犬の血管肉腫 治療と食事

血管

犬の血管肉腫は、血管の細胞にできる癌(がん)です。皮膚・肝臓・脾臓・心臓・骨など、血管のある各所に発症する悪性腫瘍です。転移がおこりやすく進行も早いため、見つかった時には末期症状というケースもあります。

<目次>

犬の血管肉腫 症状・原因

 

犬の血管肉腫では、腫瘍の部位により、次のような症状がみられます。

・脾臓 → 犬の血管肉腫で最も多い。下痢や嘔吐、腹痛などの症状がみられる。脾臓腫瘍が大きくなり、破裂や肝臓などへの転移もおこる。

・皮膚 → 赤色や黒色のできものとして、犬の皮膚に腫瘍がみられる。ポツンと一つの腫瘍が独立してできることが多い。まれに複数個の腫瘍形成もある。

・心臓 → 心臓の外面などに腫瘍ができる。心臓に水がたまるため、呼吸困難や咳、心不全のような症状がみられることもある。

犬の血管肉腫の原因は、はっきりとしたことがわかっていません。食事・ストレス・紫外線・加齢・ウィルスなどが遠因となり、ホルモン異常や免疫機構の崩れ、遺伝的な要素がからみ、発症するものと思われます。

血管肉腫の治療方法

腫瘍が孤立しており転移なしなど、切除しやすい場合は、外科手術が検討されます。手術がうまくいけば完治につながりますが、再発や転移のことを考えた予後管理をおこたらないようにしましょう。手術によるワンちゃんの負担もあるため、体力が弱った高齢犬などは、別の治療を考えることになります。

手術が難しいケースでは、抗がん剤治療が選択肢となります。副作用をコントロールしながら、犬の状態にあわせた投薬が大切です。抗がん剤治療と手術、両方を併用することも多いです。

予後の管理や健康的な余命のことを考えると、犬の食事も大切なポイントとなります。犬の血管肉腫では、ホルモン異常や免疫不全とのかかわりも指摘されており、がん・腫瘍の食事療法をとりいれることが望まれます。

食事療法5つのポイント

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血管肉腫の犬は、「腫瘍に栄養を奪われ、進行を招く」「犬自身はエネルギー・元気・免疫力が低下する」という栄養代謝トラブルを抱えています。そのため、トラブルに対応した食事療法として、動物栄養学にもとづく5つのポイントが報告されています。

1)低糖質・低炭水化物

1つめのポイントは、「糖質・炭水化物」を少なくすることです。

腫瘍は、糖質をエネルギー源として成長します。そのため、低糖質・低炭水化物のドッグフード・食事により、腫瘍のエネルギーを枯渇させることができます。

2)質のよい高脂肪

糖質・炭水化物を少なくすれば、犬自身もエネルギー不足になります。そこで、代わりのエネルギー源として「脂肪」を与えます。犬は、肉食性が強いため、脂肪の代謝が得意でエネルギーとして活用することができます。対して、腫瘍は脂肪を使うことができません。つまり、「低糖質・低炭水化物」と「高脂肪」の両立により、腫瘍を枯渇させ、犬自身はエネルギーをしっかり補給することができます。

ただ、脂肪であれば何でもOKという訳にはいきません。脂肪の「質」に留意が必要です。特に、酸化した脂肪には注意しましょう。酸化(金属でいうサビの状態)した脂肪は、犬にとって害となる成分であり、血管肉腫の病状にもマイナスです。

脂肪の酸化は、加熱や酸素接触によりおこるため、低温での調理・製造、酸素に触れる保管を避ける、などに気をつけたドッグフード・食事を与えるようにしましょう。

3)高オメガ3脂肪酸

脂肪の「質」もう一つのポイントとして、「オメガ3脂肪酸」を豊富に与えることが挙げられます。オメガ3脂肪酸は、魚や一部の植物に含まれる成分です。がん・腫瘍についての臨床報告が数多くあり、血管肉腫の犬にはたっぷり与えるようにしましょう。

