ドッグフードの気になる原材料

ドッグフード

市販のドッグフードに表示されているラベルをしっかりチェックされたことはありますか?

ドッグフードのラベルには、幾つかの情報が記載されています。その中で、ドッグフードに含まれている原材料表記は、大切なチェックポイントになります。

ただし、ドッグフードの原材料には、飼い主さんたちにとってわかりにくい点もあります。中には、注意が必要な原材料もあるため、下記の内容を参考にしていただければと思います。

<目次>

ドッグフードの添加物

市販ドッグフードには、様々な添加物を含むものが数多くあります。ドッグフードのの賞味期限・嗜好性・外観・形状などの水準を保つために、添加物が含まれています。しかし、添加物の多くは、犬の身体に良いとは限りません。だから、ワンちゃんの健康のために、ドッグフードの添加物について、知っておくことは大切です。

以下にドッグフードに含まれる添加物をカテゴリーごとにまとめました。

酸化防止剤

ドッグフード(特にドライフード)の賞味期限を短くする主な原因は、「酸化」です。酸化とは、金属でいうサビのようなもので、酸素に触れたり加熱加圧下で起こる現象です。ドッグフードに含まれる脂肪や脂溶性ビタミンで酸化が進みます。

酸化が進んだドッグフードは、犬に大きな健康被害をもたらします。そのため、できるだけ酸化していないドッグフードを与えることが大切です。

ドッグフードの食品添加物で使用されている「酸化防止剤」は、品質保持には有効ですが、犬への健康リスクに注意が必要です。ドッグフードに使われる合成・天然の酸化防止剤に関して、それぞれご案内します。

合成の酸化防止剤

ドッグフードによく使われる合成・酸化防止剤には、「BHT」「BHA」「エトキシキン」があります。これらの合成物は、天然の酸化防止剤よりも強力です。そのため、ドッグフードの賞味期限を延ばすことには、大きな貢献を果たします。

一方で、合成・酸化防止剤のリスクについて、様々な警笛がならされており、天然・酸化防止剤へのシフトが進む傾向にあります。(しかしながら、まだまだ安価な市販ドッグフードには使用されています。)

天然の酸化防止剤

天然の酸化防止剤として、トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ローズマリーなどがドッグフードによく使われています。天然物は、合成物に比べて酸化防止の効果が著しく劣ります。そのため、天然の酸化防止剤だけでドッグフードの長期保存を実現しようとすれば、製造方法や酸素にふれないパッケージの工夫が必要です。

なお、ビタミンEとビタミンCを共存させると、酸化防止効果がアップすることも知られています。

※ビタミンEについては、「犬にとってのビタミンE」で詳しくご紹介しています。

抗菌性保存料

半生タイプのドッグフードなど、水分が多いドッグフードには、菌の汚染を防ぐために「抗菌性保存料」を含むことが一般的です。抗菌性保存料は、細菌の腐敗・カビの発生などを防ぐことができます。

一方で、犬へのダメージも指摘されています。特に、腸内細菌への抗菌性も発揮されてしまうため、善玉菌も減ってしまうことが問題です。

水分保持剤

半生タイプのドッグフードなど、製造加工後に水分喪失を防ぐために使用されます。

着色料・保存料

見栄えをよくし消費者の目を引くために、「天然および合成着色料」がドッグフードに含まれることもあります。天然着色料としてカロテノイド、合成着色料として酸化鉄・タルトラジン・サンセットイエロー・タール色素(アゾ染料)・ブリリアントブルー・インジゴチン(非アゾ染料)などがドッグフードに使用されています。

また退色を防ぐための「保存料」もしくは「色素強化剤」として、亜硝酸塩や重硝酸塩が使われることもあります。

当然のことながら、これらの添加物を一定量以上含むことは、犬の健康に好ましくありません。

乳化剤・安定剤・増粘剤

ドライフードの成型や硬さの調節・食感、ウェットフードのとろみ付け・水分保持・ゲル化・安定化・肉汁の調整などの目的に使用される添加物として、「乳化剤」「安定剤」「増粘剤」が挙げられます。ドッグフードの原料としては、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウムなど)やカラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)などがあります。

これらは、海藻や種子、菌など由来の多糖類(食物繊維に該当)であり、添加物の中では比較的犬へのリスクが低い素材です。

嗜好性増強剤

ドッグフードへの犬の食いつきを良くするために、「嗜好性増強剤」などと呼ばれる添加物が使用されます。このカテゴリーの添加物については、ドッグフードメーカーにより多大な研究努力が行われてきました。犬の食いつきは、ドッグフードの売上に直結するためです。

この「嗜好性増強剤」については、ドッグフードの原材料表示に出てこないことが多く、消費者には見えにくくなっています。例えば、鶏脂などに嗜好性を高めるものを混ぜ、原料表示には「鶏脂」などという記載をする、といったことがなされています。

市販ドッグフードの味に慣れてしまった犬の中には、天然フードや手作り食をあまり食べてくれない子もいます。そういった犬は、合成調味料ともいえる「嗜好性増強剤」の味を覚えてしまい、ナチュラル風味では満足できなくなっているのかもしれません。

要注意のドッグフード原材料

市販ドッグフードの中には、添加物以外にも要注意といえる原材料がたくさんあります。要注意なドッグフード原材料の例をご紹介します。

肉粉・肉骨粉

ドッグフードに含まれる「肉粉」「肉骨粉」の類は、2重のリスクがあります。

まず、肉・骨を粉にするプロセスに疑問が残ります。肉・骨を低コストで乾燥粉末にしようと思えば、ある程度高温で加熱する必要があります。(低温で粉にすることもできますが、コストがかかります。)高熱で粉末化された肉類は、「脂肪の酸化」「タンパク質の変性・消化性ダウン」といった著しい品質低下がおこります。

