犬のクッシング症候群は、治療薬を投与し続けなければいけない病気とされています。
そして、他の病気との併発がよくみられる、というところがあり、この点にも注意が必要です。併発疾患も含めた、犬のクッシング症候群の対策として、治療とともに「食事」がポイントとなります。
このページでは、犬のクッシング症候群と併発しやすい病気をトータルで考慮した、治療・食事についてご案内します。
<目次>
犬のクッシング症候群が、他の病気を併発しやすい理由
犬のクッシング症候群は、副腎でつくられるホルモンが異常に分泌される病気です。
副腎ホルモンの異常分泌により、犬の栄養代謝や免疫力のバランスが崩れてしまいます。すると、犬の他の臓器や器官にも負担がかかることとなり、クッシング症候群以外の病気を併発しやすくなるのです。
また、逆に他の病気が原因となって、クッシング症候群を発症するケースもよくみられます。
クッシング症候群と併発しやすい病気・治療方法
犬のクッシング症候群と併発しやすい病気について、原因・治療方法を簡単にご案内します。
1)高脂血症
高コレステロール・高中性脂肪といった「高脂血症」は、犬のクッシング症候群との併発率が非常に高い病気です。
クッシング症候群の犬は、副腎ホルモンの分泌異常により、「脂肪の代謝」に問題を抱えるようになります。すると血液中のコレステロール・中性脂肪が多くなってしまい、高脂血症になりやすくなります。逆に、高脂血症が原因でクッシング症候群につながるケースもよく見られます。
クッシング症候群+高脂血症の治療方法
クッシング症候群と高脂血症を併発したワンちゃんについて、まずは副腎ホルモンの分泌を抑える治療薬が対策となります。
そのうえで、食事療法も重要な治療方法です。(※クッシング+高脂血症の犬の食事療法については、後述します。)
2)糖尿病
クッシング症候群の犬は、「糖質の代謝」にもトラブルを抱えています。そのため、血糖値が上がりやすくなる傾向にあり、糖尿病を併発することが多いです。
また、糖尿病が原因となり、クッシング症候群につながることもあります。
クッシング症候群+糖尿病の治療方法
犬のクッシング症候群と糖尿病の併発について、両方の病気を合わせて治療する必要があります。治療薬として、副腎ホルモンの分泌を抑えるお薬とインスリン注射、両方を行うなどです。
さらに、食事療法も必須の治療方法となります。(※糖尿病+クッシングの犬の食事療法については、後述します。)
3)膵炎
栄養代謝に問題を抱えているクッシング症候群の犬は、消化吸収に異常をきたすこともあります。すると、消化酵素の分泌器官である「膵臓」への負担が原因となり、「膵炎」を発症することもあるのです。
クッシング症候群+膵炎の治療方法
膵炎を併発したクッシング症候群のワンちゃんは、クッシングの治療とともに、食事対策を中心とした膵炎の治療を行うことになります。
犬の膵炎の食事対策は、「低脂肪」などが重要となり、栄養ポイントがクッシング症候群対策と類似しています。(※膵炎+クッシングの食事対策について、詳しくは後述します。)
4)甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症も、クッシング症候群のワンちゃんが併発しやすい病気です。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる病気です。両疾患は、症状が似通っている点があり、お互いが原因となって発症することが多い病気です。
クッシング症候群+甲状腺機能低下症の治療方法
犬の甲状腺機能低下症も、投薬治療が基本となる病気です。そのため、クッシング・甲状腺低下、両方の治療を並行して進めることになります。
合わせて、両疾患は、栄養代謝トラブルに共通項があり、同じような食事対策を行うこともポイントとなります。(※甲状腺機能低下症+クッシングの食事対策にちて、詳しくは後述します。)
5)肝臓病
犬の肝臓は、栄養代謝を司る器官です。そのため、栄養代謝にトラブルを抱えるクッシング症候群のワンちゃんは、肝臓病を併発することも多くみられます。また、肝臓との関係が深い胆嚢についても、「胆泥症」「胆嚢炎」などを併発する犬も多いです。
クッシング症候群+肝臓病の治療方法
