犬の便秘、食事対策

犬の消化器トラブル

犬も便秘になることはあります。犬の便秘の原因は様々で、ストレスや運動不足、そして病気が潜んでいることもあります。

そして、何よりも深く関係していることとして、「食事」が挙げられます。

このページでは、犬の便秘の症状・原因、便秘に潜む病気のこと、そして治療や食事対策について、ご案内します。

<目次>

  • 犬の便秘、症状と原因
  • 犬の便秘に潜む病気について
  • 便秘対策の治療・マッサージ・サプリ
  • 便秘を根本ケアする4大栄養
  • 犬の便秘ケア、食事対策の実践
  • まとめ

犬の便秘、症状と原因

犬の便秘は、「排便回数が少ない」「排便時にしぶり(中々うんちが出ない状態)が見られる」といった症状の際に使われる言葉です。便秘そのものが病気、というわけではなく、あくまで症状の一つと言うことができます。

犬の便秘症状が軽ければ、食事を少し工夫したり、運動をさせてあげることで良くなるケースも多いです。でも、重度の便秘は、犬の食事管理はもちろん、薬による治療が必要となるケースもあります。そのような重症の便秘は、犬にとってリスクのある病気が潜んでいることも少なくありません。

便秘の典型的な症状

犬の便秘の症状として、下記のようなものが良くみられます。

  • 排便回数が増える
  • ウンチを出しにくそうにしている(しぶり)、排便困難
  • 腹痛

より慢性化した便秘の症状

さらに慢性化した犬の便秘では、次のような症状が挙げられます。

  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 体重減少
  • 抑うつ、元気がない
  • 血便

これら慢性的な便秘症状が見られる犬では、病気が潜んでいる可能性が高くなります。

便秘の原因

犬の便秘の原因は様々です。例えば、次のような原因が考えられます。

  • 精神的なストレス
  • 食事がその犬に合っていない
  • 骨や石を食べた、犬に合わない生食が続いている
  • 鉛中毒(鉛を含むペンキや食器)
  • 腸内の腫瘍やポリープ
  • 骨盤骨折による骨盤入口の変形
  • 肛門周囲の病気
  • 会陰ヘルニア
  • 自律神経失調症
  • 薬の副作用・薬害
  • 脱水・ミネラルバランスの異常

犬の便秘に潜む病気

便秘の犬に潜んでいる病気は多様です。代表的な病気について、便秘との関連を含めてご案内します。

巨大結腸症

便秘の犬は、ウンチが詰まって結腸が巨大化しているケースも多いです。そのような便秘の犬には、「巨大結腸症」という病名がついています。

腫瘍・ポリープ

腸の腫瘍やポリープが原因となり、便秘を誘発しているワンちゃんもいます。便秘のために動物病院を訪れ、腫瘍が発覚するというケースもしばしばみられます。

骨盤の変形

骨盤の骨折を経験したワンちゃんなど、骨盤の入り口付近が変形して狭くなり、便秘につながることがあります。

会陰ヘルニア

骨盤の会陰部と呼ばれるところの筋肉が弱くなることを原因とする病気に「犬の会陰ヘルニア」があります。会陰ヘルニアの犬は、肛門周辺が膨らみ、腸が飛び出すこともあり、重篤な便秘につながることがあります。

