犬にメロン、知られていない注意点

愛犬に果物を与える飼い主さんは多くいらっしゃいます。その中で、昨日、「メロンを犬に与えても大丈夫ですか?」という問い合わせがありました。

「犬にメロン」の是非について、改めて学術的に調べてみたところ、Webや書籍では言われていない注意点があることに気づきましたので、ご紹介します。

<目次>

犬にメロン、要注意な理由

犬は、元々、肉食性の強い動物です(肉食性の雑食動物、と言われています)。そのため、果物や野菜の中に、人間にとってはヘルシーでも犬では要注意な成分が含まれることもあります。

実は、メロンにも、犬にとって要注意な植物性成分が含まれています。つまり、メロンを犬に与えすぎると、要注意な成分が過剰になり、健康トラブルを起こす可能性があるのです。

メロンの2つの注意点

それでは、メロンの何が犬に良くないのでしょうか?

下記、犬に与える際に注意すべき「2つのメロン成分」をご案内します。

1)βカロテン

メロンは「βカロテン」が豊富な果物です。特に、夕張メロンなどの赤肉種には、果物の中では最高含量・100gあたり3,600μgものβカロテンが含まれています。

ところで、「βカロテン」と言えば、健康に良いイメージの成分だと思います。実際に、人間だけではなく犬にとっても必須栄養素であり、無くてはならない成分です。

でも、犬にとって「βカロテン」を過剰に取り続けることには、リスクが伴います。

犬にβカロテンが要注意な理由

βカロテンは、哺乳動物の体内でビタミンAに変換され、栄養として利用されます。(※猫などは、体内でβカロテンをビタミンAに変換することがほとんどできないとされています。)

犬は、「βカロテン→ビタミンA」の代謝能力が、哺乳動物の中で特に強力であることが、最近の研究でわかってきました。つまり、取り入れたβカロテンが簡単にビタミンAに変換されてしまうため、犬は「ビタミンA中毒」になりやすいのです。

犬が「ビタミンA中毒」になりやすい動物であることは知られていましたが、その理由はわかっていませんでしたが、「βカロテン」が原因であることが明らかになりつつあります。

βカロテン過剰、犬への影響

βカロテン過剰・ビタミンA中毒になると、犬の肝臓などにトラブルが起こります。このところ、肝臓病の犬が増えているそうですが、ニンジンをはじめとする「βカロテン」素材を与え続けていることも原因として考えられます。

犬に赤肉種メロンを毎日のように与え続けることはあまりないかもしれません。でも、他の食品とのバランスを考えて、βカロテン過剰にならないよう、メロンを与えることが一つのポイントになります。

2)カリウム(腎臓病の犬)

メロンは、カリウムも豊富です。

カリウムは、血圧の低下などにつながる、必要なミネラルの一つです。一方で、腎臓病の犬では、カリウム制限が一つの食事ポイントになります。

そのため、カリウムが豊富なメロンを、腎臓病の犬に与える際には十分な注意が必要です。

ただし、「低カリウム・メロン」の品種開発も進んでおり、そのようなメロンであれば、腎臓病のワンちゃんに与えても良いでしょう。

糖尿病の犬にメロンはNG?!

メロンといえば、「さわやかな甘さ」が特徴ですね。メロン好きの犬も、この「甘さ」に惹かれているのだと思います。

一方で、メロンの甘さのために、血糖値が上昇することを心配されている飼い主さんも多いのではないでしょうか。特に、糖尿病の犬にはNG、というイメージがあると思います。

メロンは意外に低GI食品

実は、メロンはさほど犬の血糖値をアップさせない食品です。

食後血糖値の指標として、「GI」があります。GI値が低い(比較的血糖値が上がらない)食品として、「GI値55以下」という指標がありますが、メロンはGI値41となっています。

