犬の食物アレルギー対策

食物

このところ、食物アレルギーになる犬が増えています。ドッグフードの問題、犬との生活環境など、原因として挙げられます。犬の食物アレルギー対策は、やはり食事・ドッグフードを見直すことが第一です。そこで、犬の食物アレルギー対策について、整理してご紹介します。

<目次>

犬の食物アレルギー、症状・原因・対策

よくある症状と原因

よく見られる「犬の食物アレルギー」の症状として、下痢や嘔吐など「消化器トラブル」、かゆみ・湿疹など「皮膚トラブル」の2点があります。特定の食品・成分に対して、免疫機構が異常にはたらき、トラブルを誘発しています。

食物アレルギーの主な原因は、食品に含まれる「タンパク質」にあります。食品中のあるタンパク質に対して、犬の免疫機構が異物として認識し、過剰な炎症反応をおこしてしまうのです。

食物アレルギーの対策

食物アレルギーの治療には、炎症を緩和するためにステロイドが投薬されることもありますが、あくまで対処療法にすぎません。犬の食事・ドッグフードを見直すことが必要です。そして、正しい食事対策を行うために、どの食品に対するアレルギーなのかを見極めなければなりません。

どの食品が問題となっているかを知るためには、動物病院で検査してもらうことが基本です。ただし、犬の食物アレルギー検査は、とても感度が高く、精度が疑わしいところもあります。直近で食べた食材について、アレルゲンと判定されることもあるのです。また、検査項目に入っていない食品が原因かもしれず、検査結果だけではなく、飼い主さん自身の観察も求められるところです。

食事対策5つのポイント

犬の食事対策

それでは、犬の食物アレルギーについて、食事対策を5つのポイントにまとめ、ご紹介します。

1)除去食

まず検討すべきポイントが、「除去食」です。食物アレルギーの原因となっている食品が特定できると、その食品を与えないようにします。手作り食でアレルゲン食材を使わないことはもちろん、市販ドッグフードの原材料表示をチェックし、アレルゲン原料が含まれていないものを選ぶようにしましょう。

2)分解されたタンパク質

タンパク質を細かく分解し、食物アレルギー対策を施したドッグフードもあります。タンパク質が細かくなっているため、免疫機構にアレルゲンとして認識されにくくなります。

ただし、分解タンパク質フードは、食物アレルギー対策としては良いドッグフードと言えるものの、犬が長い期間食べ続けた際に、健康上はどのような影響を及ぼすのか、はっきりしない面もあります。分解されたタンパク質ばかりの食事は、本来の犬の食性からかけ離れていますが、より広い視点での研究が待たれるところです。

3)変性を防ぐこと

タンパク質の変性を防ぐことも、犬の食物アレルギー対策の一つです。タンパク質は、加熱により構造変化をおこし、消化しにくい形態になります。この構造変化のことを「タンパク質の変性」と呼んでいます。変性し消化しにくくなったタンパク質は、アレルギーの原因物質となりやすいのです。そのため、加熱を最小限にし、タンパク質の変性を防ぐことも、食物アレルギー対策の食事・ドッグフードには望まれるところです。

なお、「消化しやすいタンパク質」は、変性を防ぐことに限らず、犬の食物アレルギー対策には重要なポイントとなります。例えば、犬にとってアミノ酸バランスのとれたタンパク質は、消化しやすい傾向にあります。変性に加えて、アミノ酸バランス等に配慮したドッグフード・食事がお勧めです。

4)免疫力維持

4つめのポイントは、「免疫力」です。食物アレルギーの犬は、アレルギー体質の傾向にあります。つまり、免疫バランスが崩れている子が多いのです。そのため、免疫力のバランスを崩さず、安定してキープすることが大切です。

免疫バランスを安定化するために、「腸の健康」を意識するようにしましょう。善玉菌・優位な腸内環境は、犬のアレルギー対策にプラスの影響を及ぼします。

「腸の健康」を実現するためのカギとなる成分が「食物繊維」です。腸の負担にならない、犬に合った食物繊維を適量与えることにより、腸を健やかに保つことができます。

ただし、犬に与える食物繊維には、注意が必要です。緑黄色野菜の食物繊維は、犬にとってやや固いタイプであるため、腸に負担がかかります。そのため、野菜から繊維質をとるのではなく、穀物やイモ類をメインの繊維源として検討するようにしましょう。

