犬の膵炎 低脂肪の食事が必須ではないケース

「膵炎のワンちゃんの食事」といえば、最も重視されるポイントが「低脂肪」。膵炎のワンちゃんの飼い主さんは、「低脂肪食」を獣医師などから勧められることと思います。

一方で、そこまで厳しく「低脂肪食」にこだわる必要のない膵炎の症状もあります。このページでは、低脂肪の食事が必須ではない、犬の膵炎をご案内しつつ、ある意味「低脂肪」より重要なポイントをご紹介します。

<目次>

「低脂肪食」が必須ではない膵炎の症状とは?

犬の膵炎では、血中のコレステロールや中性脂肪の数値が高くなる、いわゆる「高脂血」の状態を併発することが多いです。膵炎により、消化酵素(リパーゼなど)の分泌が不安定になり、脂肪代謝にトラブルがおこり、血中脂肪が多くなりやすいためです。

膵炎から高脂血症の併発を防ぐために、「低脂肪」の食事が有効とされています。

しかし、膵炎のワンちゃんでも、まったく「高脂血」の症状があらわれない、それどころかコレステロール値などは低いくらい、というケースもあります。この状態で極端な「低脂肪食」を続けていると、痩せてきて栄養不良になることがしばしば見られます。

そのため、最近の膵炎の食事療法では、「高脂血」の症状が出ていなければ、「低脂肪食」を厳密に続けなくてもよい、むしろ、適度な脂肪を摂取すべき、という考えが広まってきています。

※「高脂血症」と「膵炎」を併発しているケースの食事については、次ページをご参照くださいませ。→犬の膵炎の食事、低脂肪だけではない重要ポイント

犬の膵炎の食事、3つの重要ポイント

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ただし、「高脂血」が見られない膵炎のワンちゃんでは、「低脂肪」を無視してよい、というわけではありません。やはり、将来のリスクを考慮し、脂肪量を気にすべきです。

しかし、「高脂血」がない犬の膵炎では、低脂肪以上にチェックすべき3つの重要ポイントがあります。下記、順番にご案内します。

1)消化のしやすさ

膵炎のワンちゃんでは、できるだけ消化吸収の負担を減らすことが大切です。消化しにくい食事・ドッグフードは、膵炎の症状を悪化させるだけでなく、ほかの病気を併発したり、腸にもダメージを与えます。

消化酵素を補ってあげることも、膵炎の犬には有効です。飼い主さんは、消化性の高い食事とともに、消化酵素の補給を検討されるとよいでしょう。

2)腸の健康

犬の膵炎は、腸トラブルと深い関係にあります。特に小腸のトラブル・病気を併発することが多いです。

その原因として、膵炎により消化不良がおこり、小腸に食事の残りものがとどまってしまい、腸が荒れる、ということが挙げられます。

また、脂肪などが小腸で目詰まりをおこし、腸リンパ拡張症などの病気に進展するこもあります。

そのため、腸を健康にするような食事が望まれます。

まず、犬の膵炎における「腸の健康」対策として、カギとなるものが「食物繊維」です。犬に合った食物繊維をバランスよく取り入れることで、腸への物理的な負担が和らぐとともに、消化吸収がゆっくりと進むようになります。さらに、食物繊維は、腸の運動性アップや善玉菌・増などにも効果を発揮するなど、大きな貢献を果たしてくれます。

もう一つ、犬の膵炎の「腸」対策に重要な成分が、消化されにくい「炭水化物」の存在です。消化されにくい「炭水化物」は、食物繊維と似たような働きをするとともに、腸内の善玉菌のエサとなります。善玉菌優位な環境は、適正な消化吸収・代謝を助けるとともに、免疫力キープにもつながります。

3)良質な食事

3つめのポイントは、「食事の質」の重要性です。

市販ドッグフードであれば、添加物や原料内容をチェックしてみましょう。添加物を多く含むものはもちろん、酸化対策への配慮にかける商品、粗悪な原料を使っているドッグフードなどは避けなければなりません。

膵炎に限ったことではありませんが、悪質なドッグフードは、膵臓や肝臓など、消化・代謝をになう器官にジワリジワリとダメージを与えます。栄養数値に問題がないドッグフードでも、質が悪いために、ワンちゃんの健康を損なうケースは多々あることでしょう。

そして、膵炎のワンちゃんで特に気にすべき「食事の質」のポイントが、「脂肪の酸化」です。

脂肪は、空気に触れたり高温で処理されることにより酸化していきます。酸化が進んだ脂肪は、犬の健康に甚大なダメージを与えることが知られています。

酸化への配慮に欠けるドッグフードは、膵炎のワンちゃんにはNGです。

犬の膵炎に対応した食事療法療法食(ドッグフード)、「犬心 糖&脂コントロール」をお勧めします。

「犬の膵炎」に対応、ナチュラル療法食(ドッグフード)

「消化のしやすさ」「腸の健康」「良質な食事」は、「低脂肪」とともに、膵炎のワンちゃんには重要な3ポイントです。そして、膵炎だけど「高脂血」が見られないワンちゃんにとって、「低脂肪」以上に留意すべき3要素と言うことができるでしょう。

※犬の膵炎の「治療と食事」に関して、全体的なお話は下記ページをチェックいただければ幸いです。

犬の膵炎 治療と食事

まとめ

  • 「高脂血」の症状がみられない膵炎の犬では、厳密な「低脂肪」の食事が必須ではない。
  • 膵炎だけど「高脂血」ではない犬の場合、「低脂肪」以上に「消化のしやすさ」「腸の健康」「良質な食事」という3ポイントに目を向けることも重要。