肛門の病気

肛門嚢炎など、肛門周囲の炎症や腫瘍が原因となり、犬に便秘が見られることもあります。

自律神経失調症

自律神経失調症により、便秘が見られるワンちゃんもいます。犬の自律神経失調症は、症状がはっきりしないことも多く、発症がわかりにくい病気です。

便秘対策の治療・マッサージ・サプリ

犬の便秘は、原因が多様であるため、その根本原因の緩和につながる治療を行うことが大切です。

例えば、肛門の炎症・腫瘍が、便秘の原因となっている場合、ウンチを柔らかくする便秘薬とともに、免疫抑制剤や炎症をおさえるお薬などを使うこともあります。

便秘ケアのツボ・マッサージ

治療とともに、便秘ケアのツボ・マッサージを行うことも、対策の一つです。犬の便秘に良いツボは、お腹側と背中側、それぞれにあるとされています。

お腹側のツボは、犬のおへそ周辺になります。おへその周りを円を描くようにマッサージしてあげると良いでしょう。

背中側のツボは、犬の背骨をはさんだ両側にあります。犬の背骨近くの両側を、背中から腰にかけてマッサージすることが便秘対策にお勧めです。

運動不足の解消

スポーツドッグ

運動不足も、犬の便秘と関係しています。そのため、できる範囲で散歩などの運動を増やしてあげると、犬の便秘には効果的です。

犬の便秘サプリについて

犬の便秘対策用のサプリメントについても、治療と同じく、根本原因を把握したうえで選択することがベターです。そのうえで、どの便秘対策にも良いと考えられるサプリメントとして、「オリゴ糖」「乳酸菌など善玉菌」がお勧めです。

オリゴ糖は、お通じをよくするとともに、便の硬さをコントロールするところもあり、便秘の犬に良いと思います。

乳酸菌関連は、ビフィズス菌や酪酸菌も含まれたようなタイプがお勧めです。犬の便秘は、主に「大腸」に負担がかかってきますので、大腸に生息するビフィズス菌・酪酸菌は、主に小腸に定着する乳酸菌よりも重要です。もちろん、ヨーグルトを与えることも、腸内善玉菌に良い影響を及ぼすため、便秘の犬にはプラスです。

(※乳酸菌について、詳しくは「犬への乳酸菌の効果を高めるコツ」をご覧ください。)

(※ヨーグルトについては、次のページで詳しくご案内しています。→「犬にヨーグルトは大丈夫?

便秘を根本ケアする4大栄養

犬の便秘対策には、食事が非常に重要です。食べ物が、犬の便秘の根本原因になっていることも多いため、いつもの食事を見直すことが望まれます。

そこで、動物栄養学の観点から推奨される、「便秘の犬の栄養」について、4つのポイントをご案内します。

①水分をたっぷり

便秘の犬は、腸内の水分量が不足しています。そして、日常の水分摂取が足りないケースも多いです。

そのため、水分摂取をうながす、色々な対策が望まれます。例えば、次のような対策をご検討ください。

  • 飲み水のお皿を、お部屋の中の目立つところ複数箇所に置く
  • 水を飲まない子であれば、ブイヨンや食材の煮だしスープを与える
  • ドライフードの場合、お白湯でふやかして与える
  • おやつとして、氷をあげる(スープを凍らせたものもOK)
  • 食事に茹で野菜・イモ、炊飯した玄米など、水分含量が多いものをトッピングする

②食物繊維の増量

便秘の犬の多くは、食物繊維の増量がプラスとなります。

食物繊維といっても、色々なタイプのものがあり、例えば「水溶性食物繊維」「不溶性食物繊維」などという種類分けがなされています。便秘の犬の場合、それら様々なタイプの食物繊維をバランスよく配合することが望まれます。

水溶性食物繊維の便秘対策における役割

水溶性の食物繊維は、果物・穀物・イモ類などに多く含まれています。これら水溶性食物繊維は、犬の腸内細菌により発酵されやすく、大腸内で「短鎖脂肪酸」という有用成分に変換され、腸の健康に貢献します。

大腸内に短鎖脂肪酸が増えることは、犬の便秘にも有効です。

不溶性食物繊維の便秘対策における役割

不溶性の食物繊維は、野菜や果物、穀物・イモ類などに含まれています。不溶性食物繊維は、犬の腸内の空間を大きくし、水分含量を増やすことに貢献します。また、腸内の毒素を薄め、消化物の移動スピードを速めることによって、犬の腸の運動性を正常化してくれます。

犬の便秘における「水溶性」「不溶性」の適切なバランス

便秘の犬に、より多く与えたい食物繊維は「不溶性」タイプのものです。「水溶性」タイプの食物繊維は、ミネラルの吸収率を低くしてしまうところがあり、多く与え過ぎてはいけません。

とは言っても、多くの繊維源の食品では、水溶性・不溶性の食物繊維を両方含んでいます。そのため、水溶性食物繊維に偏りすぎるということは、ほとんど考えられないため、「食物繊維を増やす」という意識で、犬の食事を考えていただければと思います。

※便秘が重症な犬の食物繊維

便秘症状が重症な犬では、食物繊維への考え方が違ってくるため、注意が必要です。

重症な便秘では、犬の腸の運動性がほぼ失われているケースも多いです。このような犬では、食物繊維の増量による、腸への良い刺激効果はなく、むしろ便秘を悪化させる要因ともなります。

