犬の皮膚病の中でも、もっとも症例が多いとされる「膿皮症」。細菌感染により発症し、化膿した状態になります。軽症であれば自然治癒することもあるほどですが、しばしば慢性化するため、早めの適切な治療・対策が望まれます。
<目次>
犬の膿皮症 症状・原因
犬の膿皮症には、次のような症状がみられます。
- (悪臭のある)化膿・かさぶた
- 赤みや黒みを帯びた発疹
- かゆみ・痛み
- 脱毛
- 発熱
膿皮症の主原因は、「皮膚の細菌バランス」が崩れて異常繁殖することにあります。そして、細菌繁殖のそもそもの原因として、下記の3つが挙げられます。
1)免疫機構の崩れ
犬の免疫力が低下すると、膿皮症の原因菌が繁殖しやすくなります。また、免疫バランスが崩れ、アトピー性皮膚炎などとの併用も含めて、皮膚のバリア機能が壊れてしまい、膿皮症が重症化することもあります。
また、他の病気がもとで免疫力が低下してしまい、膿皮症を発症するケースもあります。
2)必要栄養の不足・老化
とりいれるべき必要栄養が不足すると、皮膚がダメージを受けやすくなり、細菌が感染してしまいます。オメガ3脂肪酸・タンパク質(アミノ酸)・ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養をバランスよく与えることが大切です。
犬の老化に伴い、皮膚の健康維持力がおとろえ、膿皮症を発症することもあります。膿皮症に限ったことではありませんが、シニア犬は、病気に注意してあげましょう。
3)外傷・過剰衛生
日常生活で負った傷口より、感染がおこって膿皮症を発症する犬もいます。また、シャンプーなどをやりすぎてしまい、バリア機能が崩れ、膿皮症の原因となることもあるため、注意が必要です。
治療方法
抗生物質の投薬
犬の膿皮症では、抗生物質の投薬が一般的です。感染細菌に対する、抗生物質が投薬されます。
ジェル・スプレー・塗り薬・経口剤など、様々なタイプの治療薬が、犬の膿皮症用として開発されています。
シャンプー・薬浴など衛生対策
原因となっている細菌に対して、抗菌性のある薬用シャンプーや薬浴により、犬を洗浄してあげることも治療の一つです。膿皮症の再発防止にも、薬用シャンプー・薬浴は有用でしょう。
また、ひば油などに含まれる抗菌成分も、犬の膿皮症には良いとされています。
他の病気(基礎疾患)の治療
アトピーやマラセチアなどの他の皮膚病との併発や、糖尿・クッシング症候群といった免疫力が低下しがちな基礎疾患がある場合、膿皮症とともに、併発している病気の治療も進めなければなりません。膿皮症以外の原因により、犬の免疫力が不安定な場合など、なかなか治療が進まないこともあります。犬の症状をトータルでチェックし、適切な治療を施してあげましょう。
サプリメント
犬の膿皮症は、免疫力や栄養バランスといった、内的な要因も関係しています。そのため、不足している栄養・アンバランスな免疫を補ってあげるために、サプリメントも検討すべき選択肢の一つです。
犬の膿皮症に試してみたいサプリメントとして、次の4カテゴリーがあります。
- 免疫力維持
- 腸の健康
- 栄養補助、皮膚バリア機能キープ
- オメガ3脂肪酸
犬個々の状態によって、適切なサプリメントを検討してあげましょう。
食事対策4つのポイント
犬の膿皮症は、免疫力低下や栄養不足など、内側の要因が大きく影響しています。そのため、食事・ドッグフードを見直すことも大切です。そこで、犬の膿皮症の食事対策について、4つのポイントにまとめてご案内します。
1)免疫力維持
犬の膿皮症は、細菌感染が原因となっておこる皮膚病です。そのため、細菌に対する免疫力をキープすることが望まれます。
免疫力を保つためには、キノコ由来のβグルカンや菌由来のLPSといった成分を与えることが一つです。犬は、これらの成分に対するレセプター(受け皿となる物質)をもっています。βグルカン・LPSと各レセプターが接触すると、免疫力維持のスイッチが入ることが知られています。
2)腸の健康
犬の腸を健康に保つことも、免疫力キープに重要です。特に、小腸は免疫細胞の60%以上が集まっており、腸の状態がよいと、免疫力も高く維持されやすくなります。
また、犬の「皮膚」と「腸」には、密接な関係があることも知られています。膿皮症をはじめ皮膚病をかかえる犬は、腸内の悪玉菌が多い傾向にあるそうです。
腸の健康には、食物繊維が大切です。犬にあった食物繊維をバランスよく選択し、適量を与えることにより、善玉菌が増えてきます。なお、ドッグフードの中には、食物繊維の量を強調しているものもありますが、与えすぎは犬の腸に負担をかけるリスクがあります。犬の腸は、人間に比べて肉食に向いたものであり、食物繊維の量・バランス・種類に留意が必要です。
3)栄養バランス
犬の膿皮症の根本原因として、何かの栄養が不足しているケースがあります。特に、タンパク質・アミノ酸・ビタミン・ミネラルなど、必要な栄養が欠けていては、治療を行っても成果がでにくくなります。
まず、タンパク質については、負担がかからない消化によいものを選びましょう。犬にあったアミノ酸バランスに配慮することも、皮膚のバリア機能をキープするために重要です。そして、肉粉・肉骨粉・肉副産物など、悪質なタンパク源を材料にしたドッグフードはあまりお勧めではありません。
次に、ビタミンやミネラルでは、犬に必要な栄養を過不足なく含んでいる食事・ドッグフードが望まれます。ビタミン・ミネラルが欠けていては、犬の皮膚に影響があらわれますし、過剰でも何らかの病気リスクが生じます。
さらに、セラミドなどの成分は、皮膚のバリア機能によいという報告があります。セラミドを含む食事・ドッグフードを与えることも、犬の膿皮症対策の一つです。
4)オメガ3脂肪酸
膿皮症に限らず、犬の皮膚病をケアする成分として欠かせないものが「オメガ3脂肪酸」です。オメガ3脂肪酸は、魚油や一部の植物に含まれるオイルで、皮膚病対策に関する多くの臨床報告があります。オメガ3脂肪酸を一定量以上与えることは、犬の膿皮症にもプラスに働くでしょう。
ただし、オメガ3脂肪酸には注意が必要です。とても酸化しやすいタイプの脂肪であり、加熱や酸素の接触により、すぐに劣化してしまいます。酸化したオメガ3脂肪酸は、逆に犬の毒となります。
そのため、できるだけフレッシュなオメガ3脂肪酸・素材を選び、加熱や酸素の接触をできるだけ除外したドッグフード・食事に留意しましょう。
犬の膿皮症 まとめ
- 犬の膿皮症の原因として、「免疫機構の崩れ」「栄養不足や老化」「外傷・過剰衛生」などがある。
- 犬の膿皮症の治療法には、「抗生物質」「シャンプー・薬浴」「他の病気の治療」「サプリメント」「食事対策」が挙げられる。
- 犬の膿皮症の食事対策には、「免疫力維持」「腸の健康」「栄養バランス」「オメガ3脂肪酸」の4ポイントが重要。