5)アレルゲン免疫療法(減感作療法)

食物アレルギーは、アレルゲンの摂取量がある水準を超えたときに発症するとされています。逆を言えば、発症水準以下のアレルゲンであれば、摂取しても問題ありません。そして、発症水準以下のアレルゲンを摂取し、慣れてくると免疫反応を起こさなくなり、食物アレルギーが改善されます。

このことを応用した対策が、5つめになります。人間のアレルギー対策では、広く行われるようになってきており、「アレルゲン免疫療法」「減感作療法」などと呼ばれています。

犬での治験は少なく、まだまだこれからの手法です。そのため、犬にこの手法を取り入れることはリスクを伴うため、よほどのことがない限り実行すべきではありませんし、実行するにしても慎重に進めることが肝要です。具体的なやり方はシンプルで、ごくごく微量のアレルゲン食品を犬に与える、ということです。ただし、犬によってアレルギーの感度が異なるため、アレルゲン免疫療法を試す場合は、獣医などの専門家のアドバイスを要します。

現在、犬の食物アレルギー対策の主流は「除去食」ですが、特定のアレルギー食品を除去したととしても、そのうち別の食品でアレルギーが発症することもよくあります。そして、除去のいたちごっことなり、そのたびにドッグフードを変えなければならず、犬に負担を与えます。そういった課題からも、「アレルゲン免疫療法」などを犬に適用する研究が待たれるところです。

食物アレルギー対策、実践のコツ

ご案内した「犬の食物アレルギー 食事対策5ポイント」に照らし合わせた実践法をご紹介します。

手作り食

手作り食では、アレルゲンとなっている食品を除いてあげることが初めの第一歩です。そして、肉や魚などタンパク質源の調理時に、加熱を最小限にとどめるようにしましょう。食材表面の殺菌ができるように、軽く茹でる程度で十分です。これにより、タンパク質の変性をとどめ、消化のよいタンパク質源として与えることができます。

アレルゲンではない肉魚をメインに、穀物・イモ類を適量混ぜてあげましょう。穀物・イモ類の食物繊維やデンプンは、犬の腸にプラスとなります。穀物は炊飯したものを、イモ類はふかしたものをあげると良いでしょう。

野菜類を与える場合は、しっかりと茹でて茹で汁を捨てましょう。そして、少量のみを与えるようにしてください。多量の野菜類は、犬の腸に負担となるなど、弊害もあるためです。

市販ドッグフード・食事療法食

ドッグフード

市販のドッグフードや食事療法食は、原材料を必ずチェックしましょう。犬のアレルゲンとなる原料が含まれていれば、そのドッグフードは避けた方が無難です。さらに、タンパク質の変性を防ぐ工夫などをとっていれば、なお良しです。

また、ドッグフードや療法食の中には、質の悪いものもあります。悪質な原料・添加物・保存料・リスクのある製法、などがわかれば、そのドッグフード・療法食を避けることをお勧めします。そういった粗悪なドッグフードは、新たな食物アレルギー発症リスクがあるばかりか、犬の健康そのものを害する恐れがあるためです。

犬の食物アレルギー まとめ

  • 犬の食物アレルギー対策では、アレルゲンの特定を行い、食事・ドッグフードを見直すことが重要。
  • 犬の食物アレルギーの食事対策には、「除去食」「分解されたタンパク質」「変性を防ぐこと」「免疫力維持」「アレルゲン免疫療法」の5つが挙げられる。
  • 手作り食で食物アレルギー対策をとる場合は、アレルゲンの除去、肉魚の加熱を最小限に、穀物・イモ類を適量ミックス、野菜は茹でたものを少量のみ、といったポイント実践がお勧め。
  • 市販ドッグフード・食事療法食では、原料と安全性をチェックすることが重要。