メロンの糖質について

メロンの甘さの要因であり、主な糖質は、「果糖」です。

果糖は、ブドウ糖・砂糖などと比べると血糖値アップにつながりにくい糖質であり、このことがメロンのGI値の低さの一因となっています。

いずれにしても、犬にとって、メロンは比較的血糖値をアップさせない食品、ということができます。

もちろん、過剰はいけませんが、血糖値という点では、犬にメロンを適量与えても大きな問題はない、と言えそうです。

犬にメロン、3つのメリット

pixta_27314219_M

メロンのメリットについても、触れておきましょう。

犬にとって、メロンには次の3つの利点が挙げられます。

1)水分補給

メロンは、約87%が水分とされています。水を飲むことが苦手な犬もいることから、メロンを含む果物・野菜を上手に活用し、水分補給してあげることは有益です。

2)食物繊維

メロンは、食物繊維が豊富です。そして、メロンの繊維質は、犬にとって負担になりにくいタイプです。(野菜の食物繊維などは、犬にとって硬質であり、腸などに負担がかかります。)

つまり、メロンの食物繊維は、犬の腸に良い影響を与えてくれるでしょう。

先に、メロンは、比較的血糖値がアップしにくい、とお伝えしましたが、その理由の一つが豊富な食物繊維にあります。食物繊維が糖吸収を遅らせ、犬の血糖値アップを穏やかにします。

(※犬の食事と食物繊維について、次のページで詳しくご紹介しています。→「犬と食物繊維の相性」)

3)ビタミンC

ビタミンCの補給源としても、メロンは良い食品です。

犬は、ビタミンCを体内合成できます。そのため、ビタミンCは、犬の必須栄養素ではありませんが、一定量以上を取り入れた方が良いことは間違いありません。

ビタミンCは、一般的に熱に弱く、市販ドッグフードに十分量を含めることが難しいため、メロンなどから取り入れることも一つです。

(※ビタミンCについて、より詳しい内容は「犬にビタミンCは必要?」をご覧ください。)

メロンの正しい与え方

それでは、メロンの注意点をクリアし、メリットを引きだす与え方をご紹介します。

ステップ1)メロンの種類を選ぶ

赤肉種のメロンには、犬にとって要注意成分「βカロテン」が多量に含まれています。そのため、「青肉種」のメロンを選ぶ方が、犬には安心と言えるでしょう。

また、腎臓に不安のあるワンちゃんには、「低カリウム品種」のメロンを選ぶことがお勧めです。

ステップ2)少量のみを与える

愛犬に適したメロンの種類を選んだ後、少量のみを与えるようにします。

ただ、人間が食べる分には少量でも、犬にとっては凄い量になってしまうこともあります。犬と人間の違いを考えて、体重に比例した適量を与えるようにしましょう。

なお、「メロンの皮」は、犬にNGです。(皮は、犬にとって硬質な食物繊維を含んでおり、消化器トラブルの元となります。)メロンの果肉部分のみを犬に与えるようにしましょう。

(※メロンを含めた果物全般のことについては、「犬と果物の栄養学」にまとめています。)

まとめ

  • 肉食性の強い犬にとって、植物質のメロンは、犬に合わない要素があり、注意が必要。
  • 犬にとって、メロンの要注意成分として、「βカロテン」「カリウム」がある。
  • メロンは甘いものの、GI値は低い。そのため、犬の血糖値アップにもつながりにくい食品と言える。
  • 犬にとって、メロンには「水分補給」「食物繊維源」「ビタミンC」という3つのメリットがある。
  • 「メロンの種類を選ぶ」→「少量のみ果肉部分を与える」というステップにより、犬にも安心してメロンを与えることができる。

関連記事

  1. 犬にバナナ、大丈夫な「5つの理由」と「レシピ3選」

  2. おから

    犬におから、利点とリスク

  3. キャベツ

    犬にキャベツ、正しい与え方

  4. トマト

    犬にトマト、4つの要注意点

  5. 米

    犬に白米・玄米、それぞれの栄養学

  6. 大根

    犬とダイコンの栄養学

  7. 犬と野菜の栄養学

  8. 豆乳

    犬に豆乳がお勧めできない理由

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)