈夫だと思います。

      βカロテン過剰については、ニンジンなどの継続により関連の可能性が疑われるところです。
      ただ、肝臓トラブルは食事だけの問題とは言えないところもあり、獣医師とご相談の上、経過をみていただければ幸いです。

      気になることやご不明な点等、いつでも仰ってくださいませ。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)