「犬にイカを与えてはいけない。」「イカは犬にとって消化が悪い食べ物。」など、イカは犬にお勧めできないようなお話が目立ちます。
本当でしょうか?
このページでは、動物栄養学の視点から、「犬にイカを与えても良いのかどうか」「イカを与える際の注意点・利点」「イカの正しい与え方」などをご案内します。
<目次>
犬にイカが問題ない2つの理由
犬にイカを与えても大丈夫なのでしょうか?
結論からお伝えすると、加熱して与えれば問題ありません。その理由を2つのポイントからご案内します。
①ビタミンB1欠乏を招く「チアミナーゼ」の存在
「イカを与えると猫が腰を抜かす」という伝承があります。この由来は、イカに含まれる「チアミナーゼ」という酵素にあると考えられています。
チアミナーゼは、犬や猫の必須栄養「チアミン(ビタミンB1)」を分解酵素です。つまり、犬や猫がチアミナーゼを口にし続けると、ビタミンB1欠乏症になる恐れがあります。これが、「イカ→腰を抜かす」の由来です。
加熱すれば、チアミナーゼは失活する
チアミナーゼのことを考えると、やはり「イカは犬に与えてはいけない食べ物」となりますが、ご心配には及びません。
イカに含まれるチアミナーゼは、加熱により活性を失います。だから、イカを加熱してあげれば、犬にも問題がなくなります。
また、チアミナーゼは、新鮮なイカではほとんど含まれていないという知見もあります。そのため、新鮮なイカなら、生で犬に与えても良い可能性があります。とはいっても、新鮮という条件は判断が難しいため、生のイカは犬に与えない方が無難でしょう。
②イカは消化しにくい食べ物?
2つめのポイントとして、「イカは犬が消化しにくい食べ物」という誤解があります。
イカは口で咀嚼する際に、食感が硬いタイプの食べ物であるため、「消化が悪い」というイメージがあります。でも、栄養学の視点では、決して「消化が悪い」食材ではありません。
イカは「高・消化率」の食べ物
食べ物の消化の良さをあらわす指標として「消化率」があります。実際のところ、イカは「消化率」の高い食べ物であり、お魚と比べても同等の消化性を示しています。
そのため、犬にとって、イカは消化されやすい食べ物ですので、この点でも安心して与えることができます。
イカの利点
イカは、犬にとって問題がないばかりか、幾つかの健康メリットを有している食品です。下記、犬にとって以下のメリットと言える要素をご案内します。
タウリン
タウリンは、魚介類に含まれる成分であり、疲労回復や血圧コントロール・コレステロール低減・肝臓や心臓の保護、などの効果が知られています。イカは、タウリンを最も多く含む食べ物の一つであり、犬にも良い影響を及ぼします。
特に、肝臓病や心臓病を抱える犬には、タウリンを与えることが重要です。栄養成分として0.1%以上のタウリンを与えることが、肝臓病・心臓病の犬では推奨されています。
良質なタンパク質
良質なタンパク質を多く含むことも、犬にとってイカの利点です。イカのタンパク質は、アミノ酸バランスに優れ、犬に良質な内容です。
また、イカのタンパク質は、「熱に安定」という点も魅力です。通常、タンパク質は加熱により「変性」という構造変化をおこします。変性したタンパク質は、犬の消化性が悪くなりがちです。ところが、イカのタンパク質は、加熱による変性がおこりにくいため、犬にとって消化しやすい状態を維持できます。
ビタミン群
イカは、ビタミン群のバランスが良いことも、犬には嬉しいポイントです。
特に、イカは「ビタミンE」が豊富です。ビタミンEは犬の体内で脂肪の酸化を防ぐなどの効果があり、たっぷり与えたい栄養成分です。(※ビタミンEについて、詳しくは「犬にとってのビタミンE」をご覧ください。)
また、ビタミンB群をはじめ、ビタミンD以外は全てバランス良く含んでいることがイカの特徴です。
良質な低脂肪
イカは低脂肪食品であることも、犬にメリットがある要素です。
さらに、イカの脂肪は「量が少ない」だけではありません。DHAやEPAといった「オメガ3脂肪酸」や「リン脂質」など、犬に利点のある脂肪成分が含まれています。
つまり、イカは「良質な低脂肪食品」と言うことができます。
犬にイカ、正しい与え方
それでは、イカの利点をできる限り引きだす、犬への与え方をご紹介します。
ステップ①イカを加熱調理する
犬のビタミンB1(チアミン)欠乏症につながる「チアミナーゼ」を失活させるために、イカを加熱調理しましょう。イカを茹でても焼いてもOKです。
イカは、加熱してもタンパク質が変性されにくいため、安心して犬に与えることができます。
ステップ②食べやすいサイズ・温度帯にする
イカを犬が食べやすいサイズにカットしながら、火傷しないよう適度に冷ましてあげましょう。もちろん、加熱前にイカをカットしても構いません。
ステップ③犬に与える
いよいよ、犬にイカを与えましょう。食事・ドッグフードへのトッピングや、犬のおやつとしてあげることもお勧めです。
まとめ
- イカは「チアミナーゼの存在」や「消化が悪いという誤解」のために、犬に要注意という論調がある。しかし、イカのチアミナーゼは加熱によって失活するし、消化が良い食べ物という事実もあり、「犬に与えても良い食品」と言うことができる。
- 犬にとってイカの利点は、「チアミン」「良質なタンパク質」「ビタミン群」「良質な低脂肪」などが挙げられる。
- 犬にイカを与える方法として、「イカを加熱調理」「食べやすいサイズにカット&冷ます」「犬に与える」というステップを踏むことがお勧め。
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