犬の外耳炎 治療と食事

犬の外耳炎

犬の外耳炎は、動物病院への来院理由トップ5に必ず入るほど、よくみられる皮膚病です。外耳炎は、犬にとって苦痛となるかゆみがあり、重症化すると聴力に影響がでる怖い病気です。

犬の外耳炎の原因・治療方法・食事対策をまとめました。

<目次>

犬の外耳炎 症状・原因

  • 耳のあたりをかゆがる仕草(首をよくふる、足で耳周辺をかく、耳を床や壁にこすりつける)
  • 耳(耳垢)がとても臭い、臭い膿がみられる
  • 茶色・茶褐色・黒色の耳垢がたまっている、耳垢がベトベトしている

このような症状がみられた犬は、外耳炎が疑われます。外耳炎は、放っておくと耳おくまで炎症が広がり、中耳炎・内耳炎への進行することがあります。そうなると、聴力が低下し、場合によっては耳が聞こえなくなることもあります。

犬の外耳炎の原因

犬の外耳炎には、様々な原因があります。マラセチア(真菌、カビの一種)・細菌感染・アレルギー・アトピー性皮膚炎・耳ダニ(寄生虫)などです。犬に最も多いのが「マラセチア」を原因とする外耳炎。犬の外耳炎の70%以上は、マラセチアに起因すると言われています。

マラセチア原因の外耳炎は、「皮脂の蓄積」「高湿度」「免疫力の低下」などが絡まると発症リスクが高まります。まさに、「マラセチア=カビ」の好む環境下で外耳炎はおこります。そのため、梅雨期や皮脂のたまりやすい夏場、垂れ耳の犬などでは、耳まわりのケアが外耳炎対策には大切です。

外耳炎の治療方法・治療薬

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外耳炎の治療をはじめる前に、原因が何なのか、特定しなければなりません。例えば、「犬の外耳炎=マラセチア」と思い込んでしまい、実は細菌由来なのにマラセチア対策をとっていても、効果がないばかりか、副作用を含めた悪化リスクが高まります。原因が特定しないまま、外耳炎用の市販薬ですますことはさけ、動物病院での検査結果をまちましょう。

マラセチア原因の外耳炎の治療方法

犬の外耳炎が、マラセチア原因である場合、治療薬として「抗真菌剤」を用います。点耳薬タイプのものが外耳炎用に使われます。細菌に対する「抗生剤」や抗炎症・免疫力低下の「ステロイド」は、マラセチアには効果がないため、使用をさけなければなりません。

治療薬と併せた対策として、「湿度コントロール」「皮脂の除去」が挙げられます。犬の耳を湿らせず、耳垢を取り除いてあげるようにしましょう。皮脂を洗浄するシャンプーなども有効です。

また、耳垢としてたまる皮脂は、犬の食事・ドッグフードも影響しています。栄養バランスが乱れた食事や、脂肪などの質が悪いドッグフードは、耳垢の蓄積を招き、マラセチア原因の外耳炎を増長させかねません。そのため、後でご紹介する「犬の外耳炎・食事対策」の実践も望まれます。

細菌原因の外耳炎の治療方法

細菌による犬の外耳炎は、治療薬として「抗生剤」を用います。ただし、抗生剤に対して抵抗をしめす菌が存在するため、その場合は治療薬効果がえられません。

マラセチアと同じく、「湿度コントロール」「皮脂の除去」に気を配ってあげましょう。もちろん、シャンプーや薬欲もお勧めです。

食事について、細菌由来の外耳炎にも留意が必要です。犬の外耳炎対策にそったドッグフード・食事が望ましいです。

アトピー・アレルギーが原因の外耳炎の治療方法

アトピー性皮膚炎やアレルギーが犬の耳でおこり、外耳炎が発症することもあります。この場合、アレルゲンを排除しながら、症状によってステロイドや免疫抑制剤などの治療薬を検討することになります。

アトピー性皮膚炎やアレルギーが原因のときも、シャンプーなどによる衛生管理は有用です。また、ドッグフードやサプリメントにより、免疫力をコントロールしたり栄養バランスを整え、内側からの皮膚ケアも大切です。