一方で、オメガ3脂肪酸は、脂肪の中でも特に酸化しやすい特徴があります。そのため、できる限り熱をかけずフレッシュな状態で犬に与えることがポイントです。

4)高タンパク質・アルギニン

血管肉腫の犬は、慢性的なタンパク質不足を抱えています。そのため、消化しやすくアミノ酸バランスのとれた良質なタンパク質をたっぷりと与えてあげなければなりません。

加えて、「アルギニン」というアミノ酸を豊富に与えることが重要です。アルギニンは、がん・腫瘍への臨床データが多く、オメガ3脂肪酸との相性でも知られており、犬の血管肉腫の食事療法でも必須成分です。

5)免疫力維持

犬の血管肉腫では、症状の進行とともに、免疫力の低下がみられます。免疫力が低下すると、ますます血管肉腫の病状が悪化することも考えられます。そのため、犬の免疫力をキープすることが、血管肉腫の食事について、一つのポイントとなります。

犬の免疫力を維持するために、「腸の健康」がカギとなります。腸は免疫細胞が集まる器官であり、善玉菌が増えることで免疫力がキープされます。そして、「腸の健康」に大切な成分が「食物繊維」。犬に合った食物繊維をバランスよく、適量与えることにより、善玉菌アップを実現できます。

もう一つ、キノコ由来βグルカン・菌由来LPSといった成分も犬の免疫力キープに寄与します。βグルカンやLPSは、免疫力のスイッチを入れる成分として、数多くの科学報告がなされています。

食事療法 実践のコツ

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犬の血管肉腫「食事療法5つのポイント」を行うために、「市販ドッグフード・療法食」と「手作り食」、それぞれのチェックリストをまとめました。チェックリストを参考に、犬の血管肉腫の食事療法を実践いただければ幸いです。

市販ドッグフード・療法食

  1. 低糖質・低炭水化物 → 糖質・炭水化物が少ないドッグフードを選択する。
  2. 質のよい高脂肪 → 脂肪量の多いドッグフードを選ぶ(目安:粗脂肪12%以上(20~25以上が理想))。ただし、脂肪の酸化に留意しているかどうか、BHA・BHTなど合成酸化防止剤に頼っていないか、などには十分な注意が必要。
  3. 高オメガ3脂肪酸 → オメガ3脂肪酸5%以上が望ましい。ただし、酸化に要注意!
  4. 高タンパク質・アルギニン → 高タンパク質・高アルギニンのドッグフードを選ぶ(目安:タンパク質25~30%以上、アルギニン2%以上)。
  5. 免疫力維持 → 善玉菌アップにつながる内容、βグルカンやLPSを含むドッグフードが望ましい。

血管肉腫ケアの療法食

犬の血管肉腫に対応した療法食として、下記2商品をご紹介します。

  1. ヒルズ社 n/d缶 → 缶詰タイプ、動物病院に流通。
  2. 犬心 元気キープ → 栄養だけではなく、ナチュラル原料・手作り製法にもこだわった療法食。ドライフード+オメガ3脂肪酸のセット商品で、酸化防止対策もバッチリ。

※「犬心 元気キープ」は、私たち自身が研究開発した、犬の血管肉腫ケアの食事療法食です。→犬の血管肉腫に対応したナチュラル療法食「犬心 元気キープ」

犬の血管肉腫に対応した食事療法食(ドッグフード)、「犬心 元気キープ」のWebサイトはこちらです。

「犬の血管肉腫」に対応、食事療法食(ドッグフード)

犬の血管肉腫 まとめ

  • 犬の血管肉腫は、脾臓・皮膚・心臓など、各所にあらわれる。悪性腫瘍で転移もおこりやすい。
  • 犬の血管肉腫の治療方法として、手術・抗がん剤などが挙げられる。
  • 犬の血管肉腫の食事療法として、「低糖質・低炭水化物」「質のよい高脂肪」「高オメガ3脂肪酸」「高タンパク質・アルギニン」「免疫力キープ」の5つのポイントが挙げられる。
  • 食事療法を実践するために、「市販ドッグフード・療法食」「手作り食」それぞれのチェックリストを参考にする。