犬のメラノーマ 治療と食事

犬のメラノーマ、治療と食事

犬のメラノーマは、メラニン色素をつくる細胞(メラノサイト)が癌(がん)化した病気です。「黒色腫」とも呼ばれ、皮膚・口・目(眼球)・頭・足・手のひら・爪など、各所に黒色の腫瘍ができます。(黒くない腫瘍もあります。)

犬のメラノーマには、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。皮膚にできるメラノーマの場合、良性であることが多いとされています。一方で、口の中や爪にできるメラノーマは、悪性腫瘍の可能性が高いです。悪性のメラノーマでは、発見とともに余命告知されることがあるほど、難治性のがんとされています。

<目次>

犬のメラノーマ 症状・原因

犬のメラノーマの症状として、下記が挙げられます。

  • 黒いしこり(皮膚など各所にできるメラノーマ)
  • 口臭、口内の出血、過剰なよだれ、口の痛みと食欲不振、顔の腫れ(口腔内メラノーマ)

メラノーマは、はっきりとした原因がわかっていません。初期症状として、ホクロと見まちがうような黒い腫瘍ができたりします。肺やリンパへの転移など、進行が早いタイプのがんであるため、できるだけ初期発見と治療が望まれます。

治療方法

手術

まず第一に検討される治療方法が、手術です。ただし、悪性のメラノーマは、進行が早く浸潤性が高いため、骨や他の部位に転移していることもよくあります。切除範囲が広がる場合は、ワンちゃんの外観が変わってしまうようなこともあります。また、完治したように思えても、再発するリスクがあり、治療だけはなく食事などによる予後管理も大切です。

なお、犬のがん治療は、国の負担がないため、手術費用も高額になります。犬のメラノーマの場合、入院費・手術費用を含めて、10~50万円はかかるようです。

犬のメラノーマでは、症状のステージや腫瘍の部位、ワンちゃんの状態によって、抗がん剤・放射線治療が検討されることもあります。メラノーマの抗がん剤・放射線療法は、1回あたりの治療費が数万円とされています。これらは複数回行われるため、合計の治療費として10~数十万円必要とされています。

いずれにしても、できるだけ健康的な余命が長くなるような治療・対策が望まれます。

食事療法5つのポイント

犬のがん・腫瘍性疾患には、臨床試験の報告にもとづく「食事療法」が知られています。犬のメラノーマにも有用で、健康な余命を長くするためにも、治療と併せて食事対策が望まれます。

また、犬の状態・メラノーマの進行具合により、医療を実施できないこともあります。そのようなワンちゃんに対しても、食事療法の実施により、少しでも健康をキープすることが大切です。

それでは、犬のメラノーマの食事療法・5つのポイントをご紹介します。

1)低・炭水化物(低・糖質)

糖質や消化しやすい炭水化物は、犬の食後血糖値をアップさせます。血糖がふえると、腫瘍が糖分を奪い、メラノーマ進行の一因となります。そのため、血糖値がアップしないように、糖質・消化しやすい炭水化物を控えなければいけません。

糖分がなくなると、腫瘍のエネルギー源が枯渇します。それにより、犬のメラノーマの進行スピードを緩和することができます。

2)高・脂肪

糖質・炭水化物は、腫瘍のエサであるとともに、犬にとっても重要なエネルギー源です。そのため、糖質・炭水化物を制限するかわりに、犬自身には別のエネルギー源を補ってあげなければなりません。

そこで、メラノーマの犬に推奨されている栄養が「脂肪」です。より肉食動物に近い犬は、比較的「脂肪」の消化吸収が得意です。犬は人間よりはるかに効率よく脂肪をエネルギー源として活用することができます。

さらに良いことに、がん・腫瘍は脂肪を利用することができません。つまり、炭水化物の代わりに「脂肪」をエネルギー源にすることで、腫瘍を枯渇させながら犬自身のエネルギーを補うことができるのです。

3)オメガ3脂肪酸

「高脂肪」を理想とする一方で、「脂肪の質」に留意が必要です。がん・腫瘍の犬にとって、特に重要な脂肪成分が「オメガ3脂肪酸」。魚や亜麻など一部の植物に含まれる「オメガ3脂肪酸」をたっぷり与えるようにしましょう。

ただし、オメガ3脂肪酸には、注意点があります。酸化しやすいため、できる限り加熱や酸素にふれることを避けなければなりません。酸化を防いだフレッシュな「オメガ3脂肪酸」をたっぷり与えることで、犬のメラノーマをケアすることができます。

4)高・タンパク質、アルギニン

メラノーマが進行するにつれ、犬はタンパク質不足となり、活力を失っていきます。だから、タンパク質をたくさん補ってあげなければいけません。質のよいアミノ酸バランスのとれた高タンパク質が望まれます。