次に、肉粉・肉骨粉の保存についてです。どうしてわざわざ肉を粉にしてからドッグフードの原料にするかといえば、長期保存が可能となるからです。それでも、保存過程で酸化や汚染が進んでしまいます。そこで、保存中の肉粉・肉骨粉には、「酸化防止剤」「抗菌性保存料」などが使用されることになるのです。そして、肉粉・肉骨粉に含まれる「酸化防止剤」「抗菌性保存料」は、原材料として表記されることはありません。

これら2重のリスクから、「肉粉」「肉骨粉」を含むドッグフードは、犬への危険性が高いと言わざるをえません。

肉副産物

肉粉・肉骨粉以上に、わからない原材料が「肉副産物」です。動物の死体が使われている、ドブネズミが混ざっている、獣の毛皮も含まれる、など様々な噂(事実?!)が絶えません。

ドッグフードに「肉副産物」の表示があるものは、避けた方が良いでしょう。

鶏脂など動物性油脂

ドッグフードの原材料に「鶏脂」など動物性油脂の表示もよく見かけます。これも犬には好ましくない原料です。

鶏脂などの使い方として、製造仕上げの「オイルコーティング」という工程があります。ドッグフード表面に脂を噴霧し、熱と圧力をかけて固める作業です。これにより、ドッグフードの形状が安定するとともに、犬の食いつきもよくなります。(ただし、自然な味に慣れている犬は、嫌う子もいます。)

まず、この脂の質がよくありません。犬が多量に取り続けると、健康被害のリスクがあります。

そして、動物性油脂はもちろん酸化が進みます。その酸化を防ぐために、「酸化防止剤」を加えて調整する、という悪循環生じてしまいます。

誤解のあるドッグフード原材料

グルテン(白米・玄米・大麦など穀物)

大麦

「グルテンフリー」「穀物不使用」を特徴とするドッグフードが流行りです。また、「犬はオオカミの子孫だから、肉食で穀物を与えるべきではない。」といった論調も目にします。

これは、動物栄養学からみて、本当でしょうか?

答えは、全く正しくありません。犬は、確かにオオカミから受け継いだものを残していますが、食性に関しては異なる進化を遂げてきました。私たち人類と共生してきた影響が大きいからか、より雑食な犬種がほとんどです。

実際に、犬はデンプン(穀物に含まれる炭水化物)への適性をもっています。動物栄養学上、犬は炭水化物をある程度取り入れた方が良いことは間違いありません。近年、犬の寿命が大きく伸びていることは、ドッグフードの向上により穀物を適切に利用していることも関係しているでしょう。

グルテンフリーの誤解

それでは、なぜ「グルテンフリー・穀物フリー」が犬には良い、と言われているのでしょうか。

グルテンは、小麦・米・大麦など穀物に含まれています。しかし、同じ「グルテン」という成分でも、性質が大きく異なります。その中で、犬に悪影響を与えドッグフードには好ましくない成分が「小麦グルテン」です。

小麦グルテンは、パンや麺類のつなぎとして使われるなど、とても粘弾性がある成分で、私たち人間にもなじみ深いです。一方で、犬は「小麦グルテン」がとても苦手で、アレルギーの原因となりやすく消化性も悪い成分です。

それに対して、「米グルテン」「大麦グルテン」は、粘弾性が低く、含量も少ないため、犬にはさほど悪影響を及ぼしません。そのため、米・大麦など小麦以外の穀物は、犬へのメリットの方がはるかに大きく、適量を与えることが好ましいです。

トウモロコシ

トウモロコシ

トウモロコシも、ドッグフードの悪い原材料という間違ったイメージが定着しています。

トウモロコシには様々な部位があり、その中で「皮」「芯」「ひげ」などが犬にはよくありません。それら以外の「コーングルテン」「コーンミール」などの部位は、悪評もありますが、ほとんどの言及に誤解・間違いがあります。

むしろ、コーングルテン・コーンミールなどは、犬にとって良質なタンパク源です。先に述べた「小麦グルテン」とは異なり、消化性が良いですし、肉類との組み合わせでアミノ酸バランスを整えることにも寄与します。

また、アレルゲンになりやすい、という情報もありますが、これも正確ではありません。確かに、トウモロコシを丸ごと犬に与えると、消化しにくくアレルギーが発生しやすくなるのかもしれませんが、コーングルテンなど、精製されたタンパク部位はアレルギー発症リスクが低い素材といえます。

大豆

大豆もドッグフードの原料として、悪者にされることがあります。しかし、適量であれば犬にプラスとなる原料です。

確かに、過剰に摂取すると、消化性などに問題が生じます。しかし、適量(少量)の範囲であれば、犬も消化できますし、むしろ混ぜた方が様々な面でメリットが生まれます。

ドッグフードの添加物・原材料 まとめ

  • ドッグフード添加物カテゴリーとして、「酸化防止剤」「抗菌性保存料」「水分保持剤」「着色料」「乳化剤・安定剤・増粘剤」「嗜好性増強剤」がある。
  • 要注意のドッグフード原材料として、「肉粉・肉骨粉」「肉副産物」「動物性油脂」などが挙げられる。
  • 「グルテン(穀物)」「とうもろこし」「大豆」は、使い方次第で犬にプラスとなるにも関わらず、悪いドッグフード原材料という誤解・風評被害がある。