耳疥癬(ミミカイセン)が原因の外耳炎の治療方法

ミミヒゼンダニによる耳疥癬が原因となることもあります。この場合、殺ダニ効果のある治療薬を使用します。ダニは卵を産み、成虫が死んでも卵を残していることがあるため、耳疥癬・外耳炎の症状が和らいだ後も、治療薬を続けるなどしながら経過をみなければなりません。

さらに、薬用シャンプーを併用することも一つです。

また、免疫力維持や栄養バランスに配慮したドッグフードやサプリメントを活用し、耳疥癬・外耳炎を食事でケアすることも検討しましょう。

食事対策4つのポイント

犬の食事対策

以上のように、犬の外耳炎には様々な原因があり、それぞれ治療方法も異なります。そして、どの原因も「食事対策」を行うことが望まれています。犬の外耳炎に対応した食事対策について、4つのポイントをご案内します。

1)免疫力の維持

マラセチアや細菌・ダニの感染、アトピー・アレルギー、いずれの原因においても、犬の外耳炎は「免疫力」を維持することが大切です。感染への抵抗力、アレルギーによる免疫異常の調整、それぞれに食事対策をとらねばなりません。

犬の免疫力を維持するために、おすすめできる栄養成分として「βグルカン」と「LPS」があります。βグルカンは、キノコなどに含まれる免疫力維持の成分。LPSは、菌由来の免疫成分です。犬は、βグルカンやLPSに応答するレセプター(受け皿)物質をもっており、免疫力キープのスイッチを入れる役割を果たします。

2)腸の健康

犬の腸の健康維持には、2つのメリットがあります。

まず、腸と皮膚は、深くかかわっていることが知られています。腸内環境が荒れている犬は、皮脂分泌が多くなりがちです。そのため、外耳炎リスクが高い状態にあります。だから、腸の善玉菌アップにより、皮脂分泌をコントロールし皮膚を健やかに保つことにつながります。

次に、腸の健康により、免疫力が高い状態にキープされます。犬の腸には、免疫細胞の60%以上が集まっており、腸が健康であれば、免疫細胞も元気でいてくれるのです。

犬の腸を健康に保つポイントは、「食物繊維」です。ただし、人間とは異なる、犬ならではの食物繊維バランスを考えてあげなければなりません。犬は、人間と比べてより肉食な動物であり、食物繊維の種類・バランス・量に配慮が必要です。具体的には、野菜よりも穀物・イモ類の食物繊維をメインに与えるとよいでしょう。犬の腸にも優しく、善玉菌を増やして外耳炎のケアにもつながります。

3)オメガ3脂肪酸

犬の外耳炎にみられる臭い耳垢は、食事・ドッグフードの「脂肪」に起因するところが大きいです。特に、動物性の酸化した脂肪がよくありません。

そこで、強くおすすめできる成分として、「オメガ3脂肪酸」があります。オメガ3脂肪酸は、犬の皮膚病全般について、多くの臨床報告がある成分です。魚や一部の植物に含まれるオイルであり、犬にとって必須栄養素でもあります。皮脂コントロールにも貢献してくれることでしょう。

ただし、オメガ3脂肪酸は、「酸化しやすい」という欠点をもっています。加熱や酸素により、すぐに酸化してしまい、犬にとって毒となりうるのです。だから、できるだけ非加熱・脱酸素で、フレッシュなまま与えてあげる必要があります。

4)栄養バランス

犬の外耳炎にみられる「余分な皮脂分泌」や「免疫バランスの崩れ」は、何らかの栄養が不足していることも原因の一つです。そのため、栄養バランスを整えてあげることも重要です。良質なタンパク源、アミノ酸バランス、ビタミン・ミネラル、これらを適正に含んだ食事・ドッグフードが望まれます。

犬の外耳炎 まとめ

  • 犬の外耳炎の原因は、「マラセチア」「細菌」「アトピー・アレルギー」「耳ダニ(耳疥癬)」などがある。
  • 犬の外耳炎の原因により、治療方法・治療薬が異なる。マラセチアでは抗真菌剤、細菌では抗生剤、アトピー・アレルギーではステロイドや免疫抑制剤、耳疥癬では殺ダニ剤などの治療薬が使われる。そして、シャンプーによる衛生管理や食事対策をあわせて、外耳炎に対応することになる。
  • 犬の外耳炎の食事対策として、「免疫力の維持」「腸の健康」「オメガ3脂肪酸」「栄養バランス」の4ポイントが重要。