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コメント

    • 増田ゆうこ
    • 2017年 3月 29日

    大変参考になりました。
    膵臓と腎臓両方のケアが必要な場合や、痩せ気味の膵炎の子の脂肪摂取について、獣医師やフードメーカーに聞いても回答は得られず、この一年迷いに迷ってました。

    腎臓ケアを必要としている子が膵炎になってしまうケースについての情報が少なく、とても困っていたのです。

    ありがとうございます。

      • dogfoodlabo
      • 2017年 3月 29日

      コメントありがとうございます。
      病気の併発時の食事対策など、ほとんど情報がないことと思います。
      獣医師も、食事・栄養学については教育を受けていないため、専門的なことがわからない方がほとんどです。

      特に、「膵炎(=低脂肪食)」「腎臓病(=低タンパク質)」など、栄養内容が異なる病気の併発は、食事対策に悩まれている飼い主さんが多いと感じています。

      例えば、私たちが開発した「犬心 糖&脂コントロール(http://dog-to.com/)」は、膵炎などには対応できていますが、腎臓病には未対応です。そのため、膵炎と腎臓病を併発しているワンちゃんには、「犬心」+「茹でこぼしたイモ類(サツマイモ・ジャガイモ)」を混ぜることをお勧めしています。
      犬心とイモ類のミックスにより、低脂肪・低タンパク質・エネルギー補給が実現でき、腎臓病の塩分制限などにも対応できるためです。

      まとめると、膵炎+腎臓病のワンちゃんには、「低脂肪」「低タンパク質」「難消化性の炭水化物源(玄米・イモ類など)」の食事が良いと考えています。

      その他のことを含めて、ご不明な点など、いつでも仰ってくださいませ。
      ご愛犬の健康について、お力になれれば幸いです。

        • 増田ゆうこ
        • 2017年 4月 05日

        ありがとうございます。

        じゃがいもをフードと共に与える場合は、フードはタンパク質や脂質を制限した量にし、じゃがいもは必要カロリーを補う量、と考えればいいのでしょうか?

        じゃがいもはGI値が高いので、フードに混ぜるのはやめた方がいいのかと思っていました。

        タンパク質、脂質、糖質を控えてカロリーを摂取する食事の難しさを痛感します。

          • dogfoodlabo
          • 2017年 4月 05日

          お返事ありがとうございます。
          「フード」+「じゃがいも」ということであれば、フードの栄養数値によって「じゃがいも」の量を決めることになると思います。
          例えば、粗タンパク質25%・粗脂肪12%というフードを与える場合、膵炎+腎臓病のワンちゃんには、このフードではタンパク質・脂肪、両方とも高い数値になります。
          できれば、全体の食事の栄養値が、タンパク質20%以下・脂肪10以下くらいになった方が良いので、このフード10に対してじゃがいも3くらいの割合でミックスする、というイメージです。
          これにより、全体の食事は、低タンパク質・低脂肪だけど、じゃがいもから炭水化物を補う分、トータルの必要カロリーはとれる、ということになります。

          なお、確かにじゃがいもは高GI食品のため、もし高血糖気味のワンちゃんであれば、お勧めできません。
          高血糖はなく、膵炎+腎臓病、というワンちゃんであれば、じゃがいもでも問題ないと思います。
          (将来的なリスクも含めて高GIを避ける、ということであれば、サツマイモを与えていただくことが良いと思います。)

        • 増田ゆうこ
        • 2017年 9月 24日

        御社の犬心を与えるとしたら、フード、イモ類をどのくらいの分量与えるのが最適でしょうか?

        膵臓腎臓に配慮が必要な14歳、2キロの子です。
        素人計算ですと犬心を20グラム位、足りないカロリー分をイモ類で補う、ということでしょうか?

          • dogfoodlabo
          • 2017年 9月 24日

          お問い合わせいただき、ありがとうございます。

          膵臓・腎臓にトラブルを抱え、シニアで2㎏のワンちゃんということで、1日あたり「犬心」40gほど、「サツマイモ」10gほどが目安になると思います。
          ただ、ワンちゃんの活動量等により、適量には目安があります。

          その他のことを含めて、気になる点など、いつでも仰ってくださいませ。

            • 増田ゆうこ
            • 2017年 9月 24日

            犬心のタンパク質は23パーセント以上あると思いましたが、40グラム与えると一日あたり9グラム以上のタンパク質摂取になり、多くないでしょうか?
            腎臓を考慮し、低タンパクを医師から言われております。一日あたり5〜6グラム程度とのことでした。

            • dogfoodlabo
            • 2017年 9月 25日

            お返事ありがとうございます。

            腎臓トラブルのワンちゃんの場合、確かに低タンパク質であることが好ましいです。
            その際、食事の乾燥重量あたりの割合で、タンパク質が20%以下であることが推奨されています。

            ご愛犬の場合、高齢ということもあって、必要な総合カロリーが私が思っている以上に少ないのかもしれません。
            そのうえで、獣医師の先生から1日あたり5~6g程のタンパク質量というご指導があったということかと思います。
            そういうことであれば、1日あたり犬心は20~25g、サツマイモ5~7gほどで良いと思われます。

            一方で、腎臓トラブルの子であっても、タンパク質を少なくしすぎることは好ましくありません。
            特に、膵炎を併発している場合、膵臓機能の修復にタンパク質が必要となるため、できる限り20%ジャストくらいのタンパク質を与えることが良いと思います。

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