犬の肝臓病には、様々な種類があります。肝炎、重金属などの蓄積、門脈シャントなど肝胆の血管障害、肝臓腫瘍・肝臓がん、胆嚢炎・胆石・胆泥症など胆管の病気、などです。
これら肝臓病・胆嚢疾患がクッシング症候群と併発した場合、やはり両方の病気を治療する必要があります。
そして、治療とともに食事対策をとりいれることも望まれます。犬の肝臓病とクッシング症候群の食事療法は、異なる点が一部あるため、併発疾患特有の栄養バランスを検討することがポイントとなります。(※犬の肝臓病とクッシング症候群についての食事対策は、後述します。)
6)その他の病気
上記1)~5)以外にも、クッシング症候群の犬は、しばしば病気を併発します。
例えば、腎臓病・結石・心臓病・皮膚炎・腫瘍性疾患・腸の病気、などがあります。これらを併発した際も、クッシング・各病気、それぞれの治療を並行して進めることになります。
そして、食事対策の内容も、より個別に考えなければなりません。もし、ご愛犬がクッシング症候群+他の病気になり、食事についてお悩みの際は、私たちにお問い合わせいただければ幸いです。
犬のクッシング症候群+併発疾患、食事対策
それでは、犬のクッシング症候群と併発疾患、両方を合わせた食事対策について、ご案内します。
1)高脂血症+クッシングの食事
高脂血症とクッシング症候群を併発したワンちゃんは、「低脂肪の食事」が第一条件になります。どちらの病気も、脂肪代謝にトラブルを抱えており、質の良い脂肪を少なめに与えることが大切です。
さらに、フレッシュで良質な「タンパク質」をしっかり与えるようにしましょう。クッシング症候群の犬は、タンパク質の代謝にも異常を抱えており、消化のしやすいタンパク質を多く与えることが大切です。
2)糖尿病+クッシングの食事
糖尿病のワンちゃんの食事は、「血糖値の上がりやすい糖質の制限」「食物繊維や難消化性炭水化物の増量」という点がポイントとなります。この点、クッシング症候群と糖尿病を併発した犬にも、同様の対策でOKです。
さらに、クッシング症候群の代謝トラブルに対応するために、「良質な低脂肪」「質のよい高タンパク質」を満たすことが重要です。
3)膵炎+クッシングの食事
犬の膵炎の食事では、「低脂肪」が最重要ポイントです。そのうえで、良質なタンパク質をしっかり与えることができれば、膵炎とクッシング症候群、両方に対応した食事となります。
4)甲状腺機能低下症+クッシングの食事
犬の甲状腺機能低下症の食事対策は、かなりクッシング症候群対応の内容と似通っています。
つまり、「良質な低脂肪」「質の良い高タンパク質」をベースに高血糖対策として「糖質制限&難消化性炭水化物・食物繊維の増量」という内容が望ましいです。
5)肝臓病+クッシングの食事
犬の肝臓病の食事は、病気の種類にもよりますが、基本的には「低タンパク質」「高エネルギー」「塩分制限」などがベースになります。肝臓病対策の食事において、「低タンパク質」のところがクッシング症候群とは大きく異なるポイントです。
つまり、犬の肝臓病とクッシング症候群、理想的な食事対策を両立させることは難しいと言えます。
とはいえ、最良の道を探ることは可能です。その食事内容は次のとおりです。
- 良質な「低タンパク質」
- ナトリウムの制限
- 良質な「低脂肪」
- 血糖値がアップしにくい炭水化物を増量(エネルギー源になるもの)
タンパク質・脂肪の両方を少なくせざるを得ない分、犬の血糖値上昇が穏やかな炭水化物を多くする、という内容です。そのため、玄米・大麦・サツマイモなどを上手く活用することがポイントとなります。
まとめ
- 犬のクッシング症候群は、ホルモンバランス・栄養代謝に問題をかかえるため、身体への負担が増え、他の病気を併発しやすくなる。
- クッシング症候群の犬が併発しやすい病気として、「高脂血症」「糖尿病」「膵炎」「甲状腺機能低下症」「肝臓病」などが挙げられる。併発疾患の治療方法は、クッシング症候群の治療とともに各病気の対策を合わせて進めなければならない。
- 犬のクッシング症候群+併発疾患を合わせた食事対策として、「低脂肪」「高タンパク質」「糖質制限」がベースとなる。肝臓病を併発している場合は、「低脂肪」「低タンパク質」「炭水化物の増量」を中心に検討する。
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