便秘が重症な犬では、逆に食物繊維を与えすぎないことがポイントとなります。

(※食物繊維について、おり詳しくは「犬と食物繊維の相性」をご参照ください。)

③食事の高消化性(重症な便秘対策)

「重症な便秘の犬には、食物繊維を与えすぎてはいけない」と先ほどお伝えしました。

それに付随することで、「重症な便秘の犬には、消化しやすい食事を与える」ことも大切です。

重度の便秘では、腸の運動性が失われた状態であるため、できるだけ腸負担少なく栄養補給できる食事が望まれます。そのため、タンパク質・脂肪・炭水化物、それぞれを消化吸収しやすい内容にすることが望まれます。

④高カロリー(重症な便秘対策)

さらに、重症な犬の便秘対策として、高カロリーの食事を与えることもポイントです。

つまり、「高カロリー・高消化性・低食物繊維」という食事内容により、便の全体量を増やずに、少ない食事量で栄養補給することが大切です。

(※犬の下痢や嘔吐など、消化器トラブルの対策は、次のページで詳しくご紹介しています。→「犬の下痢嘔吐、治療と食事」)

犬の便秘ケア、食事対策の実践

犬の食事対策

それでは、犬の便秘をケアする食事対策について、実践するコツをご案内します。

前提として、「犬の便秘の重症度」に分けて、対策を考えなければなりません。先にお伝えしたように、便秘が重症な子と軽症な犬では、食事の栄養内容が異なるためです。

便秘が重症ではない、犬の食事

便秘が重症ではない犬の場合、栄養のポイントは「水分たっぷり」「食物繊維を多く」の2点です。そのため、次のような内容の食事がお勧めです。

  1. 水分を多くとれる工夫を行う(※上記「便秘を根本ケアする栄養内容①」を参照)
  2. 野菜・果物・穀物・イモ類・キノコ・海藻などをバランスよく与える
  3. 野菜・イモ・キノコについては、しっかり茹でて茹で汁を捨ててから与える
  4. 穀物は、炊飯したものを与える
  5. 果物は、基本的に「生」でOK
  6. 食物繊維を増やすからといって、偏りすぎはNG(少なくとも食事の半分くらいはお肉関連が良い)

重症な便秘の犬の食事

便秘が重症な犬では、「水分をしっかり」「食物繊維を少なく」「高消化・高栄養・高カロリー」が食事の基本です。そのため、下記のような食事内容がお勧めです。

  1. 水分を多くとれる工夫を行う(※上記「便秘を根本ケアする栄養内容①」を参照)
  2. 野菜は与えない(不溶性食物繊維が多いため)
  3. 手作り食であれば、消化の良いお肉をベースに、炊飯した穀物・茹で越したイモ類・果物などを与える
  4. 市販ドッグフードであれば、消化が良く高栄養なものを与える
  5. ヨーグルトや乳酸菌サプリ、オリゴ糖を与えても良い

まとめ

  • 犬の便秘には、様々な症状と原因があり、病気が潜んでいることもある。
  • 犬の便秘の治療は、便秘薬などとともに、各原因の根本治療を行うことがポイントとなる。
  • 治療とともに、運動やツボ・マッサージなどの便秘対策も有効である。また、犬の便秘対策のサプリメントとして、「オリゴ糖」「乳酸菌など善玉菌」が挙げられる。
  • 犬の便秘対策の栄養ポイントには、「水分をしっかり」「食物繊維を多く」がある。ただし、犬の便秘が重症な場合、「食物繊維を少なめに」「高消化性・高栄養」「高カロリー」という栄養が大切になる。
  • 犬の便秘対策の食事を実践するにあたり、「便秘の重症度」に分けて考えなければならない。

関連記事

  1. 犬の下痢

    犬の下痢 4つのタイプ

  2. 犬と薬

    犬にビオフェルミン(整腸剤)の効果

  3. 犬の嘔吐、白い泡の原因・2つの対策

  4. 子犬

    子犬の下痢対策

  5. チェックリスト

    犬の血便 チェックと対策

  6. 老齢の犬

    老犬の下痢対策

  7. 犬の嘔吐が黄色、原因と対策

  8. 犬の下痢、絶食のポイント

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)