さらに、タンパク質を構成する成分・アミノ酸バランスも大切です。特に、「アルギニン」というアミノ酸は、がん・腫瘍に関する多くの臨床報告がえられています。

高タンパク質に加えて、高アルギニンの食事・ドッグフードをメラノーマの犬に与えるようにしましょう。

5)免疫力キープ

がん・腫瘍の犬は、免疫力が低下していく傾向にあります。免疫力を保ち、メラノーマに対抗することも重要です。

免疫力を維持するためには、「腸の健康」を実現しなければなりません。犬の腸は、免疫細胞の60%以上が集まる、別名「免疫器官」だからです。そして、腸の健康のカギとなる成分が「食物繊維」。犬にあったの「食物繊維」量・バランス・種類のドッグフード・食事が望まれます。

もう一つ、「免疫力キープのスイッチとなる成分」も大切です。例えば、キノコ・βグルカンや菌由来のLPSという成分などは、犬にレセプター(受け皿となる物質)が発見されており、免疫力キープの引き金となります。

犬のメラノーマに対応した食事療法食(ドッグフード)、「犬心 元気キープ」のWebサイトはこちらです。

食事療法 実践のコツ

実際に、「犬のメラノーマ・食事療法5つのポイント」を実践するコツについて、ご案内します。

市販ドッグフード・療法食

犬のメラノーマに対応した市販ドッグフード・療法食は多くありません。おそらく、ヒルズ社の「犬用n/d缶」と私たちが販売している「犬心 元気キープ」くらいのものではないでしょうか。

・ヒルズ社「犬用n/d缶」

動物病院に流通している、がん・腫瘍対応の療法食です。缶詰のウェットフードで、犬のメラノーマの食事療法ポイントを概ね抑えています。ウェットフードが好きな犬は、n/d缶によりメラノーマの食事管理が可能となります。

一方で、ドライフードではない点が不便なことと、この商品だけではかなりの価格負担になることが難点かもしれません。

・「犬心 元気キープ」

私たちが開発販売した、犬のがん・腫瘍対応の療法食です。ドライフードとオメガ3オイルのセット商品により、食事療法5つのポイントを満たすことに成功しました。

また、自然原料・自然を活かす製法にこだわっている点でも、メラノーマのワンちゃんの力になれればと思っています。

→ 犬のメラノーマに対応した食事療法食「犬心 元気キープ」

・市販ドッグフードを活用した食事療法の実現

上記の療法食2商品以外で、市販ドッグフードの活用により、メラノーマ対応の食事管理を実現するコツをご紹介します。

まず、ドッグフードは「高タンパク質」「低糖質(低炭水化物)」のものを選びましょう。もちろん、原料や製法にこだわったものが好ましいです。そのドッグフードに市販のオメガ3オイル(亜麻仁油など)をトッピングして与えてあげてください。全体の脂肪含量が25%になるように配合できればバッチリです。

「高タンパク質・低糖質フード」+「オメガ3オイル」の組み合わせにより、メラノーマ対応の食事療法5つのポイントに近い栄養内容を実現できるでしょう。

手作り食

手作り食でも、工夫次第で「犬のメラノーマ」対応の食事療法が可能です。

まず、脂身があまり多すぎないお肉・魚をメインに添えます。お肉をさっと茹で、適度に刻んであげましょう。

そこに少量の玄米・大麦・イモ類などを混ぜてあげるとよいでしょう。これらは炭水化物でメラノーマの犬には避けるべきでは?!と思われるかもしれませんね。でも、ゆっくり消化されるタイプの炭水化物なので、適量であれば問題ありません。

緑黄色野菜は、ごく少量にとどめましょう。繊維質が固く、メラノーマの犬には負担がかかる恐れがあります。与えるとしても、しっかりと茹でて茹で汁を捨て、少量のみを与えてください。

そこに亜麻仁油などのオメガ3オイルをトッピングしてあげれば良いでしょう。さらにキノコ類など、犬の免疫力キープにつながる原料を与えてもOKです。

分量としては、「肉・魚:穀物(イモ):野菜:オメガ3=7:1.5:0.5:1」ほどの比率が目安です。

犬のメラノーマ まとめ

  • 犬のメラノーマは、進行・転移スピードが速く、できるだけ初期症状での治療が望まれる。
  • 犬のメラノーマの治療では、転移・浸潤がみられなければ、まず手術が検討される。
  • 犬のメラノーマの食事療法として、「低・炭水化物」「高・脂肪」「高・オメガ3脂肪酸」「高・タンパク質、高・アルギニン」「免疫力キープ」の5ポイントが重要。
  • 市販ドッグフード・療法食によるメラノーマの食事管理はもちろん、手作り食でも工夫次第で食事療法が実現できる。