犬とリンゴの栄養学

「リンゴを犬に与えても大丈夫ですか?」という質問をいただくことがあります。

リンゴには、犬にとってプラスとなる栄養成分が含まれる一方、気を付ける点もあります。このページでは、動物栄養学の知見にもとづきながら、犬にとってリンゴの是非をチェックしてきたいと思います。

<目次>

リンゴポリフェノールの犬への効果

リンゴには、色々な栄養成分が含まれています。その中で、「ポリフェノール」や「フラボノイド」は犬にも有用な栄養素です。

リンゴには多種類のポリフェノールが含まれています。ポリフェノールやフラボノイドは、種類によって機能が異なっており、多種類のポリフェノールを含むリンゴは、それだけ様々な効果が期待できます。

リンゴポリフェノールの抗酸化力

ポリフェノールやフラボノイドの代表的な作用は、「抗酸化力」にもとづきます。犬の体内で「酸化」は健康トラブルや老化の一因となっています。その酸化に対抗する力を、リンゴポリフェノールは有しています。

また、犬の栄養学上、「ビタミンC」「ビタミンE」の節約につながることもポリフェノールのメリットです。ポリフェノールは、ビタミンCやビタミンEと同じような機能を果たすため、ビタミンCの体内合成など、犬の代謝で負担が少なくなるのです。

血糖値アップの緩和、デトックスにも

リンゴポリフェノールは、ある種の成分をからみとり、体外に排出する力をもっています。例えば、犬の腸内で糖質や脂肪、重金属などをからみとってくれます。

そのような作用により、血糖値の急な上昇をおさえたり、整腸作用・デトックス(毒素排出)にもつながる役割を果たします。

リンゴの食物繊維と犬の腸

pixta_26533293_M

リンゴには、食物繊維も豊富に含まれています。リンゴに含まれる食物繊維は、主に「ペクチン」と呼ばれる成分です。ペクチンは、ジャムを作るときに独特の粘りをうむ成分です。

リンゴのペクチンが、犬にどのような影響を与えるのか、みてみましょう。

リンゴ・ペクチン、犬の腸への影響

リンゴのペクチンは、比較的、犬の腸へのダメージが少ない食物繊維です。そのため、適量のリンゴペクチンは、犬の便質などにも良い影響を及ぼします。

しかし、過剰なリンゴペクチンは、注意が必要です。

ペクチンやペクチン分解物が、犬の腸内で増えると、水分量が多くなるとともに酸性化が進みます。そのような腸内変化により、犬が下痢をしてしまうこともあります。

また、犬は、もともと「肉食性が強い雑食動物」とされています。肉食性が強い犬は、食物繊維に対してデリケートな面があり、リンゴペクチンも量が多すぎると負担になります。

小型犬であれば、私たち人間の一口サイズのリンゴで十分な量ですし、大型犬でも一切れ以上は与えない方が良いでしょう。

(※リンゴのペクチンなど、食物繊維と犬のことについて、詳しくは「犬と食物繊維の相性」でご案内しています。)

リンゴの有機酸と犬の代謝

リンゴには、クエン酸やリンゴ酸など、「有機酸」と呼ばれる成分が多く含まれています。有機酸は、人で様々な有用性が知られていますが、犬にもメリットのある成分です。

リンゴ有機酸の犬へのメリット

  • 肉類などの消化を助ける
  • 悪玉菌をおさえ、腸内細菌バランスを整える
  • 疲労回復
  • シュウ酸カルシウム結石の対策

これらのは、犬にとって有機酸のメリットとして期待できる要素です。

シュウ酸カルシウム結石の対策について

犬に増えているトラブルの一つに「シュウ酸カルシウム結石」があります。犬の結石といえば「ストルバイト結石」と呼ばれるものが多かったのですが、最近は「シュウ酸カルシウム結石」も増えています。

有機酸は、シュウ酸カルシウム結石の原因となる、犬の尿中のカルシウムをくっつけ、外に排出してくれます。そのため、リンゴに含まれるクエン酸などの有機酸は、シュウ酸カルシウム結石の対策にもプラスに働きます。

リンゴの糖質と犬の血糖値

犬にとって、リンゴのデメリットと考えられる栄養の一つが「糖質」です。

リンゴには、果糖・ブドウ糖・ショ糖などの糖質が含まれています。リンゴ100gあたり、糖質は13g前後含まれていると報告されています。

リンゴに含まれる果糖・ブドウ糖・ショ糖などは、犬の血糖値を上げやすい糖質です。そのため、糖尿病やがん(癌)のワンちゃんは、リンゴを控えめにした方がよいですし、健康な犬でも、肥満対策も含めて過剰に与えるのは良くありません。

糖質の数値ほど犬の血糖値を上げない理由

一方で、含まれる糖質の種類・含量ほど、リンゴは犬の血糖値を上げない面もあります。なぜでしょうか?

血糖値をさほど上げない理由は、リンゴに含まれる「ポリフェノール」「食物繊維」のおかげだと考えられます。これらの成分が、犬の消化プロセスで糖質をからめとり、吸収スピードを遅くするとともに、外部へ排出することにも寄与してくれます。

まとめ

  • リンゴのポリフェノールには、抗酸化力やビタミンC・ビタミンEの代替、血糖値アップの緩和やデトックスなど、犬にとって様々な有用性がある。
  • リンゴには食物繊維「ペクチン」が豊富。整腸作用が期待できる一方で、食べすぎは下痢などの恐れがあり、注意も必要。
  • リンゴに含まれるクエン酸・リンゴ酸などの有機酸も犬にメリットのある成分。肉類の消化サポート、腸内細菌のバランス適正化、疲労回復などに加え、シュウ酸カルシウム結石対策にも貢献する。
  • リンゴの栄養素で注意すべきは「糖質」。犬の血糖値を上げやすい糖質が多く含まれている。

関連記事

  1. いちご

    犬にイチゴ 栄養を活かすお勧めレシピ

  2. おから

    犬におから、利点とリスク

  3. みかん

    犬にみかん、与えすぎNGの理由

  4. ヨーグルト

    犬にヨーグルトは大丈夫?

  5. トマト

    犬にトマト、4つの要注意点

  6. グレープフルーツ

    犬とグレープフルーツの栄養学

  7. 犬に牛乳を与えても良い理由

  8. さくらんぼ

    犬にさくらんぼ、NGの理由

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)