犬の疥癬(カイセン) 治療と食事

犬・かゆみ

犬の疥癬(カイセン)は、皮膚病の中でも特にかゆみが強いとされています。ヒゼンダニが皮膚の柔らかい部分に入りこみ、寄生して起こる病気のため、強いかゆみがあります。

犬にとっては、非常にやっかいな皮膚病「疥癬(カイセン)」について、ご案内します。

<目次>

犬の疥癬、症状と原因

疥癬の症状として、とにかく「かゆがる」ことがあります。発疹・フケ・カサブタなども見られます。ただし、これらの症状だけでは疥癬と特定できません。犬の患部の皮膚組織を一部とり、そこにヒセンダニが潜んでいるのか、チェックする必要があります。しかし、たまたまダニが見つからず、他の皮膚炎という診断をうけ、不適切な治療により症状が悪化するケースもあります。そのため、症状チェックと診断を慎重に行わなければなりません。

疥癬の原因

ヒゼンダニとの接触があり、かつ、何らかの原因で犬の免疫力が低くなっていると、疥癬を発症しやすくなります。また、ヒゼンダニは、「皮膚の柔らかい各層に侵入」→「トンネル状の穴を掘りながら産卵」→「幼虫の発生・成長」を繰り返し、疥癬の症状を悪化させていきます。

また、犬の疥癬は、人に感染します。犬の症状悪化を防ぎ、人にうつることを避けるためにも、できるだけ早期治療が望まれます。

疥癬の治療方法

治療前に、疥癬を判別することが大切です。犬の患部からダニが検出され、疥癬と確定すればよいですが、ダニがみつからず、他の皮膚病と判断されると治療が難航します。特に、他の皮膚病との判定でステロイドを不当に投与されると、疥癬症状が悪化し、重症化してしまいます。実際のところ、皮膚病が確定せず、殺ダニ治療などをを進めながら経過チェックすることも多いです。

犬の疥癬の治療方法には、大きくわけて次の2つがあります。

1)治療薬の投与・注射

犬の疥癬の治療薬として、レボリューション・フロントラインなどの外用剤、アイボメック(イベルメクチン)などの注射薬があります。いずれも、殺ダニ効果のある治療薬です。

注射薬の方が、強い効果が期待でき、比較的治療期間が短いとされています。ただ、犬種や個体によって中毒症状をおこすこともあるということで、最近は、レボリューションを選択されることも多いようです。レボリューションの場合、治療期間は数ヶ月、1ヶ月に1~2回の投薬、治療費用もさほどかからない、副作用リスクが少ない、といったメリットがあります。

また、殺ダニ薬による治療の際、注意点もあります。一度、犬の皮膚からダニがいなくなり、疥癬の症状が和らいだとしても、卵はまだ残っています。そのため、疥癬症状が消えてからしばらくは、治療薬を続けるなどの処置が必要です。

2)薬用シャンプーや薬浴による消毒・衛生管理

犬のシャンプー

治療と並行して、薬用シャンプーや薬浴により犬の皮膚を消毒することも良いでしょう。獣医に相談しがなら、投薬治療中はもちろん、予後のダニ卵対策にも安心です。

ただ、気をつけなければならないのは、疥癬以外に他の皮膚病を併発しているときです。また、重症で皮膚バリア機能がかなり壊れている場合なども、薬用シャンプー・薬浴の刺激が強すぎると、逆にダメージを与えることにつながりかねません。そのため、疥癬症状をみきわめ、経過観察をしながら愛犬にあった方法で消毒・衛生管理につとめましょう。

食事対策4つのポイント

疥癬(カイセン)は、ダニ感染が直接の原因ですが、犬自身の免疫力低下・栄養バランス不良・老化・ストレスなど、内的なことも発症の一因となります。そのため、普段与えるドッグフード・食事を見直すことも重要な対策です。

下記、疥癬の犬用・食事対策4つのポイントをまとめました。

1)免疫キープのスイッチ成分

犬の免疫システムの一つに、ダニ・ノミに対する防御機構があります。もちろん、犬の疥癬の寄生虫「ヒゼンダニ」に対してもアタックするシステムです。つまり、免疫力を維持することで、疥癬症状をケアし、予後管理も行うことにつながります。

犬の免疫力を維持するためには、「免疫キープのスイッチ成分」「バランスのとれた栄養」「腸の健康」といった栄養対策が重要です。

その中で、「免疫キープのスイッチ成分」とは、キノコ等に含まれる「βグルカン」や菌由来の「LPS」などが代表格です。犬は、これらの成分に対する受け皿(レセプター)物質をもっており、受け皿物質とβグルカン・LPSが接すると、免疫力をキープするスイッチが入ります。βグルカンやLPSなどを含む食事・ドッグフード・サプリメントを与え、犬の免疫力を高くキープしてあげましょう。

2)バランスのとれた栄養

バランスのとれた栄養は、犬の皮膚を健やかに保ち、免疫力維持にも貢献します。もちろん、犬の疥癬・食事対策にも必須です。

具体的には、タンパク質のアミノ酸バランス・ビタミン・ミネラルなどの栄養素がポイントとなります。不足している栄養がないか、見直してあげましょう。

3)腸の健康

犬の皮膚と腸は、深い関係があります。実際に、疥癬など皮膚感染のある犬は、腸内環境が悪化している傾向にあります。また、善玉菌優位の腸は、免疫力が高い状態にキープされます。

腸の健康のカギとなる栄養は「食物繊維」です。犬にあった食物繊維をバランスよく適量与えることで、腸の健康をキープできます。ただ、犬と人間の「腸の違い」には、注意しなければなりません。より肉食性の強い犬の腸は、野菜の繊維質などが苦手です。そのため、犬の腸に優しい穀物・イモ類の食物繊維をメインに、野菜類はしっかり茹でてあげるなど、工夫が必要です。

4)オメガ3脂肪酸

犬の皮膚病全般にプラスとなる栄養素が「オメガ3脂肪酸」です。オメガ3脂肪酸は、魚や一部の植物に含まれているオイルで、皮膚病対策について、最も確かな臨床データが得られている成分です。もちろん、疥癬の犬にも大切な栄養です。

ただし、オメガ3脂肪酸を与える際には、注意が必要です。オメガ3脂肪酸は、高温や酸素が苦手で、とても酸化しやすいのです。酸化したオメガ3脂肪酸は、逆に毒となるため、犬の疥癬にもネガティブな結果を及ぼすでしょう。できるだけ新鮮なオメガ3素材を使い、加熱は最小限にとどめ、酸素に極力ふれない工夫が必要になります。

犬の疥癬 まとめ

  • 強いかゆみを伴う犬の疥癬は、皮膚へのヒゼンダニの感染が原因。また、犬の免疫力が低ければ、ダニの感染がおこりやすく、疥癬発症リスクが高くなる。
  • 犬の疥癬の治療には、殺ダニ効果のある注射薬やレボルーションなど外用治療薬の投与が行われる。併せて、薬用シャンプー・薬浴などによる消毒も要検討。
  • 犬の疥癬の食事対策として、「免疫キープのスイッチ成分」「バランスのとれた栄養」「腸の健康」「オメガ3脂肪酸」の4ポイントが挙げられる。